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二章までの閑話
73、手紙について(ウル視点)
しおりを挟むその後、俺達はキスをしたりお風呂でイチャイチャしたりと、幸せな時間を過ごした。
そしてお風呂から出てマッタリ時間を過ごしているときに、そういえばデオに渡して欲しいと言われていた手紙をイルから預かっていた事を思い出したのだ。
「デオ、そう言えばイルから手紙を預かってるよ?」
すでに寝巻きに着替えてベッドで横になっているデオは、ガバッと飛び起きて俺の側まで来た。
「そういう大事な物はもっと早く出してくれ!」
「いや、タイミングが……」
「俺の体よりもイルの方が最優先だ!」
「相変わらずブラコンはぶれないんだね……」
自分よりイルの方が大事だとは最初から言っていたけど、あんな目にあったんだから少しは自分の体の事も労ってあげて欲しいのにさ……。
「ブラコンじゃない。それより早く手紙を出せ」
「俺、デオと恋人になったのに扱いは弟以下なの?」
「こ、ここ、恋人!?」
「違うの~?両思いでエッチな事もいっぱいしてるのに……」
そう言って俺はデオの可愛い唇にキスを落とす。
それだけでビクっと、目を瞑るデオはかわい過ぎてすぐに押し倒してしまいたくなってしまう。
「……ち、違わないけど心臓に悪いからいきなりき、キスとかしないでくれ……」
「ふふ、これから沢山するんだから慣れてくれないと困るなぁ~」
「努力はする……それよりも、早く手紙を渡せ」
「全く、甘い雰囲気が台無しだよ~」
そう言いながらデオの腕を取ると、俺のベッドに押し倒した。
「っ!?……お、おい!!なんで押し倒す必要があるんだよ!」
「え?イルからの手紙は俺が読んであげるから、もっと恋人として構って欲しいな~って……?」
「な、何言ってるんだ!?」
「ほら、構ってくれないと手紙読んであげないよ~?」
「か、構うって……一体どうやって」
どうしたらいいかわからず手を彷徨わせるデオが、可愛くて俺は暫くその姿を堪能してしまった。
そしてデオは何も言わない俺を流石におかしいと気づいたのか、俺を見上げた。
「お、おい……ウル?実は俺をからかって遊んでただけじゃないよな……」
「え?そんな訳ないよ~、ほら俺の体触っててね。今から読んであげる」
「あ、ああ。よろしく頼む」
本当なら俺が読んだって言ったらイルに怒られるだろうけど、そんな事は気にせず俺はイルからの文章を読み始めた。
実は俺も何が書いてあるのか気になっていたところなのだ。
そしてその内容は以下のようになっていた。
『デオル兄上へ、
お元気ですか。
あれから俺は竜人になったことにより、国王に担ぎ上げられてしまい、大変な日々を送っています。
そして前国王暗殺についてはシル兄上がかなり無理をして、犯人探しを打ち切る見通しになりました。
デオル兄上がそれでもまだ帰ってきてくれないことはわかっています。
でも俺は兄上のおかげで助けられたのです。
その事を、忘れないで下さい。
なにより兄上と話したいことが本当に沢山あるのです。
だから俺は、いつまでもデオル兄上のお帰りをお待ちしています。
あなたの親愛なる弟イルレインより』
デオル兄上とは、デオのことだ。
どうやらデオは親しい人には、デオルと呼ばれていたようなのだ。
だから俺しかデオと呼んでなかった筈なのに、ガリアとかいう男までデオと呼んでいるのは正直言って気に食わない。
そして手紙を聞いていたデオも、何故か少し複雑そうな顔をしていた。
「イルを国王へか……兄弟の中で1番蔑まされていたのにな、それなのに今は持ち上げられてイルは複雑だろうに……。それと本当にイルは進化して竜人になったんだな」
「あー、そっか。デオも竜人を目指してたんだっけ?」
「そうなんだけど……イルが竜人になれたのなら、俺はどうすればいいんだろうか」
デオは父親への罪滅ぼしのため、竜人になる事を目標にしていると言っていた。
それがイルによってすでに成されてしまったのだ。
デオにとっては目標がなくなったのと同じ事なのかもしれない。
「俺は竜人にじゃなくてもいいから、デオには進化して欲しいよ?」
「俺だって進化できるならしたい。それは父上のためじゃなくて……今はウルのために」
「デオ……!」
そんな可愛い事言ってくるデオが好き過ぎて、俺はすぐさま唇を奪ってしまう。
「んんっ!!?……ぷはぁっ!い、いきなりキスしてくるなよ……」
「ふふ、ごめんごめん。だってデオが余りにも嬉しい事いってくれるからね~」
「……そんなこと言われたら怒れなくなる」
顔を背けながら真っ赤にしていってくるデオを見て、このまま襲っても許されるだろうかなんて考えてしまう。
チラリと見ると、寝間着から見える鎖骨が俺を誘っているように見える。
……うん、よし襲おう!
「ちょっと待て、ウル!!俺をそのまま襲おうとしただろう?」
もう一度キスしようとしたのに、今度はデオに止められてしまい俺は困惑する。
「っえ?今からOKって事じゃないの??」
「ち、違うから!?それにまだ俺の話は終わってない!」
「話?」
「俺が目指す進化についての事だ」
そういえばそんな話をしていたなと、俺はキス寸止めのまま話を聞く事にした。
「さあ、聞いてあげるから話してごらんよ?」
「え、顔が近すぎないか?本当にその体制のまま聞くのか……?」
「そうだよ。だけど喋ってるときに顔が近すぎて、デオの唇が俺のに触れても文句はいわないから、いっぱい触れていいからね?」
「何だよそれ!?」
「はい、不意打ち!」
そう言いながら、俺はデオの隙をついてチュっと唇を啄む。
「……!?」
「早く話してくれないと、いっぱいキスしちゃうよ~?」
「わ、わかったから!俺は今のまま竜人になる事を目指す事にするよ。イルが竜人になれたと言う事は、俺もなれる可能性があると言う事だから……それに竜人が何人いても困る訳じゃないしな」
「うん、いいんじゃないかな?」
そういいながら俺はまたデオにキスをする。
そして今度はその体勢を崩して、俺とデオの位置を入れ替えると俺の腹の上に乗せた。
「うわぁっ!お、おい!いきなり体勢を変えるなよ!」
「いや~上から見るデオも良いけど、下から見るのも好きなんだよね~」
「……そういいながら太腿をさするなよっ」
「くすぐったいんだ?それならお尻揉んじゃう!」
「お、お尻はっ!ぁっ!」
お尻をムニッと揉むだけで、デオは少し感じてしまうようになったらしい。
このまま続けたいけど、そろそろ悪戯はやめて真面目に話してあげよう。
「さっきの話の事だけど、進化について少し詳しそうな男を知ってるから今度連れてくるよ」
「そんな人いるのか……?」
そいつはダンの事なんだけど……正直言ってデオと会わせたくはない!
でもガリアの事で協力してもらうつもりなのだから、早めに顔合わせは必要だろう。
なにより奴を脅すための案件は既に俺の手中にあるから、絶対に受けてくれるはずだろうしね。
「ああ、一応イルとも知り合いだからすぐに打ち解けられるはずだよ?」
「イルの知り合い……それなら、大丈夫かな?」
イルの名前を出すだけで何でも信じてしまうデオが俺は心配だよ……!
「そう言うわけだから、明日から俺達がやる事は沢山あるよ?」
「それでも、俺はウルといるために頑張る……」
そう言って、自分から軽く触れるぐらいの口づけをしてくるデオに俺はとうとう耐えられなくなり、デオを襲ったのだった。
でもこのときの俺は、この幸せが本当にすぐ崩れるなんて思っていなかったのだ。
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