やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第三章 調合編

24、言ってやりたいこと(前編)

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スライム達に救われた翌日。
いつまでも光り輝くスライム達のせいで、俺は寝不足だった。

だけどライムは、まだ俺の横で穏やかに眠っている。
ステータスを確認したが、ほぼ通常と変わらない数値に戻っている事にホッとした。

そして俺は、昨日あれだけ魔素を吸われたからか、凄く体が軽い。
こんなこと今までにない感覚だった。

いつも魔術で魔素を吐き出した後は、体に負荷がかかっていた。
でも今回みたいに魔素を吸収された場合、きっと魔素を吸い出した側には負荷がかかるけど、魔素を奪われた側には影響がないのかもしれない。

そう思うと昨日のスライム達が少し心配になりつつ、最近の負荷がかなり酷かった事を実感していた。

なにより俺の一つ前に転生した第5王子は、早死にしている。
俺の考えが当たっているのなら、その人は俺と同じぐらい魔術を使っていたはずだ。
やはりこの魔術は、体への負荷が少しずつ酷くなっていくのかもしれない。

だから魔術を使うのはなるべく控えるべきなのだが、現状そういうわけにもいかない。
だからこれは、俺の胸の内だけに秘めておくことにする。
ライムが気づきでもしたら、魔術禁止令がでてしまうからな。

俺はため息をつき、ダメだダメだと頭を振る。
だって今日だけは絶対に落ち込んでなんていられないから……。
だからその事を今は忘れて、今日という日の事を考えることにした。


何故なら、今日は俺の誕生日だからだ!

もちろん、俺の一番大好きな兄である第3王子のデオルライド兄上が、お祝いしに来てくれる予定なのだ。
だから本当なら来てくれるまでウキウキなんだけど……。

そう思いながら、俺は現実逃避をやめてこの部屋を見回した。
現在、俺の部屋には何処を見ても、スライム、スライム!スライム!!スライムが敷き詰められていた。

これをどうにかしないと、デオル兄上を部屋に入れる事は出来ないだろう。
俺は頭を抱えて、暫くうんうん唸ったのだった。


「……?……あ、主?」

どうやら俺の声がうるさかったのか、ライムが目を覚ましてしまった。
それなのに俺は、丁度いいタイミングに起きてくれた!とライムに抱きついてしまった。

「ライム!大丈夫か?体におかしいところとかないか?」
「……っ!?こ、これは夢でしょうか……私は生きていますし、い、イルレイン様の方から私に抱きついて頂けるなんて……!」

ライムは何故か感激しながら、俺を抱きしめ返してきた。そんなライムに、俺は起きたらまず最初に言ってやりたい事があった。
だから一度体を離そうとしたのに、ライムの力が強すぎて全くびくともしない。
仕方がないと諦めた俺はライムの耳元で叫んだ。

「ライム、これは現実だ!それにいいか、まず言わせてもらうけどな……俺なんかのために命をぽいぽい捨ててたら、いくつ命があっても足りないんだぞ!」
「は、はい……いえ、すみません。では本当にこれは夢じゃないのですね……」

そう言いながら、ライムはさらに強く俺を抱きしめる。

「そうだって言ってるだろ。それにまだ話は終わってないから、ちゃんと聞いてくれ!」
「はい、すみません……」
「とにかく俺が言いたいのは、勝手に俺を救って、勝手に死のうとするんじゃない!ライムが俺の死を悲しんでくれるように、俺だってライムが死んだら悲しいってことぐらいわかってくれよ!!」

その叫びにライムは体を離すと、俺の顔を見てハッと目を見開いた。
そんなライムをじっと見続けていたら、ライムの指がそっと俺の目元にふれた。

そこで初めて俺は、自分自身が涙を流していることに気がついた。
でも、出てしまったものは仕方がない。
俺は目元に触れるその手を離して、やけくそ気味に言った。

「俺は絶対に死にたくない。だから俺が諦めてもないのに、お前が勝手に諦めるな……」

腕でゴシゴシと涙を拭った俺は、悲しげに眉を寄せるライムを見つめる。
そして俺の瞳に耐えきれなくなったのか、ライムは俯いてしまった。

「……主、確かにそうでしたね。主だけ生き残っても誰が面倒を見るのでしょう」
「そうだぞ、俺の面倒をここまで見てくれるのはライムしかいないんだからな」
「そうですよね。……では、私はまだ主の面倒を見てもいいと言うことでしょうか?」

心配そうに顔を上げたライムに、俺は笑顔で言ってやった。

「もちろん!これからも俺のこと、よろしく頼むからな」
「……っ!お任せください。私は許される限り、一生イルレイン様のものですから」
「言い方が大袈裟だよ!!!」

執事の愛が相変わらず重いけど、、少し元気になったようでよかった。
俺は安心すると、改めて周りを見回した。
そこにはスライム達が俺らの様子を見守ってくれていたようで、顔がないのにこちらを見ているように見える。

そして俺はこのスライム達の事を、ライムにもちゃんと知って欲しかった。
そう思った俺はライムに改めて向き直るのだった。
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