やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第二章 錬金術師編

19、錬金術について

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失敗ばかりで落ち込んでいたルーディアが、俺の機転でやる気を出してくれたのはありがたかった。

だけども何故か先程から、なにかとルーディアの距離が近い気がする。
それにこちらを見つめる目は、俺を母親だと思っているような、そんな瞳に見えてしまうのだ。
たがら俺はとりあえず話題を変えようと、ずっと気になっていた事を聞いてみた。

「今更ながら気になっていたんだが、錬金術とはどういった方法で物が出来るんだ?」

実は呪いを解く素材の中に、錬金術ではないと作れないものがあると知って、自分で錬金術を学ぶか悩んだときがあった。
しかし錬金術を学ぶだけで、死ぬまでの期間を超えそうだったから諦めてしまったのだ。
だから普通にどういう原理なのか興味があった。

「そうですね、実際に魔術道具などを見せながら説明しましょうか」

そういうと何故かルーディアは俺を抱え上げ、隣の部屋に移動し始めた。
完全に俺の事を母親と重ねて、介護モードに入ってしまっているようだ。

「有難いが、この距離なら歩いて行ける」
「それはすみません。でも持ち上げてしまったので最後まで運びますね」

ニコリとそう言われたら無理に降りる訳にもいかず、俺は大人しく隣の部屋に運ばれたのだった。


「では錬金術とは何かですが、簡潔に錬金術とは素材と魔素、そして魔術道具によって作られる物の事です」
「確かに、それは聞いた事がある」
「では、何故それらだけで全く別のものができるのか……それは魔素と質量のバランスが法則で成り立っているからです」
「魔素と質量?」

聞いた事のない言葉に俺は首を傾げる。
パッと思い出せたのは、前世で習った質量保存の法則だったけれど、この世界にその理は通じないという事だろうか?

「例えばスライムが他の魔物に進化した場合、サイズや質量が明らかに変わってしまいますね。それを補っているのが体内に蓄えられた魔素だと言われています。そしてその原理で考えるならば、ある物質に魔素を無理やり加えると、質量も形状も異なるものが出来上がるはず、と言う考えで生み出されたのが今の錬金術なのです」
「成る程だからマテリアルや、魔石を使ってその魔素を補っていると……」

なんとなく理解した俺をルーディアが嬉しそうに見つめ、近くの魔術道具であるフラスコのような物を俺の前に出した。

「それだけではありません。錬金術を行う魔術道具には魔素変体を上手く行えるように、効率を上げるための魔法陣がこのように描かれているのです」

その魔術道具をよく見ると、とても沢山の魔法陣がびっしりと描き込まれているのがわかる。
そしてその並びはとても芸術的に思えた。

「近くで見るまで気がつかなかったけど、凄く綺麗な魔法陣が描いてあるんだな」
「これは僕が描いたものなんです。魔法陣を描くのが得意なものですから……何だかセイに褒められると嬉しいですね」

そういいながらルーディアは、俺の左手を見つめた。そこにはルーディアが描き込んだ魔法陣がいまでも綺麗に残っている。
それを確認すると幸せそうに目を細め、俺の手を優しく撫ではじめた。

その気恥ずかしさに耐えられなくなった俺は、魔術道具をもう一度見ることで、ルーディアから視線をそらす。
そして少し冷静になった俺は、前にライムが言っていた事を思い出していた。

確かライムは、『錬金術は使っている道具が全て』と言っていた気がする。
なら道具の質を上げればさらに良いものができる、という事になるのだろうか?
確認しようとルーディアを見ると、いまだに俺の左手を優しく撫で続けていた。仕方なくその手に触れて、ルーディアをこちらに向けさせる。

「その、効率を上げるためには、魔術道具の素材も関係しているのか?」
「ええ、そうですね。魔術道具の素材は魔力を伴った素材や、魔素を蓄えやすい素材の方が、魔法陣の効果を上げることが出来ます。でも僕にはツテも金もありませんから、安物の素材で作った魔術道具に、オリジナルの魔法陣を施すことで、カバーしているんです……でも、そうか!」

そういうとルーディアは勢いよく作業台の方へと行き、近くにあった紙を殴り書きするように、何かを書き始めた。

「魔法陣の効率をもう少し高める事ができれば……確かまだ試していない方法があったはず」

そうブツブツ呟きながら、色々な資料を見てはそこら中に置いていく。このままではこの部屋から出られなくなるのではと思い始めた頃。


「あっ、セイすみません。あなたがいる事を忘れていました。宜しければ来週まで待っていてくれませんか?」
「いや、すまないが再来週でも良いだろうか?俺も確認したい事ができたのでな」
「そうでしたか……もちろん再来週でも大丈夫です。そ、それと今さらこんな事を言うのはおかしいのですが……僕が絶対にセイの病気を治して見せますから、待っていて下さい」

その言葉に俺は嬉しくて笑顔で頷く。
そんな俺をぽーっと見ていたルーディアが、ポツリとこぼした。

「ずっと僕の母さんでいて欲しいですね……」

???????
この人はいったい何を言っているんだ?

困惑しながらポカンとルーディアを見返した。
そんな俺の視線に気がついたのか、ルーディアはハッと俺を見つめ眉を潜めた。

「でもこの依頼が終わったら、もうセイには会えなくなってしまいますよね。そうなったらもう、母親にはなって貰えないですよね……」
「?????」

俺は本当にルーディアが、何を言っているのか理解できず、とりあえず母親の話は置いといて、今言える事を伝える。

「そんなことはない、ルーディアさえよければまた依頼をさせてくれ。それにまだもう一つの依頼もあるし、依頼がないと来てはいけないと言うわけでは無いんだろ?」
「本当ですか!いつでも会いに来て下さい。それで、そのときはたまに母親の変わりになって下さいね」
「ん?……あ、ああ」

ルーディアの言葉を理解できないまま頷いた俺は、次来たときにはその症状が治っている事を祈り、この部屋を後にした。
戻ったらライムに確認したい事があったのだ。
でも確認できるようになるのは、また2、3日後になるだろう。

この呪いは本当に面倒なものだと、俺はため息をついてしまうのだった。
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