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一章 本命じゃないくせに嫉妬はやめて!
52、襲撃
しおりを挟むそして俺は夢を見た。
それは誰かとヤっている夢で……俺は後ろから責められていた。
もしかして1週間近くウルにしてもらってないから、俺の願望がとうとう叶って夢に出てきてくれたのかと思ってしまったのだ。
だから、ウルの名を沢山叫んだ。
ウルの事が好きだと叫んだ。
それなのにイった俺が振り向いた先には……。
ガリアの顔があった。
そして俺はガバっ!と目を覚まし、すぐに頭を抱えていた。
「は?……え?こんなの、嘘だろ……」
なんで、ガリアとしてる夢なんて……?
俺はウルが好きなはずなのに、昨日ガリアに絆されたのは事実だけど、でもそれだけで夢に出てくるなんて事ありえるのか?
もしかして俺がガリアを警戒していたから意識し過ぎたせいで、ウルと混同して夢に出てきた可能性はないだろうか。それに、所詮夢は夢なんだ……。
だから決して俺がガリアを好きになったわけじゃないと、言い訳をしながら思い出していた。
そういえば昨日寝る前、オデコに触れたガリアの手は熱かった。もしかしてあのとき何か魔法をかけられた……?いや、まさかあの優しいガリアがそんな事するわけないよな。
すでに俺はガリアの事を信用しても大丈夫だと思っていたのだ。だからガリアがまた疑われるような事をする意味がわからなかった。
それから俺は悩み続け、気がつけばお昼はとっくに過ぎていた。
だから宿屋の外が騒がしくなりはじめていた事に、俺は気づくのが遅れてしまったのだ。
「ここにいるのはわかっているのだ!!通してくれ!」
「お客様のお部屋に勝手に入られては困ります!」
聞こえてきたその怒鳴り声に俺は、なんだ?と思いながら窓から入り口を見る。
「……あれは!」
そこには国境を超えてまで俺を追ってきたのか、ブルーパール王国の騎士達がいた。
お忍びだから騎士服ではないが、見知った顔がチラホラいるのがわかる。
しかし、どうしてこのタイミングで……?
何故俺の場所がバレているのかわからなかったが、今はこの宿に迷惑をかけるわけにはいかない。
ならばやる事は一つだと、俺は急いで窓から飛び出していた。
「あ、いました!!窓からデオルライド殿下の姿を確認。すぐ追跡にまわります!」
もちろん、バレるのは想定内だ。
だけど前と違って少しはこの町の地図が頭に入っている。だから簡単に捕まるわけにはいかない。
俺は屋根の上を飛びながら町の外に出るため、最短距離で駆け抜けていた。
戦うつもりはないが、町で交戦するよりはましだろう。
そう思い町の外に出た俺は近くの森に逃げ込んだのだった。
そして今の俺は、葉の生い茂った木の上で息を潜めていた。
ここまでこれば、あいつらも簡単には俺を見つけられないだろう。しかし宿がバレているとなると、もうあそこには戻れない。
ウルには悪いけどすぐにこの町を出るか……?
そう考えていると、俺を探す声が聞こえてきた。
「デオルライド殿下はいたか!?」
「いいえ、まだです!」
「くっ、森に入って見失ってしまうとはな……」
木の上にいる俺からは、相手の顔がよく見えた。
そこにいたのはブルーパール王国の騎士団団長であるユストルだった。その姿はだいぶ白髪が目立ってきているのに、全く老いを感じない。
しかし老いてきてもその強さは俺とほぼ互角である。
なにより騎士団団長なのだから、国から出ていいような人物じゃないはずなのだ。
それを押し通してでもここに来たのは、あの日俺が父上を殺したところを唯一見た人物だからだろう。
そう考えていると、突然後ろから声をかけられて驚いてしまう。
「デオ、こんなところにいたのか」
「っ!?」
振り向くと、そこにはガリアが立っていた。
何故ここにガリアが?そんな事よりも、全く気配を感じなかった事に俺は警戒を強くしてしまう。
ただでさえ、ガリアを再び疑っているのだ。
だからこそ睨みつけているのに、俺とは違いガリアはただ飄々としているだけだった。
「そんな緊張してどうしたんだい?」
「……ガリア、何故お前がここにいる?」
「何故?ははっ、デオは面白い事を聞くんだね」
「この状態のどこが面白いんだ!?」
「そうだな。ブルーパール王国第3王子、デオルライド。君にいい事を教えよう。彼らを君の宿に案内したのは誰だと思う?」
何故俺のことを知っている?
それに宿に騎士を案内した人間がいるだって?
だけど宿を知っているのは……ウルか、この男しか……。
「まさか……!」
「そう、正解はこの俺さ。何故ならとっておきの楽しいショーをするには、お客様がいた方が盛り上がるから……。そのために彼らは適任だったのさ」
俺はガリアの言っている意味が全くわからない。
「まずはショーの準備をしないといけないからね。ここからは俺の可愛いお人形さんの番だ。……行っておいで、彼らを攻撃するんだ」
「は?何言っ……!?」
なっ!体が勝手に動いて……それに声もでない!?
そう思ったときには、俺の体が勝手に動き出して木から飛び降りていた。
突然自分の意思ではなく動き出した体に困惑しているのに、体は止まってくれない。
そしてその足は、一直線に騎士達のもとに飛び出していた。俺が死角から現れた事に騎士達は驚きの声をあげる。
「っな!デオルライド殿下!!」
「ここに殿下がっ!ぐぁっ!!!」
「!?」
騎士達が気がついたときには、すでに何人かが俺に弾き飛ばされていた。
声が出ない俺は、やめてくれ!と心で叫んでいた。
俺は誰も傷つけたくないのに……何でガリアはこんな事を!?
まさかこれも昨日の夜、あのときに仕組まれた魔法だとでもいうのか……。
「デオルライド殿下!!いきなりどうして!?いやはや、まさか貴方が仲間をいとも容易く斬りつけるとは……やはりあの日、あなたが陛下を殺したのは私の見間違いではなかったのですな!?」
「…………」
父上を殺したのは俺で間違いないが、今攻撃しているのは俺の意思ではない。
だけど口からは何も言うことはできなくて、ユストルに剣を向けてしまう。
「くっ、流石に何も言ってはくれませぬか。しかし陛下のため、私はやらねばならないのです!騎士団団長であるこの老ぼれユストルが、貴方のお相手をいたします!!」
俺は戦いたくないのに、体が全くいう事をきいてくれない。
そしてユストルと何度も剣を交えながら、俺は周りの騎士達もついでのように倒してしまった。
そして気がつけば、立っているのはユストルと俺しかいなかった。そんな俺達はもう限界の状態まで来ていた。
互いに体はボロボロで、確実に次の一撃で決着が着くだろう。ユストルもそれがわかっているのか、俺を見て口を開いた。
「デオルライド殿下、これで終わりにしましょう。陛下の無念、この私が果たして見せます!!」
そう言って最後の一撃をくらわせようと走り出しユストルの体が、簡単に弾け飛んだのが見えた。
「ぐぅがぁっ!!」
転がっていくユストルの体は木にぶつかり止まると、そのまま動かなくなってしまったのだ。
そして今、ユストルがいた場所にはガリアが立っていた。
その姿に俺はとてつもなく恐怖したのだった。
ー ー ー ー ー
次回の注意
ガリアのターンがはじまります。
モブレなのか寝取られなのか胸糞かわからないですけどそんな感じの微エロ→エロと4話続きますので苦手な方はご注意下さい。
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