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俺と夜

45、誰が1番?(前半)

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 どうしてこうなったんだ……?

 確かに俺は、誰かに嫌われる人生なんてもう嫌だと言った。
 それにせっかくやり直すのならこの世界では失敗しないようにと、頑張ってメンバーに好かれるように努力もした。

 ……だけと俺は、別に恋愛対象として好かれたかったわけじゃない。
 ただ少しだけ仲良くなれるだけでよかったんだ。
 寧ろこんなにも好意を向けられたら、どう返したらいいかわからないし……何より俺は、その気持ちを素直に受け取れなかった。
 どうして俺は、彼らを信じられないのかな……?

 ───いや、そんなの決まってる。
 相手がアイツらというのが大問題なんだ。

 だってやり直す前の世界では、あの3人は俺の事を凄く嫌っていた。それなのに出会いや態度が少し変わっただけで、俺を好きだと言ってくる事があり得るのだろうか……?
 実はベランダから落ちた俺はまだ生きていて、これは生死を彷徨いながら見てる夢じゃないよな?
 そう思って何度も頬をつねってみたけど、ただ痛いだけで夢から覚める事は全くなかった。

 だから、これは夢じゃない───。

 つまり今、目の前で何故か俺に「あーん」しようとしているゆうはじめひかるの3人が争っているのも、夢じゃないないわけで……。

「ちょっと、邪魔しないでよ! 落ち込んでるなおちゃんを看病するのはこの僕だから!」
「何言ってんだ、ここはリーダーであるこの俺がしっかりと食わせてやらねぇとだろ?」
「二人とも黙ってろ。直を看病するのは家族である俺の仕事だ」

 本当、何でこんな事になってしまったんだろう?
 そう思いながら俺はため息をついていた。

 どうして3人がこんな不毛な争いをしているのかといえば、俺が朝から熱を出てしまったのが原因だった。
 これは昨日龍二りゅうじと会った影響なのか、はたまたこの3人の事を考えすぎたせいなのか、長風呂し過ぎてそのまま寝落ちした俺が冷たくなったお風呂で目覚めたせいなのか……。いや、考えなくても絶対に原因はお風呂なのだけど、そんな事この3人に言えるわけがない。
 でも1日中しっかり寝ていたおかげでもう熱も下がってきたし、あとはしっかり夜ごはんを食べるだけだと思ったのに……こんなに周りがうるさくては邪魔で仕方がない。

「あのさ、俺のこと心配してくれてるのは嬉しいけど、熱も下がったし一人で食べれるから。だからそうやって争われても俺はそんな事しないからな」
「「「え……?」」」

 なんで3人とも「嘘だろ?」みたいな顔をして、ショックを受けているのだろうか?
 しかし固まってしまった3人を見て、ご飯を食べるなら今だと思った俺は、すぐにモグモグと口を動かす事にしたのだった。


 そして俺がどうにか一人でご飯を食べ終えた頃、ようやくショックから立ち直ったのか、ひかるが俺に何故か頭を差し出したのだ。

「……光?」
「ねぇ、直ちゃん。僕、直ちゃんが食べるのじっとまってたよ。僕って、偉いよね?」
「え……偉い? うん、偉いかな……」

 どうやら差し出された頭は、撫でて欲しいという事なのだと思う。……まあ、別に撫でるだけならいいかと思ってしまった俺は、その柔らかい髪をサワサワと触る。
 そして撫でられた事に満足したのか光は嬉しそうに顔をあげると、何故か優と元に目配せをしてから改めて俺を見たのだ。

「それじゃあ、いい子にしてた僕の為に少しだけ質問に答えてくれる?」
「えぇ? まあ、答えられる事しか喋らなくてもいいなら……」

 なんだかイヤな予感がした俺は何の質問がくるのか怖くなってしまい、喋る前に何か飲んでおこうとお茶を口に含んでいた。
 そして光は口を開くと、恐ろしい事を言い出したのだ。

「ねぇ、直ちゃん……この3人の中なら、誰が1番好き?」
「……んぐっ!!」

 あまりにも驚いた俺は、お茶を吹き出しそうになるのを堪えていっきに飲み込んだ。
 そのせいで、俺は少しだけむせてしまう。

「ごほっ、ごほっ! な、なに突然?」
「僕達さ、3人とも直ちゃんが好きだって事を正直に話し合ったんだよ、もちろん3人とも譲る気はないって事をね……。でもそれなら先に、直ちゃんの気持ちを知っておこうって話になったんだ。つまり、直ちゃんの中で1番気になってる相手が知りたいんだけど~?」

 先程から優と元が、光の言動に文句を言わないなとは思っていたが……まさか光が喋りだすのを待っていたとは思わなかった。

「聞かなくてもわかる。直は俺の事が1番だろ?」
「おい優、おまえの脳内妄想で話すのはいい加減やめろよ」
「……それはお前の事だろう? 妄想筋肉男め」
「はぁ!? ふっざけんなよ!!」

 このままだとまた言い争いがはじまってしまいそうだと思った俺は、早く話を終わらせる為に口を開いていた。

「ちょっと、二人とも落ち着けって! それに俺の気持ちも言うからさ、ちゃんと聞いて欲しいんだけど?」
「「………………」」

 その言葉に二人はピタリと止まったのだ。
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