やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第二章 錬金術師編

15、貴方を手伝いたい(後編)

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ルーディアは倒れた俺を急いで仮眠用のベッドに運ぶと、症状をみてブツブツ呟き「すぐに良くなる薬を持ってきますから!!」と、部屋の奥へと走って行ってしまった。

俺は苦しみながらも、魔力を排出する為にローブの中にいるマニを触る。
幸い体に入り込んだ魔力の量は少ないので、暫くしたら普通に動けるようになるだろう。
でも今はとにかく冷や汗が酷い、それでもどうにか意識をマニに集中する。

暫くそうしていると、バタバタと走る足音が近づいて来た。きっとルーディアが戻って来たのだろう。
ルーディアは息を切らせて一つの瓶を俺の前に突き出した。

「遅くなりました。これを飲んで下さい!えっと飲めますか?無理なら僕が飲ませますので言ってください」

今の俺は声が出せないほど苦しんでいたため、一人で飲むことはできない。だから俺はルーディアに向けて、首を横に振った。
そしてこのときの俺は、飲ませてくれると言うのは瓶を口元まで持ってきてくれるのだろうと、そう思っていた。

「では、申し訳ないですが嫌かもしれませんので、目を瞑って口を開けて下さい!」

目を瞑る意味は理解出来なかったが、とりあえず頷いて言われたとおりにして待つ。
瓶が開く音が聞こえ、瓶の中身が何かに注がれている音が少し聞こえた。

飲む量が決まっているのかもしれないと、呑気な事を考えている俺の口に柔らかい何が添えられて、ゆっくりと液体が入ってくるのがわかった。

なんか液体は生温いし、飲みにくくて少し口の端から溢れた気がする……。
嫌な予感がした俺は目を開けて驚愕した。

目の前にルーディアの顔があったからだ。
そしてルーディアは真剣に俺に液体を飲ませてくれている。そう、ルーディアの口で……。

「!?!?!?!?!?」

余りの驚きにおれは口に含んだ液体を勢いよく嚥下した。そしてゴクリと音がしたことに安心したのか、ルーディアの顔が離れていく。

「どう、ですか?」

どう、とは?え?キスの事ですか?

「薬は効いて来ましたか?」

薬、薬ね!!
全く恥ずかしがっている気配のないルーディアに、物凄く真面目な性格だからこそ出来る技だなと、俺の方が恥ずかしくなってしまった。

俺は一度深く深呼吸して、体の調子を確認する。
先程まで俺を蝕んでいた魔力の気配が無くなっていた。

ならば呪いにも何か効果がでているのではないかと考えた俺は、さっそくステータスを確認した。
しかし呪いの症状は全く変わっていない。それに他に良くなった場所も特に無くて、少しガッカリしてしまった。

そんな簡単にこの呪いに効く薬があるわけが無いよな。

「もう大丈夫だ。ところでその薬は……?」
「これは僕が開発した薬なんですけど、他人の魔力によって操られた人にかけたり飲ませたりする事で、その魔力を消し去る事が出来る予定なんですけど……まだ少しの魔力しか消しされなくて失敗作なんです」
「いや、失敗作なんかじゃないさ。俺はその薬に救われたんだ……ありがとう」

そう冷静に言う俺は、心の中ではテンションが爆上がりしていた。
自分で開発するなんて凄い、錬金術師っぽい!!!

そんな事を考えてるとは知らないルーディアは「僕、頑張ります……」と俺の手を握って呟いていた。


それから1時間程で完全に復活した俺は、ルーディアと細かい話し合いをする事になった。
必要な素材を確認した俺は、再来週までに素材を集めてくると約束をし、そんなルーディアは「そんなに早く!?」と驚いてくれたりしたのだった。

「ところで、この魔法陣はどうすれば?」
「そのままにしておいて下さい。これは僕とセイの契約書みたいな物なので、必要になれば必ず役に立つと思いますから」
「ルーディアがそう言うのならそのままにしておく」

絶対ライムに何か小言を言われるだろうけど、今はルーディアの言うとおりにしておこう。
そして俺はどうしても知っておきたい事を聞いてみる。

「それともう一つ。この素材で調合すると何が出来るのかを調べて欲しい」

俺は呪いを解く為に必要な素材を使って、一体何ができるのか全く知らない。
そんな調合方法もわからない状態で、どうやって呪いを解くアイテムを作ればいいのか全く手付かずだったのだ。

だから錬金術師のルーディアであれば、もしかしたら何か知っているかも知れないと、予め書いてきた紙を渡す。
ルーディアは真剣に紙を見つめると、申し訳なさそうに答えた。

「今の僕にはわかりません……。ですが必ず解き明かして見せますので、お任せください!」


そう力強く言ってくれるルーディアに感激した俺は、依頼料よりも多くの金銭を渡しその部屋を後にした。
帰りは転移で帰ったので疲れずにすんで一安心。

とりあえず、まだ時間があるから帰りにダンのところに寄って、来週の予定を伝える事にしたのだった。
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