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二章
101、見る側チーム(ゼント視点)
しおりを挟む一方その頃、ダンとゼントは……?
な、ゼント視点を2話お送りします。
ー ー ー ー ー
俺は今日、ここに来てから全ての事が現実なのかわからなくなっていた。
そして何もかもに驚き過ぎて、横にいるダンさんの後ろを歩く事しかできなかったのだ。
「ゼント、ガン見しすぎだぜ?」
「いや~、この世には不思議が沢山あるんですね。驚きがいっぱいですよー」
「ははは、こんなんで驚いてたらいつか心臓止まるぞ」
そう言うダンさんとは、先程まで一緒に会場の調査をしていた。
ダンさん的には、ここの娼婦関係は全員性奴隷ではないかと睨んでいるらしいのだけど、その裏はまだ取れていないようだ。
そして俺達は今、ウルさんとデオさんが出るショーを見に来ているのだけど……。
「ここもなかなかヤバイですね~?」
「まあ、ここは見ながらやる為の会場だからな」
客の半分ぐらいが既にヤってるのを見て、ドン引きしてしまう。
「見る専でも、この光景は引くんだな?」
「俺は多人数でしてるのはそこまで興味ないんですよねー」
俺が好きなのは、一対一で二人が愛し合う姿を見るのが好きなのだ。
人に触れない俺は、それを見る事で相手に触れてる気分になれるから。誰かに触れて愛したいという気持ちはこれでも人一倍もっているからね……。
「ふーん、ゼントには、ゼントなりのこだわりがあるんだな」
「そんな所です。それより次ウルさんとデオさんですよー」
「わかってるが、そのお目当てが出てきてくれるかが問題だな……」
どうやら二人は結構宣伝を頑張ったからなのか、あちこちで噂にはなっていた。
しかしその噂でちゃんと釣れるのか、そこが肝心なんだけど……。
ショーに出ているデオさんは相変わらずエロくて、俺が魅入ってしまいそうになる。
それに二人にはとても色気があった。
「ダンさん、あれが大人の色気ってやつですかね?」
「それはどうか知らねぇけどよ、相変わらずねちっこくて悪趣味だぜ……でも俺だってイルと、動物プレイしたいなぁ」
「させてもらえないんですか?」
「ドン引きされて、数日間口を聞いてもらえなくなると思う……」
デオさんの弟であるイルレイン様は一度だけ会った事がある。
見た感じでは、頑張って頼み込めばやってくれそうなチョロイ人に見えたんだけどなー?
でもそれぐらい、その人の事をダンさんは大事にしているのだろう。
「まあ、きっとチャンスが……」
「おっと、少し待て。ウルからの通信だ」
そう言われて、俺はすぐに手で口を押さえると邪魔をしないようにじっとする。
よくわからないけど、ダンさんとウルさんは同じ人と誓約しているからその副産物で通信が出来るんだとか、なんとか……よくわからないけど便利だと言うことは俺にもわかる。
「ゼント、顔を動かさずに左を見ろ。そこに髪が胡桃色で長身の男がいるのは、わかるな?」
ダンさんが小声で俺に言うので、視線だけでそちらを向く。髪色はよくわからないが、確かに長身の男がステージを凝視しているのがわかった。
その周りにいる人が、話しかけようかどうしようか迷っているのを完全に無視しているその姿は、ただ虚無しか感じられない。
気になった俺は小声でダンさんに話しかける。
「あの、あれって本当にターゲットなんですか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「だってウルさんから聞いたガリアとかいう男は、感情的な男って感じなのに……今、ステージを見てる姿に怒りも何も感じてないように見えますよ?」
ステージでは、愛しの相手が他の男にヤられているのに、男は乗り込む訳でも怒りを露わにする事もなく、ただじっとそのステージを見つめていた。
「確かにそう言われれば変だな……とりあえず接触してみるか」
そう思ってガリアの方を向くと、その男もこちらを見ていた。
「あー、やっちまったか。どうやら見ていたのがバレてたみてぇだな……」
向かって来るガリアに俺達は身構える。
しかし俺は、その近づいてくる虚無な瞳に恐怖を感じていた。
そして男は目の前まで来ると言ったのだ。
「ふむ、成る程。そういうことでしたか……貴方達は私に用があると見ましたけど、間違いないですね?」
「……ああ、そうだ。しかしそれがわかってて、わざわざ俺達に近づいて来る理由がわかんねぇんだけど?」
「確かにそうですね。ですが私も貴方に聞きたいことがあるのですよ」
「…………俺に?」
「ええ。しかしここはうるさいですからね、少し移動しましょうか?」
そう冷静に言う姿はやはりどう考えても、ガリアという男には思えない。
俺はダンさんを見ると、どうやら同じ事を思っているようだった。しかしその瞳は着いて行くぞと言っていたのだ。
そして俺たちは、何処に向かっているのかわからないその男の後ろを歩いていた。
ただ前しか見ない男へ聞こえないように、俺はダンさんに話しかけていた。
「ダンさん、確かガリアってデオさんの事が好きなんですよね?」
「ウルの話だと、イルの兄貴と誓約しているらしいからな。間違いなく好きな筈だぜ?」
「それなのに、ウルさんとヤってる所に全く興味無さそうでしたし、しかもそのまま放置してきましたけど……凄く怪しくないですか?もしかしてこれ自体が罠だとか……?」
「確かに怪しいし、間違いなく本人ではねぇと俺も思う。だが、それにしても俺に用があるってのは変だからな。ここは罠だろうが付き合ってやるしかねぇさ」
ダンさんは完全に偽物だと思っているようで、凄く微妙そうな顔をしていた。
きっとここに、本物のガリアは来ていないと思っているのかもしれない。
確かにこれは、ウルさんとデオさんに何と言えばいいのか困るやつだなー、と俺もダンさんと同じように微妙な顔をしたのだ。
そして俺達二人は微妙な顔をしたまま、その男について行ったのだった。
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