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一章 本命じゃないくせに嫉妬はやめて!

46、憤慨(ウル視点)

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宿を飛び出して行ってからのウル視点です!
ついにウルの想い人とされるイルが出てくるため、デオ以外を少し愛でる描写があるので注意です!
3話ほどイルのハイテンションにお付き合い下さい。

ー  ー  ー  ー  ー















俺は怒っていた。
まさか、デオがあそこまで俺に興味が無かったなんて思っていなかった。
最近はいい感じだと思ったんだどなぁ……。

だから俺は怒りの余り、イルと誓約できたらおもちゃにでも何でもなると言ったデオの言葉を実行するため、何としてもイルと誓約してやるから!
と、意気込んで飛び出して来てしまったのだ。

もう、イルと誓約して帰ったらデオを無茶苦茶にしてすぐに誓約してやるんだから、待ってなよデオ!
憤慨している今の俺には、デオが進化しているとかしていないよりも今すぐ誓約して、離れられない存在になりたくて仕方がなかったのだ。


デオを置いて宿屋から出た俺は、すぐにブルーパール王国の国境周辺の町まで転移していた。
俺が転移できる最大の飛距離がこの程度だ。
まだまだ飛距離を伸ばさないといけないなと課題を感じてしまう。
何よりデオのところへ一度に飛べないなんて、何かあってもすぐに帰れないじゃないか……。

なにより最大転移をしてしまうと、魔力が足りなくなってしまうため、次に転移できるまで半日はかかる。
焦燥感に焦った俺はなるべく早く用事を終わらせようと、その町から歩いて次の町へ向かう。
夜に街の外を出歩くことは危険なのだけど、悪魔な俺には関係ない。

そして俺は1週間、転移と徒歩で向かい続けてようやく王都にたどり着いたのだった。
徒歩でここまで来た俺は朝日を浴びながら、王都の町並みを見ていた。
久しぶりに来たけど、ここはドラゴンの襲撃があってもう半年程経っていると言うのに、今でもそのときの修復作業が行われているようだった。

「あら~!ウルじゃない!?」

明るい声に呼び止められて、俺は振り向く。
そこには明るい髪色をなびかせ、胸元を大きく開いた服でこちらに手を振る女性がいた。

「久しぶりだねぇ、ジュディー。元気にしてた?」
「やだぁ!それはこっちのセリフよ~!突然この国を出るなんて言うから驚いちゃったわぁ~」

ジュディーは見た目通り、花街に住む女性だ。
朝方帰りということは、仕事が終わったところなのだろう。

「ねぇ、今日は私のところに来てくれない?例のアレ、ようやく手に入ったのよ~!」

そう言うジュディーも、進化した人間だ。
進化していると、相手が進化種だとすぐにわかるからなのか、遭遇率は結構高い。
でも俺が会えたのは全員パートナー持ちだったけどね……。

そしてジュディーが言うアレというのは、魔力増幅バーストアイテムのことだ。
一度使ってみたくて、裏ルートの仕入れをしているジュディーに、入荷したら教えてほしいと伝えていたのだ。
もしかするとそれがあれば、デオのところまで一度で転移できるかもしれない。

「それなら、行かないわけにはいかないよねぇ~。必ず後で取りに行くから、待っててくれるかな?」
「頼むわよ~、うちの子達もウルに会えるの楽しみにしてるんだからぁ!」
「それは楽しみだね~」

ジュディーと別れた俺は、王宮へと向かう。
ただそのままだと、俺は入れないのでイルのもとへと転移しないといけない。
うーん、この時間のイルは誰かと寝ている可能性がある気がするんだよねぇ~。
まあ、いいかと俺はイルの寝室へと転移する。


着いた先は少し薄暗い部屋だった。
そして俺の耳に、突然叫び声が聞こえてきた。

「おい、ダン!!朝はやめろっていってるだろうが!!!」
「わりぃ、わりぃ……寝ぼけてただけだ……って、あれ?ウルじゃねぇか?」
「は?ウル!!?」

振り返ったその人は金色に輝く髪を振り乱し、金色の瞳でこちらを見つめた。
彼はイルレイン、デオの弟であり俺の好きな相手。
彼を見るとデオを見ているときの興奮とは違い、高揚感が溢れてしまう。

「やあ、イル。相変わらず可愛いね!」
「ぎゃぁーー!!う、ウル!!?い、いつから?」
「今来たところだけど、2人で何かいやらしいことでもしてたのかな?」
「ししし、してない!してないから!!おい、ダン!とりあえず俺はウルと話しがあるから、部屋から出てってくれ!」

動揺するその首には、どう見ても沢山のキスマークがついていて……。
おかしいなぁ、イルが他の人とやってるとわかっても全然嫉妬しない。

「あー、わかった。朝飯食ってくるわ~。おいウル、イルに変なことするんじゃねぇぞ~?」
「ははは、ダンはおかしなこと言うんだねぇ~!イルに変なことしたら君に殺されちゃうよ?」

ここにいる、黒髪のダンと言う男は俺よりも強い。
竜と融合した人間という変わった経歴の持ち主だが、その強さのせいでイルにちょっかいを出しては邪魔をされ続けていたのだ。
そして今は既にイルとパートナーになっているみたいで、正直俺からしたら疎ましい存在だ。

「あー、変な風に手を出したら……確かにそうかもしれねぇなぁ~」
「いや、ダンもそこは半殺しぐらいって言っとけよ!」
「……君たち俺の扱い酷くない!?」
「そんなことねぇよ。じゃあまた昼過ぎには戻ってくる」

そう言うとダンは部屋を出て行った。
そして俺はイルと2人だけになった。
イルと2人だけで嬉しいのだけど、今すぐに襲いたいとか滅茶苦茶にしたいなんて全く思わない。
沢山愛でてみたり、からかいたくはなるけど……一体2人の何が違うんだろうか?

その違いがわかれば、俺の悩みは解決する。
そんな気がしたのだ。
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