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プロローグ
4、禁書と秘密の部屋(後編)
しおりを挟む何故第5王子にそんな試練が与えられているのか、それはこの膨大な図書室に入ってすぐの場所ある本に書いてあった。
きっとここに来た第5王子が、一番最初に読めるように配慮してあるのだろう。
そしてその中に書いてあったのは、第5王子は必ず転生者が生まれてくること、その転生者は魂の癒着が上手くいかないために魔素を循環させられないこと……。
そのため魔素が停滞してしまい、その力に耐えきれず衰弱して死ぬと言うものだった。
細かく言うと、この世界では空気中の魔素を体に取り入れて魔力に変換して使用する。
しかし転生者は魔力変換が上手くいかず、魔素がそのまま体に溜まってしまう。
それなのに体は魔素を無理やり変換しようとする。
その結果、魔素を変換する為に必要な魔力エネルギーを無理やり吸い取ろうとするのだ。
しかし魔力エネルギーを吸い取ろうにも、魔力が無いため代わりに生命力を吸い取られてしまう。
それなら魔力を分けて貰えば魔素を魔力に変換出来るのかと思ったこともあったが、まず魔力が循環しない体にそれは毒以外のなにものでもなかった。
何故なら魔力が一箇所に止まるため、それが体から抜けるまで体が動かなくなってしまうのだ。
そして魔素をどうにか排出したとしても、増える魔素容量にいつか身体が耐えられなくなり、体力の減少量が肥大化していく。
そして最後には、衰弱して動けなくなり必ず死ぬ。
それを抑えるため初代第5王子は魔素を一時だけでも中和できる、新たな魔術を生み出していた。
その生み出された禁呪の名前は『魔素分析術』という。
これが俺の今使っている魔術である。
この術は身体に溜まった膨大な魔素を使用する魔術である。しかし先程言ったとおり、魔素を使用しても死が遠のく事はない。
所詮一時的な措置であり、寧ろ魔素許容量が増えやすいのか、大量の魔素を放出した後の方が体の負担が大きいことに気付いてしまったのだ。
それでも使い続けるのは、これが無いと呪いを解く事さえも出来ないとわかっているからだ。
どうせ死ぬのなら死ぬ気で足掻いてやるしかない。
そしてこの魔術が禁呪にされている理由、それは普通の人間が使うと体の魔素だけでは到底足りず、全ての魔力を使い切るはめになるからだ。
ようは、魔力枯渇による体力減少の影響により簡単に死ぬ恐れがあるらしい。
これ程膨大な魔素を使うことからその魔術規模は大きく、大規模魔術、身体強化、転移、飛行、亜空間ボックスなど、まるで転生者の夢を集めた物ばかりだった。
多分この転生者の趣味でもあると思う。
しかしこの魔素分析術を作り出した初代第5王子である転生者は、呪いを解く事が出来ず死んでいる。それでも結婚し、子供はいたようで21歳まで生きていた。
そしてその続きを読み、俺は最初絶望した。
その後、何十人もの転生者が同じように生き、死んでいたのだ。
ようするにこれまで呪いを解いた者は、誰一人としていないということである。
しかし俺には一つの希望も見つかった。
一つ前の転生者が息絶え絶えに記した、呪いを解くための素材がそこには書き記してあったのだ。
材料はホーリードラゴンの角、聖霊樹の木の実、妖精の鱗粉、悪魔の溜息、女神の涙、祝福の鈴、刻の調律の計7つだ。
ホーリードラゴンの角、聖霊樹の木の実、妖精の鱗粉は探索素材であり、祝福の鈴と刻の調律は錬金術で作れる素材。悪魔の溜息と女神の涙は、いまだに何かわかっていない。
最初は家族を頼ろうと考えていた俺だが、この素材の中にSランクの物があると知ると、その考えをすぐにやめた。
何故ならSランクの素材が市場に出回る事はないからだ。
それはつまり入手には莫大な金が必要になるということである。それも普通に生活していたら絶対に見る事のない金額なのだ。
そんなお金、誰かに簡単に頼めるわけがない。
だからこそ俺は全て一人でやる事に決めたのだ。
それにもしこのチート魔術を手に入れた俺自身ならば、それを成し遂げられるかもしれない。そう思った俺は、数年の間に魔術を完璧に扱えるようになっていた。
そして10歳の頃、俺は誰にも知られることなく冒険者となったのだった。
そんなこんなで素材集めをしている間に、気がついたら7スターSSランクの冒険者になっていた俺は、Sランク素材である精霊樹の木の実を、すでに手に入れる事が出来ていた。
そして他にも手に入った素材は、ホーリードラゴンの角、妖精の鱗粉である。
ようは自力でどうにか出来そうな物だけ集める事が出来たのだ。
しかし、問題はそれ以外だった。
残っている物は、錬金術師が居ないと作れない物と何かわからない物。それらを集める為には、まだまだ情報を集め続けなくてはならない。
そして俺はずっと錬金術師を探しているのだか、まだ見つかってもいなかった。
とにかく今は情報集めだと、何度も読んだ本を手に何か役に立つ物は無いかと調べ直してみた。
だけど何度読んでもそれ以上の情報を得る事ができなかった。
「はぁ、進展なし……。それに一番早く亡くなった第5王子は18歳か……こんなことならついでに確認するんじゃなかった」
俺の一つ前に生まれた転生者は、あと一歩のところまでいったのに亡くなっている。それも早死にだ。
もしかすると俺のように無理をしていたのか……?もしそうであるのなら、自然と俺の死も近くなる訳である……。
なにより俺は今、16歳。そして誕生日まであと数ヶ月と迫って来ている。
あまり時間はないと言えるだろう。
ため息をつき、これからの予定を考える。
明日はとりあえず出かける前の最終調整をマニとおこなう予定だ。
そして明後日には錬金術師の調査をする為にギルドによる。ついでに何か依頼を受けたら良いだろう。
それに今回もダンには手伝って貰う予定だし、これから忙しくなる。
そう思い、俺は急いでこの部屋を後にしたのだった。
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