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三章までの間話
151 苛立ち(ガリア視点)
しおりを挟むガリア視点です。
だいぶ前に戻りますが、デオが夢から脱出してすぐのガリアの話。
ー ー ー ー ー
デオを奪われ夢から戻ってしまった俺は、まだ帰ってこないセルロウに苛立ちを募らせていた。
あの時セルロウが待機していれば、あんな無様にデオを奪われずにすんだ筈なんだ……。
そう思いながら俺は、デオの為に準備した部屋で一人立ち尽くしていた。
ここは夢の中でデオと過ごしていた部屋と全く一緒であり、いつか本物のデオをここに招待する予定で作った部屋だった。
しかし忌々しい事にあの男が常に側にいる為、デオをここへ呼び込む事は難しくなってしまった。
だから俺は、デオを夢に閉じ込める事にしたのだ。
夢で空間を作り上げるには実物がある方が影響されやすくなる。その為、デオはこの部屋から抜け出せずに何もできなかった筈だ。
つまり、俺の計画は完璧だった。
……それなのに、あの男は全てを突破してデオを助けに来たのだ。
セルロウの話では、あの魔法を突破する事は絶対に不可能だと言っていたのに……。
いったいどんなチート能力を使ったと言うのだ?
そして何よりおかしいのは、現実に戻ってきてから俺の魔力バランスが崩れている事だった。
きっとその原因は誓約を結んでいる筈であるデオの魔力を、俺が捉える事が出来なくなっている事にあるのだろう。
確かに夢であの男はそんな事を言っていた気がするが、特定の人物への魔力干渉を封じるアイテムなんて聞いた事がなかった。
その為、俺はハッタリかと思っていたのだ。
しかし今、デオへと送られる魔力が俺へと戻ってくる為、力の制御が上手くいかないのは間違いなく事実だった。
「くそっ……」
コントロールできない力のせいで、軽く殺気を飛ばしただけなのに鏡がバリンっと割れてしまう。
このままだと怒りでこの館自体を壊してしまいそうで、困ってしまうね……。
そんな事を考えていると何処からかそっと忍び寄る気配を感じて、俺は後ろを向いた。
「これはこれは、旦那様。夢からお目覚めでございますか?」
そこにはようやく戻って来たのか、セルロウの姿があった。
「どこへ行っていたのだ?お前がいなかったせいで、大事な彼をまた奪われてしまったよ!」
「おやおや、それは私のせいでございますか?」
「お前がここにいれば、奴に負ける要素などなかった筈だ……!」
俺が怒っているのに、セルロウは笑顔のままその表情が変わる事はなかった。
「はたして、本当にそうなのでしょうか?」
「……何が言いたい!」
「私はここ数日、王都へと足を運んでおりました」
「何故、王都に?」
「そこにデオルライド様のご身体があると聞いたからでございます」
「デオの……?」
俺はデオの名を聞いた途端、怒りがスッと鎮火したのがわかった。
そしてゆっくりと冷静を取り戻していく。
「……まさか、セルロウはデオをここへ連れてこようとしてくれたのかい?」
「その通りでございます。旦那様の願望は夢の中だけでは物足りないと思いまして……しかし残念ながら、デオルライド様は王宮の中におりまして簡単に連れ出す事は叶いませんでした。申し訳ございません」
「……成る程、王宮ならば仕方がないさ。あそこは俺にも入る事のできない場所があるからね」
ただでさえ、あの王宮には謎が多い。
噂では地下には何かの研究施設があるのではないかと言われているのに、俺はその存在を全く確認できなかったのだ。
もしそこにデオがいたのなら、王宮最高峰の宮廷魔術師によって魔法を解呪された可能性がある。
それならば、元宮廷魔術師であるセルロウの術が破られてしまったのも仕方がない事なのだろう。
「俺もデオの居場所はなんとなく把握していたけど、王宮に滞在しているとは知らなかったよ。しかし場所さえわかってまえば、今度はデオを直接迎えに行く事が出来る……」
魔力を切断されている以上、夢に引き摺り込む事はもう不可能だ。
それなら俺に残された最終手段は、直接デオを迎えに行く事しかない。
「しかしその為には、あの男に邪魔されないようにどうにかしなくてはいけないのだが……」
「でしたら私が丁度いい人材を見つけて参りましたので、どうぞご利用下さいませ」
そう言って指を鳴らしたセルロウの足元に、突然1人の男が現れた。
その姿はグッタリとして意識は朧げに見える。
きっと何かの精神魔法をかけられているのだろう。
そしてよく見るとその姿は何処かで見た事があった。
「彼は確か……前にデオを追っていた騎士の1人じゃなかったかな?」
「その通りでございます。デオルライド様を進化させるご予定ならいずれ生贄に使えないかと思い、腐っている所を拾って来たのですが……この男はデオルライド様とお知り合いでございますから、警戒心も薄れるかと……」
「成る程。しかしデオに怪しまれないよう接触させるには、彼の意識を一度戻さないといけないね。それと確かコイツはデオを好いていた記憶がある。もしデオを上手く攫ってこれたのなら数回いい思いをさせて、そのまま生贄にすればいいだろう」
正直デオに触れさせるのは嫌だが、どうせその命はすぐに尽きるのだ。
最後ぐらい喜びを得て死んだ方が、この男も報われるだろうさ……。
「では、旦那様の仰る通りに……。ですがこの男が冷静になれば、話を承諾して頂けないかもしれません。ですから彼の中にある欲望だけは狂ったままになるよう調節する為、意識を戻すのに少しお時間を頂きます」
「ああ、後の事はお前に任せる。俺はデオをこの部屋に招待した後、あの男が来たとしても大丈夫なように対策をしておくさ。それともう少し強くなる為に数人狩ってくるよ……そして次こそ、俺はアイツに勝つ!」
「それはそれは……私は旦那様が勝利する瞬間を楽しみにしております。では私も準備がございますので、これにて失礼致します。また数週間は戻って来れないと思いますが、定時報告は致しますので何かあればお呼びください」
そう言うとセルロウは、足元にいた男ごとすぐに消えたのだ。
そして俺もそろそろお店を見て回らないと行けない時期だと、この館から一旦出る事にした。
各地を回りながら人狩りをして、戻って来たらすぐにデオを迎え入れる準備をしよう。
今度こそ、デオを俺だけのモノにしてみせる。
だから待っててくれよ、デオ……。
それに俺がデオに植え付けた種は、きっとまだ残されている筈だ。
……ウルランディスめ、何も知らずに偽りの愛を育むがいいさ!
できれば俺が迎えに行くまでにそれが残っているといいのだが……。
そう思いながら俺は、館にある転移用魔法陣へと足を運んだのだった。
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