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二章
96、潜入
しおりを挟む突然の転移に、潜入ってそういう方法なのかと俺は驚いていた。
そして周りを見渡すと、俺達がいるのはどうやら倉庫のようだった。
「チケットは持ってるから正面から入ってもいいんだけどよ、ここはある貴族が持つ別邸の地下なんだが正規ルートで行こうとすると、時間がかかりすぎちまうからな」
「別の入口が用意されてるから、客には何処で開催しているのかわからないようになっているんだね?」
「まあ、そんなところだ。とりあえずお前とイルの兄貴はアレにエントリーしてあるけど、まだ少し時間がある。それまでに会場内の雰囲気を確認するといいと思うぜ」
俺はエントリーしているのが一体何なのかまだ知らない。
そのために俺は少しソワソワしていた。
「あとここには俺の部下も数人侵入しているが、もしこのオークションで違法な事に手を染めてる証拠があれば教えてくれ」
それに頷いた俺たちは、この倉庫から出るとオークション会場をぐるっと歩き始めたのだ。
そして、そこで見た光景は異常だった。
何故なら、そこら中で人目を気にせずにエッチをしている人たちがいたのだから……。
「オークション会場内は部屋ごとにいくつか別れているんだぜ。そしてここはエロい事専用の珍しいアイテムが競り落とされてる会場だ。なんでも数百年前の物とかあって、コレクターからしたら喉から手が出る程欲しい者らしいぜ?」
「なぁ、ダンさん。聞いてもいいかー?」
「ん、なんだ?」
「オークション中なのに、どこの会場でもこんなに皆セックスしまくってんのー?」
ゼントが質問したとき、少し離れた場所にいる男達がセックスしてる最中なのに、今競りに出されている商品を落としたのだ。
「100!」
「34番様、100、他にはいませんか?いないようでしたら34番様、落札とさせて頂きます」
「やったよ、絶対にあれは君に似合うと思うからさ……」
競り落とした男が嬉しそうにボソッと呟いているのが聞こえた。その間にアイテムは男のもとへと届けられ、その場で金を支払っているのが見える。
そしてその男は受け取ったアイテムを、すぐに相手へと使い始めたのだ。
正直俺の位置からではそのアイテムが何か見えないのだけど、周りの人たちは楽しそうにその光景を見ていた。
「皆んなに見られながら、コレをつけるなんて興奮して堪らないね?」
「ぁぁあぁあーーー!!」
相手の男も相当変態なのだろう、アイテムをつけられてすぐに果てているのが見えたのだ。
その光景に、俺とゼントは驚き固まってしまう。
そんな俺達を見たダンが、補足を入れてくれた。
「まあ、どこの会場行ってもこんな感じだからよ、これで驚いてたらやってられねぇぜ?本当にここはセックス狂いの集まりだからな。だから、もしパートナーがいない奴にあったら襲われる可能性があるから、絶対に一人で行動する事は避けるんだぞ?」
その言葉に俺はウルの服をギュッと握ってしまう。
それに気が付いたウルは、優しく俺に耳打ちした。
「デオの事、絶対に一人にしないから安心して?それと逸れないようにする為に、この紐は引っ張らないようにするから持っててもいいかな?」
「引っ張ってもいいから、離れないように側にいてくれ……」
「わかったよ、それにこの会場内なら少し喘いでも気にならないかな?」
周りから常に聞こえてくる誰かの喘ぎ声に、俺は少し興奮しているのだろうか?
既に中に入ってるディルドと、挟まれている乳首が先程から疼いている気がするのだ。
少し息づかいが荒くなった俺を見て、ウルが言った。
「デオもしかして、会場の空気に当てられちゃった?」
「そ、そんなこと……」
きっと俺の顔はもう赤くなっているはずで、そんな俺を見たウルはダンに提案していた。
「ダン、悪いけどここから少し別行動をしてもいいかな?」
「どうした、気になる事でも……ってそういうことか」
ダンは俺を見てすぐに事情を察してくれたようで、俺はさらに恥ずかしくなってしまう。
「ウルにはエントリーの時間は教えてあったよな?」
「もちろん、聞いているよ。だけどもしかしたら俺達は直接向かうかもしれないけど……大丈夫かい?」
「時間に間に合うならそれについては構わねぇよ。それと一ついい事教えてやるよ、そこをまっすぐ行って右の奥にいけば交流するために作られた部屋がある。そこではペットをお披露目するために、練り歩いてる奴らもいるからそこなら何してても不審に思われねぇと思うぜ?」
「へー、そんな部屋があるんだねぇ……その情報は助かるよ。それにこれだけ会場が広いとさ、俺とデオが出る会場にたまたまガリアが来てくれるかなんてわからないと思ったんだよね~」
確かにウルの言う通りなのはわかる。
だけど俺は何故か嫌な予感がしていた。
「もしかしてウルはアレに出る前に宣伝するつもりってことか?」
「その通りだよ~。俺がその交流部屋でデオをお披露目して周りの視線を釘付けにしてみせるからね」
「え……?俺はそこまで望んでないんだけど……」
「でも、そうしないとエントリーしている事を色んな人に知ってもらえないからね」
「成る程な、そこで噂になればもしかしたらガリアまでそれが届く可能性があるというわけだ。それなら二人には尚更張り切って貰わないといけねぇな」
俺はほんの少し疼く体をどうにかして欲しかっただけなのに……どうしてこうなってしまったのだろうか。
でもこれもガリアを誘き寄せる為だからと、俺は気合をいれなおす。
「わかった、俺も頑張るから……」
「じゃあ、ここからは別行動でいくからね」
「えー、俺も見たかったなぁー」
「ゼント、俺とお前には他にもやる事があるんだからシャキッとしろ。それにこれが終わったら、また二人のセックスを見せてもらえばいいだろ?」
「うーん、そうだよねー。前のはよかったし、見せて貰えるなら頑張ろうかなー」
そう言ってチラッと見てくるゼントに、ウルはニヤリと笑う。
「見るだけなら、いくらでもどうぞ?でもそれ以上は君を殺しちゃうからダメだよ?」
「相変わらずおっかないなー。でも俺は人に触る事ができないのでご安心をー」
「あの、俺は許可してないけど……?でもゼントのやる気がでるなら、今は諦めるか」
これもガリアを倒すためには仕方がない事なんだ。
だからこのオークションにいてくれよ、ガリア。
そう思いながら俺はウルと一緒に、交流場へと移動したのだった。
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