俺の事嫌ってたよね?元メンバーよ、何で唇を奪うのさ!?〜嵌められたアイドルは時をやり直しマネージャーとして溺愛される〜

ゆきぶた

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光と俺

42、前の約束

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 突然の告白に俺の頭はパニックになっていた。
 ひかるが俺の事を好き? じゃあ光のスキンシップが激しかったのって───。
 俺は遊園地で光にされた事を思い出してしまい、顔が赤くなる。
 しかも俺に告白した光も、どうやら勢い余って言ってしまったのか恥ずかしそうに俯いていた。

 ……どうしよう。俺だって凄く恥ずかしいし、気まずいんだけど? それに何でゆうはじめは何も言ってこないんだよ~~!?
 二人がどんな顔をしているのか怖くて見れない俺は、助けを求めるようによるをチラリと見てしまう。
 どうやら夜は何か考え事をしているのか、ぼんやりと俺達を見ていた。だけどすぐに困っている俺の視線に気がついてくれたのか、軽く頷くと助け舟を出してくれたのだ。

「……あの、話の最中にごめん。もうすぐ俺達の出番だから……早く着替えて戻らないと、間に合わないかも……」

 余りにも自然な切り替えに、俺は夜に感謝の気持ちを込めて笑顔で頷いてしまう。
 しかも他の3人は夜の言葉にハッと時計を確認すると、何故か先程の話なんてなかったかかのように普通に話はじめたのだ。

「……確かに夜の言う通りだ。今は時間がない」
「そうだぜ、俺達にはまだやる事があるんだからな」

 2人の切り替えの速さに、先程の話を深く追及されなくてよかったと俺は少しホッとしてしまう。

「そ、そういえば次の相手って……FH Beastだったよね?」

 どうやら光だけは先程の事を引き攣っているのか、少し声が裏返っていた。
 それでも光がFH Beastの名を呼ぶ声は怒りのせいなのかとても低くて、本当に光から出た声なのかと俺は驚いていた。

「よっし、ようやく次はFHか! なら丁度いいじゃねぇか。青山以外に恨みはないが、奴らを完膚なきまでに叩きのめしてやろうぜ」
「完全にぶっ潰す」
「僕もあのニヤケ面を早くぶち壊したいな~」
「皆、凄いヤル気だね……お、俺も頑張るよ」

 なんだか怖い事を言いながらも一致団結した4人は素早く着替えると、怒りのオーラを纏わせたまま収録現場へと戻っていった。



 その後、C*Fの活躍は凄まじいものだった。
 負けていた時は奇跡の逆転劇を見せ、勝っている時は番組史上最高得点を出してしまうという神展開を続けたのだ。
 その結果3競技中、全ての競技でFHを完封し圧勝した。
 しかしFHのメンバーは負けたくせに特に悔しがる事もなく、ただ楽しそうにニヤニヤしているだけだったのだ。
 そのせいでせっかく皆が頑張って勝ったのにと、俺は何だかモヤモヤしてしまう。それでも勝ちは勝ちだしと、俺は画面の中でヘラヘラと笑う龍二の顔を睨みつけたのだった。

 こうしてC*Fは次の試合へと駒を進めた。
 しかしどうやら今日はここまでなのか、後は別日のようだった。
 俺は収録が終わってすぐに楽屋へと戻って来た4人に、思いつく限りの賞賛を送っていた。それなのに夜以外は、喜ぶ事もなく何故かずっと微妙な顔をしていたのだ。
 それはFHが負けたのに悔しがらなかったせいなのか、それとも光の告白を思い出したからなのか俺にはわからない。
 だけどその事について何も言われたくなかった俺は「疲れていると思うし、すぐに帰ろう」と、メンバーに提案したのだった。



 どうにかメンバーを車に乗せた俺は帰る道中、何度も大きなため息をついていた。
 はぁ……車内の空気が重いのはどうにかならないものか?
 しかも心のオアシスである夜は、用事があるから後で帰るらしくこの車には乗っていない。つまり今の俺は、何故か俺の事が好きだと言う3人に見つめられながら運転しているわけだ。
 正直なところ、こんなに見つめられ続けたら運転に集中出来ないって……頼むから、早くここから解放してくれ~~!

 そう心の中で嘆きながらもどうにか家に着いた俺は、事故る事なく帰ってこれてよかったと本当にホッとしていた。
 しかし先程から3人の話しかけたいオーラを感じとっていた俺は、そこから逃げ出したくて足早に玄関を去る事にしたのだった。

 そして自室の扉の前に着いた俺は、部屋に入る為にドアノブに手をかけようとした。
 しかしその手は、突然後ろから現れた人物に掴まれてしまったのだ。
 驚いた俺はつい後ろを振り返ってしまう。

「直ちゃん、ちょっと待って」

 そこには、急いで俺を追ってきたのか少し息を切らす光がいた。

「……ひ、光?」

 驚きすぎて声が裏返っちゃったよ……。
 だってあんな事言われたばかりだし、光を意識するなという方がムリな話だろう。
 だから今の俺はとにかく逃げたくて早く自室に入りたかった。それなのに光は俺の手をドアノブから引き離すと、少し顔を赤らめながら言ったのだ。

「確認したいことがあって、直ちゃんを追いかけてきちゃったよ」
「確認って、なんの……まさか告白の返事?」
「違うよ! そもそもあれはちゃんとした告白じゃないし、それに答えは全然急いでないよ。だからその話じゃなくて……えっと僕が聞きたかったのは、直ちゃんがここに来た日にした約束の事なんだけどさ……直ちゃんは、覚えてるかな?」

 俺がこの寮に来た日に光とした約束?
 そういえばそんな話をしたのを覚えてる。確かその内容って……。
 俺は嫌な予感に、その約束では無い事を祈りながら光に確認する。

「えーっと、それってもしかして……一緒にお風呂に入るって約束のことかな?」
「うん、それだよ。嬉しいな~、直ちゃんも約束の事をちゃんと覚えててくれたんだね!」
「もちろん、忘れてないけど……そ、それが今どうしたんだ?」

 光はモジモジしながら恥ずかしそうにすると、俺が今一番聞きたくなかった事を言い出したのだ。

「えーっとね。それでなんだけど……その約束通り今から一緒にお風呂入らない?」
「い、今から……!?」

 突然すぎる展開に、光が一体何を考えているかわからなくて俺は混乱してしまったのだ。
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