俺の事嫌ってたよね?元メンバーよ、何で唇を奪うのさ!?〜嵌められたアイドルは時をやり直しマネージャーとして溺愛される〜

ゆきぶた

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元と俺

24、気まずい

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 ゆうを置いて部屋から出ると、はじめはすぐに俺を抱えるのをやめた。
 あれは優に嫌がらせをする為の演技だから、ずっと持ち上げている必要は無いもんな。
 そう思って元を見ると、凄く機嫌が良さそうだった。

「なあ、見たかなお。優のあの悔しそうな顔……思い出すだけでたまんねぇよな」

 今にも笑い出しそうな元に、俺はドン引きしてしまう。

「お前、本当に悪趣味だよな」
「ふん、何とでも言え。俺は人の嫌がる顔を見るのが大好きだからな」

 あまりにも人間のクズみたいな発言に、元が思っていたよりも最低な奴だと俺は認識を改めていた。
 こういう奴がなりふり構わなくなったら、どんな手でも使うのかもしれない。もしかすると俺を陥れたのも本当はコイツなんじゃないのか……?
 そう疑ってしまった俺はボソッと呟いていた。

「うん、一番ありえそう……」
「は? 何があり得るんだ」
「いや、何でもないって。それよりも早く朝ごはんの支度しよう」
「そうしてくれ、俺は直が起きてこなかったせいで既に少し待たされてるからな。結構お腹がすいてるんだぜ?」
「ご、ごめん……すぐに準備する!」

 急いでキッチンに向かった俺は、元の事について考えるのは後だと思いながら朝ごはんの準備を始めたのだった。

 因みに寮での家事は基本当番制なのだけど、マネージャーである俺はその半分を担当する事になっていた。
 それでも家事はこうして誰かが手伝ってくれる事が多いので、今のところそこまで苦にはなっていない。それに俺はマネージャーとして殆ど働けてないし、こういう所でカバーしないとダメだと思ってしまったのだ。

 だから頑張ろうと思っていたのに……今日は俺が起きるのが遅かったせいで、元に迷惑をかけてしまった。
 でもなんとか挽回しようと頑張って料理をした結果、俺は他のメンバーが起きてくるまでにどうにか朝食を作り終える事ができたのだ。
 後は机に並べるだけだと急いで盆に料理を載せていると、元が一番重たそうなのをヒョイっと手に持った。

「これだけあると運ぶの大変だし、重いのは俺が待ってくぜ?」
「あ、ありがとう……」
「先に少し運んでおくから、直はいっぺんに持っていく準備しとけよ」

 そういいながら軽々と料理を運ぶその姿に、性格悪いのに良い所あるんだ……。そう思ってしまった俺はそのギャップにキュンとしてしまい、すぐに首を振る。
 いや、騙されたらダメだ。コイツはやり直す前の世界で俺を陥れた犯人かもしれないんだから、一応気をつけておかないと……。
 そう思って顔を上げると、そこには何故か優が立っていた。
 どうやら先に着替えてきたのか、学生服の優は少し暗い表情をして俺に話しかけてきたのだ。

「直、俺も手伝おうと思ったんだが……少し遅かったみたいだな」
「いや、まだ運んでる最中だから一緒に持っていってくれると嬉しいかな」
「ああ、わかった」

 返事はそっけなかったのに、その表情は凄く明るくなっていた。その顔を見た俺は、やっぱり優は口下手なんだと思ってしまったのだ。
 それに今まで気がつかなかったけど、優も俺と一緒で思ったよりも顔に出やすいようだ。

「じゃあ、優の盆には皆の飲み物を乗せて……」
「直、さっきの分置いてきたぜ……って、優は手伝いに来たのか?」

 せっかく優の機嫌が良くなったというのに、タイミング悪く元が戻ってきたせいで優の機嫌は再び悪くなってしまったのだ。

「俺は直だけの手伝いをしにきたんだ。それにお前と直をなるべく二人にしたくなかったから、急いで準備をしてここに来た」
「ふーん、でも残念ながら優が手伝う事はもう何もないぜ。だから大人しく椅子に座って待ってたらどうだ?」

 ニヤニヤと楽しそうに言う元に、ムッとした優は準備してある料理を見ると盆を一つ手に取って言った。

「運ぶだけなら俺にも出来る。だから直、後の分は元じゃなくて俺と一緒に運ばないか?」
「いや、何言ってるんだよ。全員で持っていけばすぐに終わるんだから、皆で行けばいいだろ?」
「む……」
「しょうがないな、直がそう言うなら俺は一緒に行ってやってもいいぜ?」

 相変わらずギスギスしている二人を見て、また言い合いにならないかと俺はヒヤヒヤしていた。
 だけど予想とは違い、優は元に言い返す事はなかった。
 そして先に歩き出した優の姿にホッとした俺は、元を軽く睨んでその背中を追ったのだ。
 正直、優が手助けしてくれなかったらひかるよるが起きてくるまでに、食事を並べる事はできなかったと思う。


 そしてようやく朝ごはんを食べ始めた俺は、部屋の空気がなんだか重たい事に気がついた。
 確かに優が不機嫌なのに対して元は上機嫌で、二人がギスギスしているせいだとすぐにわかるのだ。
 そして光はそんな空気に耐えられなくなったのか、ボソっと呟いていた。

「はぁ……ご飯は美味しいのになぁ~」

 そう言いながら、光は俺達を不思議そうに見ていた。そして光の横にいる夜は怯えいるのか、絶対にこっちを見ようとしなかった。
 流石にこのままだと、C*Fが本当に不仲なアイドルになってしまう……!
 そう思った俺はこの空気だけでも変えたくて、自分から話しかける事にしたのだ。

「えっと……ご飯中に悪いんだけど、今日の予定を聞いてもいいか?」

 少し弱々しい俺の問い、にメンバー全員が一斉にこちらを見た。
 そのせいで誰を見たらいいのかわからなくなった俺は、目が泳いでしまう。
 そして俺が困っている事に気がついたのか、光は元気に手を挙げてくれたのだ。

「はいはーい! 俺は朝学校行って、昼からはドラマの撮影だよ~」
「あれ……もしかしてそれ、この間話してた例のドラマ?」
「うん。でも初主演だし俺がまだまだ慣れてないから、時間が押すかもしれないんだよねぇ……」
「そうか、なら光は後の方かな。残りの3人は?」

 俺が改めて3人を見回すと、夜がおずおずと手を挙げた。

「あの……俺は朝からレコーディングに行って、夜にバラエティ番組の出演があるから一番遅くなるかも……」
「わかった、夜は最後希望だな」

 俺が手帳にそれぞれのスケジュールを書いていると、今度は元が手を挙げていた。

「俺は昼から、モデルの撮影だけだから一番早く終わると思うぜ?」
「わかった、一番最初ね。あと……優は?」

 機嫌が悪いせいで一言も喋らない優を俺はじっと見つめていた。
 そして優は俺の視線に耐えられなくなったのか、目を逸らしながら言ったのだ。

「……俺は朝学校に行って、夕方からドラマの撮影だ。多分前と同じぐらいに終わると思う」
「そうか……教えてくれてありがとな!」
「別に、これは直だから教えただけだ。全員のスケジュールをまだ把握できてない直が、俺だけ迎えに来なくても困るしな……」

 少し嫌味のように聞こえるけど、きっと優は俺を心配してくれてるのだろう。
 そう思えるのも優の性格が少しわかったおかげだと、俺は嬉しくなっていた。

「それなら俺は、早く皆のスケジュールを覚えられるように頑張るよ」
「いや、直は俺のさえ知っていればいい。寧ろ俺以外の奴なんて迎えに行かなくてもいいぐらいだ」
「おいおい、流石に迎えがないのは嫌だぜ?」
「もう、優君。弟だからって独り占めはずるいって言ってるでしょ~!」
「直は俺達のマネージャーなんだから、平等じゃないと困る……」

 そして何故かまた言い合いを始めたコイツらを見て、俺はため息をついたのだ。
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