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光と俺
40、誘い (後半)
しおりを挟む俺が龍二のマネージャー?
全く理解できない俺を置いて、龍二は話を進めていく。
「実はさ、最近新しいマネージャーが入ってきたんだけど、そいつがキーキー煩くて鬱陶しくてさ~」
「いやちょっと待ってくれ、俺の頭を整理させて欲しいんだけど……もしかしてお前らのグループはマネージャーがよく変わるのか?」
「うん、大正解! 何故かどのマネージャーも皆、俺達の私生活を見るとすぐに逃げ出しちゃうんだよねぇ~」
……それはつまり、FH Beastも問題児だらけという事なのか? いやいや、俺がよそのグループを気にしてどうするんだよ。今は龍二から逃げる事だけを考えないといけないのに……!
そう思って思考を巡らせた俺は、先程の話におかしい所があるのに気がついたのだ。
「いや待った。さっきの話だと、今のマネージャーはまだ辞めてないって事なんだよな?」
「うん、残念な事にその通りなんだよね~」
「だったらその人がいる以上、俺はお前のマネージャーになれない事ぐらいわかると思うんだけど?」
「ああ、そいう事か~。俺には直の言いたいことが全てわかったよ。直は今のマネージャーがいるから、俺のマネージャーになれないんじゃないかって不安なんだろ?」
「いや、全然違うけど……」
勢いよく首を振って否定しているのに、龍二は全く納得してくれそうにない。
「ははっ、照れなくてもいいのに~。それに直が不安になるのもわかるよ。だってさ、今のマネージャーがまだ逃げ出してないのも事実だからね。でもその事ならすぐに解決するから安心してよ、邪魔なマネージャーはいつものように追い出せばいいんだからさ」
「追い出すって、なんで……!?」
「別におかしな話じゃないだろ。直を俺のマネージャーにする為には、これは仕方がない犠牲なんだから……。でもさ、こうなったのは元はといえば直が悪いんだよ?」
「は……? 俺が、悪いのか?」
「ああ、そうさ。だって直は、芸能界、いや俺の所にはもう戻って来ないと言ったじゃないか!! 直は子供の頃からずっと俺の物だった筈なのにさ、こんなのはおかしいだろ!?」
突然声を荒げた龍二に俺はとても驚いてしまう。だって龍二の話は意味不明だし、あまりにも俺に対する認識が間違っていたのだ。
だから本当ならここで否定の言葉一つでも言いたかったのに、俺は怒っている龍二が怖くて何も言い返せなくなっていた。
しかし龍二はそんな俺を見てハッと我に帰ったのか、突然冷静になったと思ったら何故か今度は俺をウットリ見つめてきたのだ。
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そう言われても俺は龍二の話なんてもう何も聞きたくなかった。それなのに龍二は何も言えない俺を見て肯定と捉えたのか、勝手に続きを話し始めたのだ。
「……俺はさ、直が俺の所に戻って来ない事が信じられなくて、本当はずっと許せなかったんだ。だけど俺って直に優しくて甘い男だろ? だから直の為に一つの妥協案を出してあげる事にしたんだ。つまり優しい俺は直が俺のマネージャーになるのなら、芸能界に復帰しなかった事も許してあげようと思ったわけさ。だけど直がもしこの話を断った場合、俺は直に何をするかわからない……。だから直も答えには充分気をつけてほしいんだ。もちろん俺は直が同意してくれるって信じてるよ?」
その話を聞いて俺は固まった。
だってコイツは妥協案とかいいながら、俺が芸能界に戻るか、龍二のマネージャーになるか、どちらかを選ばなければ今ここで何をするかわからないぞ と、俺を脅しているのだ。
もちろん俺はどの選択肢も選ぶつもりなんかない。それにもう少し耐えればきっと助けが来る筈なんだと、俺は僅かでも時間を稼ぐ事を優先しようとした。
しかし、今の龍二がそんな時間をくれる訳がなかったのだ。
「悪いけどあまり時間がないからさ~、早く答えてくれないと同意してくれたって事にするけど……それでもいいよね?」
つり上がった目をニヤニヤさせている龍二は、俺の答えを待つつもりはないのか、ゆっくりと近づいてくる。
俺はその姿が怖くてさらに後ろに下がろうとした。しかし部屋の隅まで逃げた俺の後ろには、もう壁しかない。追い込まれた俺は同意だけは絶対にしたくないと、自分の気持ちを龍二に向けて叫んでいた。
「俺はC*Fのメンバーが好きだ! だから絶対にC*Fのマネージャーはやめないからな!!」
「………………………」
目をつぶって言い切った俺は龍二からの返事がない事にハッとして、やらかした事にようやく気がついたのだ。
どうしよう、つい勢いで拒否しちゃったよ……。
そう思って恐る恐る目を開いた俺は、龍二の顔を見てすぐに青ざめた。だって龍二は怒っているのか笑っているのかわからない、寒気のする笑顔を俺に向けていたのだ。
「……ふーん、直は俺にそんな事を言うんだ? つまりそれは、直をぐちゃぐちゃにした後に無理矢理連れて行ってもいいって事だよね?」
笑顔でゆっくりと迫って来る龍二は俺の目前で止まると、突然両手を広げ動けない俺をギュッと抱きしめたのだ。
そして俺の匂いを嗅ぐように息を吸い込む龍二が凄く気持ち悪くて、俺はもう耐えられずに震え始めていた。
「うんうん、やっぱり直は俺にピッタリなサイズだ。これは俺達が運命で結ばれてるからだよね?」
「…………っ?」
一体何を言ってんだコイツ……そんなんで運命の相手が決まるなら、何処もかしこも運命の相手ばっかになるけど?
そう文句の一つでも言ってやりたいのに、コイツに触られた事がトラウマな俺は声を出すことすら出来ない。
しかも龍二は何も言わない俺を見て同意だと判断したのか、何故か俺のお尻を触りだしたのだ。
「…………っ……!」
サワっと触れる感触がゾワゾワして気持ち悪い。
その事が怖くて動けなくてガタガタ体を震わせているだけなのに、何を勘違いしたのか龍二はおかしな事を言い始めたのだ。
「ああ、直……俺に触れられる事が嬉しくてビクビクしてるんだね!」
───違う、嫌悪感でゾクゾクしてるんだよ!
「嬉しくて興奮してきちゃったよ。早く直を堪能したいなぁ……」
声を出したいのに恐怖で何も言えない。
そして龍二が俺の服を脱がそうと、手を伸ばしたのが見えた。
それなのに俺は、心の中で叫ぶしかできない。
……くそ、俺が一体何したっていうんだよ。確かに約束を破ってお手洗いに行った俺が悪かったかもしれないけど、このまま龍二にいいようにされるのは嫌だ!
───もう誰でもいいから早く助けてくれ!!
俺は祈った。そろそろ携帯に気づいた誰かがここに来てくれるはずだと……。
そう思った瞬間、俺の思惑通り扉が勢いよくバンッと開いたのだ。
きっとメンバーの誰かが助けに来てくれたんだ!
そう思って扉の方を見て、俺は固まった。
「ちょっと待てぇーーー! 俺の大親友に手を出させはしないからっ!!」
「……え?」
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