上 下
53 / 163
一章 本命じゃないくせに嫉妬はやめて!

52、襲撃

しおりを挟む

そして俺は夢を見た。

それは誰かとヤっている夢で……俺は後ろから責められていた。
もしかして1週間近くウルにしてもらってないから、俺の願望がとうとう叶って夢に出てきてくれたのかと思ってしまったのだ。

だから、ウルの名を沢山叫んだ。
ウルの事が好きだと叫んだ。
それなのにイった俺が振り向いた先には……。

ガリアの顔があった。


そして俺はガバっ!と目を覚まし、すぐに頭を抱えていた。

「は?……え?こんなの、嘘だろ……」

なんで、ガリアとしてる夢なんて……?
俺はウルが好きなはずなのに、昨日ガリアに絆されたのは事実だけど、でもそれだけで夢に出てくるなんて事ありえるのか?
もしかして俺がガリアを警戒していたから意識し過ぎたせいで、ウルと混同して夢に出てきた可能性はないだろうか。それに、所詮夢は夢なんだ……。
だから決して俺がガリアを好きになったわけじゃないと、言い訳をしながら思い出していた。

そういえば昨日寝る前、オデコに触れたガリアの手は熱かった。もしかしてあのとき何か魔法をかけられた……?いや、まさかあの優しいガリアがそんな事するわけないよな。
すでに俺はガリアの事を信用しても大丈夫だと思っていたのだ。だからガリアがまた疑われるような事をする意味がわからなかった。


それから俺は悩み続け、気がつけばお昼はとっくに過ぎていた。
だから宿屋の外が騒がしくなりはじめていた事に、俺は気づくのが遅れてしまったのだ。

「ここにいるのはわかっているのだ!!通してくれ!」
「お客様のお部屋に勝手に入られては困ります!」

聞こえてきたその怒鳴り声に俺は、なんだ?と思いながら窓から入り口を見る。

「……あれは!」

そこには国境を超えてまで俺を追ってきたのか、ブルーパール王国の騎士達がいた。
お忍びだから騎士服ではないが、見知った顔がチラホラいるのがわかる。
しかし、どうしてこのタイミングで……?
何故俺の場所がバレているのかわからなかったが、今はこの宿に迷惑をかけるわけにはいかない。
ならばやる事は一つだと、俺は急いで窓から飛び出していた。

「あ、いました!!窓からデオルライド殿下の姿を確認。すぐ追跡にまわります!」

もちろん、バレるのは想定内だ。
だけど前と違って少しはこの町の地図が頭に入っている。だから簡単に捕まるわけにはいかない。
俺は屋根の上を飛びながら町の外に出るため、最短距離で駆け抜けていた。
戦うつもりはないが、町で交戦するよりはましだろう。
そう思い町の外に出た俺は近くの森に逃げ込んだのだった。


そして今の俺は、葉の生い茂った木の上で息を潜めていた。
ここまでこれば、あいつらも簡単には俺を見つけられないだろう。しかし宿がバレているとなると、もうあそこには戻れない。
ウルには悪いけどすぐにこの町を出るか……?
そう考えていると、俺を探す声が聞こえてきた。

「デオルライド殿下はいたか!?」
「いいえ、まだです!」
「くっ、森に入って見失ってしまうとはな……」

木の上にいる俺からは、相手の顔がよく見えた。
そこにいたのはブルーパール王国の騎士団団長であるユストルだった。その姿はだいぶ白髪が目立ってきているのに、全く老いを感じない。
しかし老いてきてもその強さは俺とほぼ互角である。

なにより騎士団団長なのだから、国から出ていいような人物じゃないはずなのだ。
それを押し通してでもここに来たのは、あの日俺が父上を殺したところを唯一見た人物だからだろう。
そう考えていると、突然後ろから声をかけられて驚いてしまう。

「デオ、こんなところにいたのか」
「っ!?」

振り向くと、そこにはガリアが立っていた。
何故ここにガリアが?そんな事よりも、全く気配を感じなかった事に俺は警戒を強くしてしまう。
ただでさえ、ガリアを再び疑っているのだ。
だからこそ睨みつけているのに、俺とは違いガリアはただ飄々としているだけだった。

「そんな緊張してどうしたんだい?」
「……ガリア、何故お前がここにいる?」
「何故?ははっ、デオは面白い事を聞くんだね」
「この状態のどこが面白いんだ!?」
「そうだな。ブルーパール王国第3王子、デオルライド。君にいい事を教えよう。彼らを君の宿に案内したのは誰だと思う?」

何故俺のことを知っている?
それに宿に騎士を案内した人間がいるだって?
だけど宿を知っているのは……ウルか、この男しか……。

「まさか……!」
「そう、正解はこの俺さ。何故ならとっておきの楽しいショーをするには、お客様がいた方が盛り上がるから……。そのために彼らは適任だったのさ」

俺はガリアの言っている意味が全くわからない。

「まずはショーの準備をしないといけないからね。ここからは俺の可愛いお人形さんの番だ。……行っておいで、彼らを攻撃するんだ」
「は?何言っ……!?」

なっ!体が勝手に動いて……それに声もでない!?
そう思ったときには、俺の体が勝手に動き出して木から飛び降りていた。
突然自分の意思ではなく動き出した体に困惑しているのに、体は止まってくれない。 
そしてその足は、一直線に騎士達のもとに飛び出していた。俺が死角から現れた事に騎士達は驚きの声をあげる。

「っな!デオルライド殿下!!」
「ここに殿下がっ!ぐぁっ!!!」
「!?」

騎士達が気がついたときには、すでに何人かが俺に弾き飛ばされていた。
声が出ない俺は、やめてくれ!と心で叫んでいた。
俺は誰も傷つけたくないのに……何でガリアはこんな事を!?
まさかこれも昨日の夜、あのときに仕組まれた魔法だとでもいうのか……。

「デオルライド殿下!!いきなりどうして!?いやはや、まさか貴方が仲間をいとも容易く斬りつけるとは……やはりあの日、あなたが陛下を殺したのは私の見間違いではなかったのですな!?」
「…………」

父上を殺したのは俺で間違いないが、今攻撃しているのは俺の意思ではない。
だけど口からは何も言うことはできなくて、ユストルに剣を向けてしまう。

「くっ、流石に何も言ってはくれませぬか。しかし陛下のため、私はやらねばならないのです!騎士団団長であるこの老ぼれユストルが、貴方のお相手をいたします!!」

俺は戦いたくないのに、体が全くいう事をきいてくれない。
そしてユストルと何度も剣を交えながら、俺は周りの騎士達もついでのように倒してしまった。
そして気がつけば、立っているのはユストルと俺しかいなかった。そんな俺達はもう限界の状態まで来ていた。
互いに体はボロボロで、確実に次の一撃で決着が着くだろう。ユストルもそれがわかっているのか、俺を見て口を開いた。

「デオルライド殿下、これで終わりにしましょう。陛下の無念、この私が果たして見せます!!」

そう言って最後の一撃をくらわせようと走り出しユストルの体が、簡単に弾け飛んだのが見えた。

「ぐぅがぁっ!!」

転がっていくユストルの体は木にぶつかり止まると、そのまま動かなくなってしまったのだ。
そして今、ユストルがいた場所にはガリアが立っていた。
その姿に俺はとてつもなく恐怖したのだった。








ー  ー  ー  ー  ー

次回の注意
ガリアのターンがはじまります。
モブレなのか寝取られなのか胸糞かわからないですけどそんな感じの微エロ→エロと4話続きますので苦手な方はご注意下さい。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...