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元と俺
31、本気にさせたから
しおりを挟む家に着いてからも、優と元は何故か歪みあったままだった。
その空気に耐えられなくてご飯を早めに食べた俺は、すぐ部屋に戻ると今日の事を仁に連絡していた。
「仁、どうしよう……俺のせいでメンバーの仲が悪くなってるかもしれない」
『何でそんな事に……?』
「それがわからないから、困ってるんだって~!」
『うーん。俺には何があったのかよくわからないけど、直はC*Fのメンバーと仲良くなり過ぎなんじゃないのか?』
そう言われても何故かメンバーにキスとか色々されてる俺は、もう仲がいいどころではないのかもしれない。
「やっぱり、そうなのかな……?」
『思い当たるならそうなんだと思うよ。それと忠告しておくけど明日は土曜で学校もないから、今日に引き続き気を抜かないようにした方がいいよ。特に夜の時間帯とかね……』
何で夜限定でそんな事を言われたのかよくわからないけど、出来る事なら俺も気をつけたいとは思っているのだ。
だから俺は、とりあえず仁の言葉に頷いておく事にした。
「わかった、気を付けてみる。それでまた何かあったら、仁に連絡してもいいか?」
『うん。愚痴ぐらいなら聞いてあげられるし、いつでもこの俺を頼ってくれていいから!』
そう言ってくれる仁に感謝しつつ通話を切ったのだけど、俺は少し困っていた。
俺だって仁の言う通りにしたいとは思っている。それなのに、二人ともグイグイくるせいで中々避けられないんだよな……。
しかも何故か俺は二人からキスされても、そこまで嫌じゃないと思ってしまうのだ。
龍二だと触られるのさえも嫌悪感があったのに……一体その違いはなんだろう?
そう思った俺は、そもそも元にキスされている事がおかしいと気がついてしまったのだ。
俺が好きだと言った優はまだわかるけど、元の奴は本当に何なんだ?
優がいない所でも俺を押し倒したりキスをしてきたり……しかも嫉妬までするなんて、まるで俺の事が好きみたいじゃないか。
そう思った俺は、すぐに首を横に振っていた。
あの元が俺を好きになるとか、ありえない……。
だって俺の知ってる元は、昔から何を考えてるのわからない奴だったのだ。
だからこの寮でクズな男だと知った時は、自分を陥れのは元かもしれないと疑ってしまったのだけど……。
今の俺は、元が真剣勝負でトップモデルになりたいと思っている事を知っている。そんな奴がズルをして1番になりたいと思うわけがない。
だからもしかすると俺を陥れたのは元じゃないかも知れない……。
その事に、何故か俺はホッとしてしまったのだ。
やっぱ今の元も、俺の知ってる元とは違うのだ。
それなら元はやっぱり俺の事……って、何考えてんだよ俺は!?
そんな事を考えて1人でパニクっていると、耳に突然元の声が聞こえてきたのだ。
「直、今少しいいか?」
一瞬、元の事を考え過ぎて空耳が聞こえたのかと思って驚いた。
だけど一緒にノックの音も聞こえていたので、本当に元が部屋を訪ねて来た事に気がついたのだ。
俺は恥ずかしい気持ちを抑えながら、慌てて扉を開けた。
「は、元……何か用か?」
「……あのさぁ、俺は後で話があるって帰りに言ったんだけど、直はもう忘れたのか?」
確かにそんな事を言われた気がするけど、あの険悪な空気のせいで俺はすっかりその事を忘れていたのだ。
「ご、ごめん。そういえば言ってたよな……それで、話って何だよ?」
元を部屋に入れたくなかった俺は、ここで話を終わらせようとした。
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だから俺は元が話始めるまでじっとする事にしたのだ。
「直、このまま俺の話を聞いてくれ……」
「わかったけど……もう少ししたら寝たいから、なるべく早くしてくれよ?」
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「何でと言われても……あー、そうだな。俺は直の素直な所に惚れたんだと思う。直は……直だけは、俺の夢を笑わなかった。俺を理解して、真っ直な心で俺を見てくれた。だからその瞳に他の奴らを映して欲しくない、それぐらい俺に夢中にさせたいと思ったんだよ。つまりだな……俺は直を独り占めしたいぐらい、好きになってたって事だ!」
俺を見つめながら真剣に話す元に、それは本当に俺の事を言っているのかと頭上にハテナマークが飛び交ってしまう。
「何でそんな顔してんだよ?」
「いや、元がおかしな事言うから……」
「成る程、どうも直は俺の話を信用してないみたいだな。……それなら、その唇にしっかりわからせてやらねぇと」
「え、ちょっ……んんっ!」
元は俺の唇を強引に奪うと、本当に俺の事が好きだとわからせるように何度も何度も角度を変え、口内を貪っていった。
そしてようやく俺を離してくれた元は、ニカっと笑いながら俺に言った。
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「わ、わかったから……もう、これ以上はやめてくれよ……」
「ああ、くそっ……。何もしないって言ったのに、そんな顔されたら流石に我慢できくなるからやめろって……」
「……へ?」
色々言いたい事はあるのだけど、とりあえず元からしたら抱きしめたりキスをする事は、何もしないに含まれるのか……?
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「だから、そんな物欲しそうな顔で見るな!」
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だってどんなに考えてみても、元が本気で俺の事を好きだなんて信じられなかった。
そのせいで俺は数時間も扉の前で立ち尽くしてしまったのだ。
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