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プロローグ
4、禁書と秘密の部屋(前編)
しおりを挟むあれから数日経つが、結局兄上は来なかった。
でもだいぶ調子が良くなった俺は、ベッドの上で体を起こし宙を見上げていた。
そんな俺の前には、沢山の画面が表示されていた。
これはステータス画面を見る能力を応用させ、俺の得た知識などを簡単に表示出来るようカスタマイズしたものだ。
そして今現在、俺のステータスは前程酷くない。
それはステータスの存在に気がついてすぐの頃、色々確認した結果俺には加護が付いていることに気がついたからだ。
そんな俺が持つ加護の名前は《生命の泉》だ。
名前のとおり生命力を回復してくれる、今の俺には大変ありがたい加護である。
そしてこれは竜神により授けられたものだった。
このブルーパール王国にはその名前と同じ竜、ブルーパールドラゴンの加護によって守られている。
だからこれはきっと王族が得る加護の一種だったのだと思う。
そしてそれのおかげで俺は今も生きている。
でも呪いが発症した頃はその加護を上手く使う事ができなかった。しかし今では取得した知識を使い週に一度冒険者として動ける程には上手く調整することができるようになっていた。
そんな事を思いながら、画面を操作しつつ俺の腹の上にいる一匹の青紫のスライムを見る。
「マニ。魔素を魔力に変換後、外に放出してくれ」
マニと呼んだスライムの中に手を突っ込み、俺は自分のステータス画面を確認する。
このマニというスライムは、マテリアルスライムといい魔素を取り入れて蓄えるスライムだった。
そしてどのスライムよりもプニプニなので、俺の一番のお気に入りスライムでもある。
名前はマテリアル(プニプニ)スライムから略してマニと呼んでいる。
うーん、今回も魔素の増加量と体力の減少量ともにほぼ変化なしか。もう少し活動時間を増やしたいところだけど……今は仕方がない、とりあえずあの図書室へと行くことにするか。
俺はマニから手を離すと、感謝を伝えるために持ち上げる。
「いつもありがとな、マニ」
ペットにキスをする気分で軽くマニに唇を当てると、マニは嬉しそうにうごうごと動いていた。
その姿に自然と笑顔になった俺は、視線を感じて横を見る。そこにはこちらを壮絶な顔で見つめるライムの瞳があった。
「主……」
「ライム。すごい顔してるけど、どうした?」
お前そんな顔できるのか。と驚いている間にライムがこちらに向かってきた。
「主!マニには感謝のキスを落とすのに、私には何故なにも無いのですか!?」
「あれはペットにするキスと同じだから……」
「私は従魔ですからペットと同じはずです!」
従魔ってペットと同じでいいのか?
首を傾げる俺に、ライムはさらに詰め寄る。
「なので、私のここにもキスをお願いします」
そう言って右のほっぺを指し示すライムに、俺は一瞬躊躇してしまう。
ペットと言われても同じ人として認識しているからこそ、とても恥ずかしいのだ。
しかし、じっとライムに見つめられると嫌と言えない俺は、素早くライムの頬に唇を寄せた。
「ライム、いつもありがとな」
唇がライムの頬に軽く触れる。
その感触はマニと同じプルンプルンで、やはりスライムなんだと思ってしまう。
「主、ありがたき幸せ……」
ポツリとそう呟いたライムは、感極まって動かなくなってしまった。
俺はため息をつくと、やらなくてはならない事を思い出した。
「ライム、俺は今から図書室に向かう。後は任せた」
「はっ、お任せ下さい」
その言葉を聞きつつも俺はすぐに転移をした。
本調子ではない今は転移するのも一苦労である。
そして着いた場所は薄暗く、とてもじめっとしていた。
ここは誰にも知られていない図書室だ。
実は王宮の地下にひっそりと存在しているのだが、気づいている人間は俺以外いないだろう。
昔この図書室に辿り着いたのは、王宮にある図書室の魔導書を借りて、全制覇する勢いで読んでいた頃だった。
ある本に挟まれていたそれは、俺を震撼させるのに十分だった。
その本には、俺の知っている言語が記されていた。
ようは前世の言語が書かれていたのだ。
『この文書が読めた者へ、呪いについて知るために秘密の図書室へと案内しよう』
そう書かれていた場所に辿り着いたとき、俺はさらに驚いた。
その図書室の書籍は、ほぼ全て前世の文字で書かれた物が置いてあったのだ。
その内容は『第5王子の呪い』について書かれた本、そして禁呪についてだった。
そしてここにある全ての本が、今まで亡くなっていった第5王子達によって書かれたものであった。
その本を読んだ瞬間、俺は思い出していた。
生まれてから今まで、確かに周りの人達は俺を見ながら第5王子の呪いについて話していたことに……。そして俺はそれをいいように、聞こえないフリをしていたのだ。
そしてその呪いと言うのは───。
この国の第5王子は、必ず呪いで亡くなってしまうというものだった。
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