やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第一章 冒険者編

7、ライムの牽制

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現在休憩中の俺は、このままライムに通信を入れるのを忘れると、また小言を言われそうだと思っていた。
だから仕方なくマニに手を乗せる。

「マニ、ライムと通信を頼む」

俺はライムをイメージしながらマニを撫でる。
すると徐々にマニの表面が波打ち、ライムが見えてきた。

『あ、主。連絡お待ちしておりました』
「ライム……顔が近い。もう少し離れてくれ」
『おっと、これは失礼致しました。余りにも連絡がないものですから、このスライムにくっついておりまして』

どんなに通信を待ってたんだこのスライムは……。
でも通信すると言ったのに忘れていた俺が悪いのかもしれないと、少し罪悪感が生まれたので一応謝る。

「遅くなってすまん」
『いえ、連絡があったのですからいいのです。それより、あのクソ男はどこですか?』

クソ男って……ダンの事だろうか?何故かライムはダンの事を好いていない。
きっとライムの見た目が原因なんだろうけど……。

「ダンなら……」
「お、ライムじゃないか!息子よ~元気にしてたか!!」
『私はお前の息子じゃないし、私の方が長生きしている!』
「まあまあ、そう言うなよ。見た目は俺とセイを足して2で割った容姿をしているんだからな」

ははは、と笑うダンに罵倒を浴びせるライムを見て俺は溜息をついたのだった。


ダンが言った通り、ライムの姿は俺とダンを合わせたものだ。
それはライムが人型を取る為に参考になる人間が、俺とダンの二人しかいなかったからだ。

そのせいでダンはライムを見るたびに俺との息子だと言いはり、ライムはライムでダンの姿が混ざっている事に嫌悪感を示していた。
そのためこの二人の相性はとても悪い。


「二人とも落ち着け!とりあえず、まずはご飯を食べたい」
「じゃあ、ご飯持ってくるから待ってろ」
『すみません。主の貴重な時間を割いてしまいました。しかしあの男と主、二人だけと言うのはやはり許せません!主はあの男の下心がわかっていないといつもいつも!』
「まあまあ、とりあえずごはん食べようぜ!」

ライムの声を遮るようにすぐに戻ってきたダンは、俺の前にどんどんご飯を並べていく。
いつも思うが、ご飯の量が多くないか?

「お前は食べ盛りだからな、腹一杯食え」
「ありがとな。それとライム、食べながらで悪いがアイスドラゴンの情報を教えてくれないか?」
『言いたい事はまだまだありますが、仕方ありません。主はゆっくりとご飯を召し上がって下さい。すぐに情報を持って参ります』

そう言い席を外したライムを待ちながら、俺はダンの作った料理を食べる。ダンの料理はザ・男の料理と言った感じで量だけは多い。
まあ、味も嫌いじゃないから食べられるだけお腹に詰めていく。

「おい、もっとゆっくり食べろよ。それとも俺が食わせてやろうか?」

クスリと笑うダンの皿の料理はもうすでに食べ終わっているように見える。

「一人で食べれる」
「昔はたまに食べさせてやったのにな……」
「10歳のときの話を毎回蒸し返してくるな!」
「ははは。まあいつでも食べさせてやるから、困ったら言えよ」

そう言って俺のほっぺについたご飯粒をサラッと取り、パクリと食べてしまえるダンはやはりイケメンだ。それなのに何故結婚していないどころか、彼女もいないのか?
正直ダンの方がハーレム作れそうだよな……と、ダンを見つめてしまった。

「おいおい、そんなに見つめられたら照れちまうぜ」
『照れるついでに爆発してくれませんか?』

見つめあってる俺たちの間に冷たい声が割り込む。
先程情報を集めに行ったライムが戻ってきたようだった。

「うわっ!ライム、戻ったなら言ってくれ!!」
『すみません。まさか主をこんなに驚かせてしまうとは思いませんでした。ではアイスドラゴンについてですが……』

俺は口をもぐもぐさせながらライムの話に耳を傾ける。


『アイスドラゴンは吹雪が吹き荒れる場所で発生しやすい魔物であり、魔力の偽装が得意です』
「魔力の偽装?」

聴き慣れない言葉に俺は首を傾げつつ、ご飯を食べる手は止めない。

『はい。正しくは偽装に見せかけるため自らを凍らせて、仮死状態にする事で相手に気配を察知させないそうです。そして獲物が近寄ってきた場合、不意打ちを狙うように仮死状態を解き、獲物を仕留めるのが得意との事です』
「ドラゴンの癖に不意打ちが得意なのか……」

通常のドラゴンは交戦的で、自らの強さに対して絶対の自信を持っている。そのため今まで戦ったドラゴンは真正面から向かってくる個体が多かった。
でももし本当に、この地にアイスドラゴンがいて仮死状態で眠っているのなら、魔力反応が無かった事にも頷ける。

「それでどういう場所で仮死状態になるんだ?」
『文献によればアイスドラゴンは、氷山を生み出しその中に身体ごと隠すのだそうです』

氷山?そう言えばここに転移したとき、何処かで氷山を見た気がする。同じように気がついたのかダンが反応を示す。

「氷山だと?」
「ダンもか、何処で氷山を見たか覚えてるか?」
「何処でって……」

その答えを聞く暇もなく、俺たちを激しい揺れが襲った。椅子から落ちそうになった俺は隣に座るダンの方へと手を伸ばす。
なんとかダンの腰に手を回した俺は、ダンが勢いよく立ち上がり叫ぶのをしっかりと聞いた。

「氷山つったら、この聖域の真後ろにあるじゃねぇか!!!」
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