やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

文字の大きさ
上 下
16 / 110
第二章 錬金術師編

14、錬金術師の君は?

しおりを挟む

とうとう錬金術師に会いに行く日になった。

緊張している俺は、ちゃんと冒険者に見えるように、いつもよりローブの中にいろんな防具を付けたりしていた。
でもローブの中だから見えなくね?というツッコミはしてはいけないのだ。

それに女の子だといけないからね、きちんと身なりも整えました。
顔をあまり見られないようにフードを深めにかぶってるからほぼ見えないけど、女性だったら普段気づかないところまで見ているかもしれないからね!

そんな不毛な少しのドキドキを妄想しながら、俺は錬金術アカデミーに入ったのだった。


「はじめまして、僕がルーディアです。貴方が僕を指名した冒険者……?ですか」

やはり現実は上手くいくわけがない。俺の目の前にいるのは、間違いなく男だった。
この間の受付近くで待っていたその青年は、紺色の髪を一つに束ねて、少し疑わしそうに紫色の瞳をこちらに向けていた。

やっぱり俺って冒険者には見えないですよねぇ……!
ここで弱気になってはいけない。今は7スターSSランク冒険者のセイなのだから。

「間違いなく冒険者だ。ギルドカードを確認するか?」

持っているギルドカードを渡すとルーディアはカードと俺を交互に確認し、顔を青くした。

「す、すみません。依頼主を疑ってしまうなんて、僕もまだまだですね……」
「わかってもらえたなら構わない。挨拶が遅れたが、俺はセイだ。今回は依頼を受けてくれてありがとう」
「いえ、こちらこそ指名依頼を受けたのは初めてでして。なのでどんな方が見えるのかとビクビクしていたら、貴方のような人が来たものですから、ついからかわれているのかと……」

少しシュンとしてしまったルーディアをみて、普段から民間向けの依頼を受けているのに、いきなり一度も依頼を受けた事がない相手から依頼が入ってきたことで、かなり警戒させてしまったのかもしれない。
少し申し訳なくなってしまった俺は頭を下げる。

「急いでいたもので、すまない。それより立ち話もなんだし依頼内容についても確認して欲しい。どこか話せる場所はあるだろうか?」
「そ、そうですね。余り周りの人に聞かれない方が良いのでしたら、少し汚いですが僕のアトリエに来ますか?」

錬金術師のアトリエ?凄く気になるんだが……!
そんな好奇心を持った俺は、色んな確認をすっ飛ばして「頼む」と即答していた。


そういうわけで、俺は錬金術アカデミーのさらに奥へと案内されたんだが、ここのアカデミー広すぎない?

俺はスタスタと先を言ってしまうルーディアを追いかけるのに必死で、そのせいなのか途中で息切れをしてしまったのだ。
そんな俺に気がついたルーディアは、さらに俺を怪訝な目で見るとこう言った。

「こんなすぐに体力がなくなるなんて、本当に冒険者なんですか?この距離で疲れるのは小さな子供でもあり得ませんよ」

その言葉がもろに俺に刺さる。
体力が無いのは分かっていたけど、俺の体力は小さな子供以下なのか……。
いつも転移していたし、移動があるときはダンに運んで貰っていたから気にしていなかった。

「き、今日は調子が悪い……」

言い訳としては苦しいだろうか?
というか、今誤魔化しても今後ずっと誤魔化し切れないよ!
だから急いで訂正する。

「いや、今のは嘘だ。ちょっと持病があるだけで……」

しまった!ついポロッと持病って言っちゃったよ……。あんなにも余計なことを言わないようにと、ライムに釘を刺されていたのに!
焦った俺の脳裏で、ライムに小言を言われるという未来が、一瞬見えた気がした。

首を降りつつ、ルーディアの顔色を伺う。
物凄くぽかんとしてる。ここまで話したら絶対に根掘り葉掘り聞かれそう……。

「……今、持病と?そんな状態で7スターSSランクの冒険者になったのですか?それに7スターSSランクと言えば最強の座とも呼ばれるランクですよね?いや、それをここで聞くのはまずいか……」

そう言いながらルーディアは周りを見回す。
ここはまだアカデミー内のアトリエに向かう途中の廊下である。
勿論周りには珍しい格好をした俺を、ジロジロと見ている人も少なからずいるわけで……。
あまりここで話したい内容じゃないのは間違いない。

「わかりました。あと少しですから、僕がおぶって行きますよ」
「え?」

突然ルーディアが俺の前に跪き背中を見せた。ここに乗れ、という事だろう。
いやいや、先程よりも視線が痛い!!!でもこのままじゃさらに人が集まってきてしまいそうだ。
だから俺は慌てて、彼の首に手を回し背中に体を預けた。

「す、すまない。重かったら遠慮なく言ってくれ」
「よいしょっと……あの、えっと言いづらいんですけど……」

もしかしてそうとう重たかったとか?
ルーディアは錬金術師だから、そんなに鍛えているようには見えない。重いのならすぐに下ろしてもらおう。

ルーディアは俺をおぶって歩きながら、少し考えると素直に教えてくれた。


「あの?ちゃんとご飯食べてます?」
「え、勿論。ってどういうことだ?」
「えっと余りにも軽すぎですし、この足も細過ぎる気がして……あっ、まさか本当に持病が……?」

ああ、ルーディアは察しが良すぎて俺は涙が出そうになる。
普段俺に触れる人物は限られているし、ダンやライムも呪いについて少しは知っている。
だから俺にそんな事は聞いてこない。

でも確かに俺は呪いのせいで筋肉が全く付いていないし、寝てる時間が長いためガリガリなんだと思う。
それを誤魔化すためにローブを着ていたのに、その事さえも最近は忘れていた。

その後、部屋に着くまでルーディアは口を開く事はなかった。
そして部屋についた頃、もしかして飛べば良かったんじゃ?と、思った事は絶対に内緒にしたい。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...