上 下
33 / 57
光と俺

33、牽制し合う二人

しおりを挟む

 朝起きて扉を開けると、何故かはじめが目の前に立っていた。

「……一緒に朝食でもどうかなと思ってさ」

 昨日告白されたばかりで俺は動揺しているのに、こんな積極的にこられても困る。
 それにまだ朝食は出来てもいないのにその誘い文句には流石に無理があるよなと、そう思いながら俺は元に言葉を返していた。

「えっと、朝食は今から作るんだけど……それに今日の当番は元じゃないだろ?」
「……まあ、その通りだな。本音を言うと、目が覚めてすぐになおの可愛い顔が見たかったんだよ」

 何言ってるんだコイツ……。
 そう思いながらも、俺を真っ直ぐに見つめてくる元の視線に耐えられなくて、恥ずかしくて顔を逸らしてしまう。

「お、俺は……可愛いんじゃない。誰に何と言われようが美しくてかっこいいんだよ!」
「はいはい、直は今日も美人だな」
「……なんか言い方が嫌味に聞こえるんだけど?」
「気のせいだって」

 そんな話をしながらキッチンの扉を開くと、今度は目の前にゆうが立っていた。
 そういえば、今日の当番は優だったのをすっかり忘れてた……。
 優は俺が元と現れた事にあまりにも驚いたのか、目を丸くしながら俺達を交互に見ていた。

「直……なんで元と一緒に?」
「えーっと、それは……」
「俺と直はここへ来る途中に偶然会っただけだぜ。それに優だって、俺の朝が早い事は知ってるだろ? だからお前みたいにこんな所で待ち構えてたわけじゃねぇんだよ」
「……いや、俺は別に待ち構えてなんかいない。今日は俺と直が朝食の当番だから、ここにいるのは当たり前なだけで……寧ろ元がここにいる方が変だろ」

 確かにそう言われたら凄く変だし、どちらかといえば待ち構えてたのは元の方だ。つまり元が優に嘘をついてる事になる。
 だけど今の言い方で、どうして元が俺を迎えに来たのかわかってしまった……。
 きっと元は、俺と優を二人きりにしたくなかったんだ。

 それは優を嫌がらせしたいとかそういう気持ちじゃなくて、本当な俺が好きだから───?

 そう考えて、俺は顔が赤くなってしまう。
 でもこんな姿を二人に見られたら怪しまれそうだと思った俺は、なんとか誤魔化そうと牽制しあう二人を無視して朝食の準備をする事にした。
 そして二人は俺が動き出したのを見ると、すぐに手伝い始めたのだ。
 そこまではよかったのに、今度は俺を手伝う元の姿に優が文句を言い出した。

「元、今日は俺の当番なんだからお前はリビングで待ってればいいだろ」
「そうだなぁ、ここで待ちながら直をじっくり見るのも有りだな……だが優は本当にそれでいいのか?」
「……どういう意味だよ?」
「俺がいれば朝食を早く作り終えられる。そうすれば、直とイチャイチャ出来る時間が増えるぜ?」
「直とイチャイチャ……」

 何故かその言葉を最後に、二人は一心不乱に料理を作り始めたのだ。
 正直な話、イチャイチャってなんだよと俺は思ってしまったのだけど、ここで余計な事を言えばさらに面倒そうだと思った俺は、無心で料理を作る事にした。
 そして二人が頑張ってくれたおかげで、本当に早く朝食を作ることができてしまったのだ。
 元はダイニングに並べ終えた朝食に頷くと、すぐに俺を見てニヤリと笑った。

「よし、朝食もできたし……よるひかるが起きてくるまで、さっそくイチャイチャするか」

 そう言いながら俺の肩に手を置こうとした元の手を、当たり前のように優が払い落としていた。
 そして優はキッと元を睨みつけがら言う。

「おい、元。直に触ろうとするな」
「またそれかよ……優は本当にお子ちゃまだな」
「だれがお子ちゃまだ!」
「いい加減、お前の子供みたいな独占欲が鬱陶しくなってきたんだぜ」
「なんで元にそんな事を言われないといけないんだ。お前は別に直の事なんとも思ってないだろ!」
「…………」

 優は元が俺に告白した事を知らない。
 それなのに更に畳み掛けるように、優は元へと言ったのだ。

「やはり図星のようだな……。どうせ元は俺達をからかってるだけで、本当は直の事なんて何とも思ってないんだろ?」
「……いや、それは違うぜ優。俺は直の事が本気で好きなんだ。誰かさんがそう気がつかせてくれたからな……。そして俺は昨日、直に告白した。だから今の俺とお前の立場は、対等ってわけだ」

 その話を面と向かって優に言うのかと、俺は驚いてしまう。
 しかし俺よりも優の方が動揺しているのか、口を数回パクパクさせるとゆっくりと声を出したのだ。

「……は? 嘘だろ、何で元が……?」
「俺が直を好きなのは嘘じゃねぇ。だから優には言っておくが、これからはお前一人で直を独占しようとすんなよ。もしそんな事したら、俺は嫉妬で直になにするかわかんねぇからな」
「ふ、ふざけるな! 直に何かしたら例え元でもただじゃおかない……!」
「だからその独占欲をやめろって言ってんだよ。そんなのは直だって、迷惑だよな?」

 元は俺にウィンクを飛ばすと、動揺している優の隙をついて俺を抱き寄せた。
 そして元は、そのまま俺のほっぺにチュッと軽いキスしたのだ。

「へっ?」
「な、ななな! 直に何をするんだ!」

 俺を奪い返そうとした優をヒラリとかわした元は、突然俺を抱き上げるとそのまま歩き出したのだ。

「ちょ、ちょっと! 元!?」
「よし、このまま俺がリビングのソファーまで連れてってやるよ。そこで二人が来るまでイチャイチャしような!」
「え、いや……そのっ、えぇ?」
「元、直を離せよ!!」
「やだねー」

 そう言うと元は、怒りで顔を真っ赤にしている優を置いて俺をリビングまで運ぼうとした。
 しかしどうやら少し騒ぎすぎたのか、俺たちが出るより先にダイニングの扉が開いたのだ。

「も~、朝から一体なんの騒ぎ? 僕、うるさくて起きちゃったんだけど~」

 そこには眠たそうに目を擦る光と、その後ろで心配そうに俺達をそっと見つめる夜の姿があった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

双子攻略が難解すぎてもうやりたくない

はー
BL
※監禁、調教、ストーカーなどの表現があります。 22歳で死んでしまった俺はどうやら乙女ゲームの世界にストーカーとして転生したらしい。 脱ストーカーして少し遠くから傍観していたはずなのにこの双子は何で絡んでくるんだ!! ストーカーされてた双子×ストーカー辞めたストーカー(転生者)の話 ⭐︎登場人物⭐︎ 元ストーカーくん(転生者)佐藤翔  主人公 一宮桜  攻略対象1 東雲春馬  攻略対象2 早乙女夏樹  攻略対象3 如月雪成(双子兄)  攻略対象4 如月雪 (双子弟)  元ストーカーくんの兄   佐藤明

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

ある日、人気俳優の弟になりました。

樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

転生したら弟がブラコン重傷者でした!!!

Lynne
BL
俺の名前は佐々木塁、元高校生だ。俺は、ある日学校に行く途中、トラックに轢かれて死んでしまった...。 pixivの方でも、作品投稿始めました! 名前やアイコンは変わりません 主にアルファポリスで投稿するため、更新はアルファポリスのほうが早いと思います!

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

ある日、人気俳優の弟になりました。2

樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。 平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

処理中です...