俺の事嫌ってたよね?元メンバーよ、何で唇を奪うのさ!?〜嵌められたアイドルは時をやり直しマネージャーとして溺愛される〜

ゆきぶた

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弟と俺

21、俺を?

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 ───ゆうが俺を好き?
 俺は優が言っている事の意味がわからなくて、頭が混乱していた。

「えっと……それは家族としてだよな?」
「違う、本当に一人の人間として愛してる。だから俺はなおとキスをしたり、それ以上の事をしたい」

 それ以上の事ってなんだ……?
 そう思いながらも、俺は今の言葉で流石に優の気持ちを理解していた。

「優の言いたいことはわかったけど……でも俺達は兄弟なのに、なんでそんな事に?」
「兄弟かどうかは関係ないだろ」
「いや、でも……」
 
 そういうものなのだろうかと疑問に思っていると、何故か優は俺を好きになった経緯を突然話始めたのだ。

「……俺は子役時代から直にずっと憧れていた。だから昔の俺は直を兄として尊敬しているだけだと思っていた。だけど俺の持つ感情は尊敬なんかじゃなかったんだ……。しかも俺がそれに気がついたのは、直が芸能界を辞めた後の事だ」
「……え?」
「直は覚えているか? 子役時代、撮影が終わると俺達はなるべく一緒に帰ってただろ?」

 確かに当時、一人で帰るのが危ないからと母さんに言われていた俺は、兄として仕方なく優と手を繋いで家へと帰っていた。
 でもその時の俺は優を見下していたし、たいして会話らしい会話をした記憶もない。

「えっと、ごめん。あまり覚えてないかも」
「そうか……やっぱりなおからしたら、その程度の事だったんだな……。だけど俺にとってその帰り道は、直とゆっくり話せる唯一の時間だったんだ。それなのに直が芸能界を辞めて一緒に帰る事もなくなったせいで、俺は直と話す時間が殆どなくなってしまった……。そして直が俺の側からいなくなって、初めてこの感情がただの尊敬とは違う物だと気がついたんだ」

 確かに子供の頃の優は俺の事が大好きだというオーラを常に出していた。だけど今の話を聞く限り、優はそうとう昔から俺の事を意識していたという事になってしまう。
 そうなるとやり直す前の世界でも、優は子供の頃から俺が好きだった事になるんだけど……?
 流石にそんな筈がないと俺は優に確認していた。

「まさか優は子供の頃から俺が好きだった、なんて事はないよな?」
「いや俺は感情を理解していなかっただけで、子役時代から直を恋愛対象と見ていた筈だ。確かに直が芸能界をやめてからその事に気がついたせいで、この寂しさは一体なんなのかと凄く悩んだり、自分の感情がわからなくて混乱した事もあるけどな……」
「それなら、勘違いって可能性はないのか?」
「ありえない事だな。だって俺はこの感情をはっきり恋だと理解した瞬間があるからな……。それは俺が寮に入る前に直と久しぶりに会った時の事だ」
「それって……優が荷物を取りに来たときの事だよな?」

 確かあの時の優は俺を憎しみの目で見ていた筈だ。

「ああ、そうだ。俺はあの日久しぶりに会った直を見て、燻っていた感情が爆発したんだ。そのせいで直が可愛くて愛おしくて欲しくて仕方がなくて、俺はその感情を抑えるのに必死だった」

 つまり、あの時の優はただ情緒が不安定だったという事なのだろうか……?

「それならなんであんな事……俺を恨んでるみたいな言い方しただろ?」
「何を言ってるんだ? 俺はその時の思いを直へ伝えたつもりだ」
「俺への思い……? でも確か優は『絶対に兄貴を許さない。いつかトップアイドルになって兄貴を見返すまで、この家には帰ってこないから』って、言ってたと思うけど……」

 俺はあの時の夢を何度も見ている。
 だからこれで殆どあってる筈なのに、優は何故か首を振ったのだ。

「違う、俺はあの時『俺は兄貴の事がこんなにも大好きなのに何も教えてくれないなんて、絶対に兄貴を許さない。いつかトップアイドルになって兄貴を見返せるようなイケメンになるまで、この家には帰えらないから。それで俺がトップアイドルになったら、直を迎えに行って惚れされてやる』そんな感じの事を言ったつもりだ」
「いや長いし、全然違うけど!? 俺は絶対そんな事言われてないよ!」

 もしかしてあの時の優は、叫んだときに言葉が半分ぐらい抜け落ちてしまったのだろうか?
 それに優と再会した時、俺を迎えに来たと言ったのもこれが理由なのだと思う。

「おかしいな、俺はちゃんと言った筈だが……?」

 本気でそう言いながら首を傾げた優を見て、俺は気がついた。
 もしかして優は、凄く口下手なのか……!?
 そういえば優は俺が嫌いだと言うくせにその行動はチグハグで、ずっと変だと思っていた。
 だから俺は、つい優に聞いてしまったのだ。

「それなら、俺の事嫌いって言ったのは?」
「……俺の事をとしか見ない直の事は大嫌いだ。俺は直に弟じゃなくて恋愛対象として見て欲しいから、そう思うのは仕方がないだろ」

 あれ、そういえば最初に聞いた時もの事は嫌いとか言ってたような……?
 そして俺は今までずっと勘違いをしていた事に気がついて、恥ずかしくなってしまったのだ。

「それに俺は、直と離れてからこの感情に気がついたせいで、好きだという思いだけが年々強くなってしまった。そしてそれが爆発した結果、俺は直に会いたいという気持ちだけでトップアイドルにまで上り詰めたんだ」

 まさかC*Fがやり直す前の世界よりも、こんなに早くトップアイドルになったその理由が、俺だったとでもいうのか……?

「直、俺は約束を守った。だから直は、早く俺の物になれよ……」
「いや、そんなの言われても困る! それに今から一緒に寝るっていうのに、こんな時に告白するのはズルい……」
「仕方がないだろ。この気持ちをどうしても今すぐに、直へと伝えておきたかったんだ。確かにこんな事を話した後だと、一緒に寝るのは嫌かもしれない……だけど絶対に何もしないって直と約束したから、今日だけは一緒に寝る事を許してほしい」

 そんなションボリした顔で言われたら、一緒に寝るのをやめるなんて俺は言い出せなかったのだ。

「わかったよ。一緒に寝てもいいと言ったのは俺だから仕方がないけど……絶対に変な事するなよ?」
「ああ、わかってる。俺も今日までは兄弟として一緒に寝てやるよ。でも次は違うから、その時は直も覚悟しておいてほしい……」

 そう言って、優は俺を抱きしめたのだ。

「こら、抱きしめるのはダメだろ?」
「兄弟の馴れ合いだからセーフだろ、兄貴?」
「もう、なんで兄貴とか言ってくるんだよ? そんなふうに呼ばれたら、兄として何でも許しちゃうだろうが……」

 そう言ったものの、俺はもう優をただの弟とは思えなくなっていた。
 俺の心臓はこんなにもドキドキしてるし、きっとこの鼓動は優にもバレているのだと思う。
 だから弟として接しても、優は何も言ってこなかったのだ。

 そして優に抱きしめられている俺はすぐに寝てしまいそうで、ウトウトしながら思ったのだ。
 優は凄い口下手だったけど、もしかしてやり直す前の優も同じだったのかな……?
 それなら『俺の前から消えてくれないか?』と言った優の本音は───。
 そう考えてる途中で、俺はぐっすり眠ってしまったのだ。
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