俺の事嫌ってたよね?元メンバーよ、何で唇を奪うのさ!?〜嵌められたアイドルは時をやり直しマネージャーとして溺愛される〜

ゆきぶた

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プロローグ 時をやり直す

2、没落した頃

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 マネージャーにコッテリ絞られた俺は、訳もわからないままトレーニングルームにいた。
 他のメンバーは仕事のために、一緒に練習する時間なんてない。それなのに暇な俺は、一人で鍛えたりしていつも時間を潰しているのだ。

 そして俺は今、ランニングマシンで走りながら悪態をついていた。

「くっそぉ……、俺が何したっていうんだよ……」

 本当に俺は何もしていないのに……だけど何処からそんなスキャンダルが出ているのかもわからない。
 それなのにどれだけ否定しても信じてもらえない事に、俺はそろそろ絶望し始めていた。

 そもそもこのスキャンダル地獄は、3年ほど前に俺の熱愛報道がでた事から始まった。
 この時、一緒に噂になった女優さんは確かに少し親しかった。でもその人には彼氏がいたので俺と恋人なんてありえない話だったのだ。
 そんな訳でこの時は互いに否定をして、その話はすぐに終わった。

 しかし問題はそれからだった。
 何故か俺のスキャンダルは、たて続けにどんどん増えていったのだ。
 そしてそれは徐々に悪化していき、俺が少し同期の女性と食事に行くとそれだけでスキャンダルにされるようになっていた。
 気がつけば相手は女性だけではなく監督や演出家に作家等と、有りとあらゆる著名人に媚を売っているアイドルとして、パパラッチにスキャンダルを取られる日々。
 その結果、俺の人気は地へと落ちていった。

 でも俺はハッキリと言える。
 その記事は、何一つ本当の事なんて書かれていなかったんだ。

 それに最初の頃は、相手方だって強く否定してくれていた。
 でも次から次へと出てくるスキャンダルに、本物が混ざっているのでは無いかと疑われるようになり、俺は芸能界の中で誰にも近寄られない存在になっていった。
 そして最近では、スキャンダルになる相手は俺の事に詳しくない若手ばかりになり、そのせいで俺は若手落としの風間直かざまなおとして最近では有名になってしまったのだ。

 もちろんそれはグループにも迷惑になっていた。
 そのせいでファンの間でも俺の悪口が、SNSへとよく書かれるようになったのだ。
 最近見た悪口を思い出して、俺はつい口から溢れてしまう。

「風間直は早くC*Fシーエフを辞めるべきか……」

 C*Fとは、俺たちグループの略称だ。
 他にもファンタズマと言う人もいるが、今はそんな事はどうでもいい。
 それにしても、辞めろと直接的に書かれると流石に堪えるな……。
 そんな落ち込んでいる俺に、誰かが後ろから声をかけた。

「あれ~、今日は直君だけ? 一番会いたくない人間に会っちゃったな~」

 後ろを向くと、そこにはひかるがいた。
 相変わらずのフワフワで明るい髪色の男だ。
 その色はコロコロと変わる為、よく髪が傷まないものだと感心してしまう。

 それにしても、一番会いたく無い人間か……俺には痛い言葉だな。
 光は最初の挨拶以降俺の事を避け続け、俺がスキャンダルで落ちぶれてからはこうして煽ってくるようになっていた。
 昔は小さくて可愛いかったのに、今では少しだけ身長を抜かされてしまい全く可愛げもない。

「悪かったな、俺しかいなくて……」
「本当、最悪~。会えるなら優君のがよかったな~!!」

 コイツが優に懐いてるのは知っているが、それでもこうして比べられる事にショックを受けてしまう。
 でも俺はなんとか少しでも距離を縮めたくて、この際だから光を食事にでも誘ってみようかと思ってしまったのだ。

「俺は優じゃないけどさ……もしこの後時間があるなら、光の好きな甘い物でも食べに行かないか?」
「はぁ~?? 僕甘い物嫌いなんだけど?」
「え? でも、インタビューでは甘い物が好きだって……」
「それはインタビュー用の回答だよ? やっぱりイメージって大事だからね。だけど僕、本当は辛い物が好きなの。今まで一緒に活動してきてそんな事も知らないとかあり得ないんだけど~」
「ご、ごめん……」
「本当、早くこのグループから抜ければいいのにね~。僕、すっごく気分悪くなっちゃったから帰る」

 そう言って去って行く光に、俺は更に落ち込んでいた。
 きっとメンバーに嫌われている俺は、C*Fにも居場所なんてないんだ……。
 何もかもやる気のなくなった俺は、ランニングマシンから降りるとふらつきながら椅子に座り、暫くの間ぼーっとしていた。

「……なお、直!」

 その声でハッと我に帰る。
 いつの間にか俺の前にはよるが立っていた。

「あ、なんだ夜か……」
「大丈夫? 凄く疲れているようだけど……」

 仕事をしていない俺は疲れてなんかいない。
 今何時だろうかと外を見ると、もう日が暮れてしまっていた。
 その事に、俺は一体何をやっているのだとため息をついてしまう。

「なあ、夜。俺ってこのグループに必要ないのかな?」
「え!? 何言ってるの、俺は直がいないこのグループは考えられないよ……」
「……夜」

 相変わらず少し目元が髪で隠れているけど、メンバーの中で俺の味方をしてくれるのは夜しかいなかった。
 何故か夜だけは、最初からずっと俺に変わりなく接してくれる。
 それだけが俺の救いだった。

「だけど……もし本当に辞めたくなったら俺に相談して。俺、直のためなら何でもするから」
「何でもって大袈裟だな。だけどお前が信じてくれるなら俺はまだ大丈夫だ。よーし、明日からまた頑張るぞ!」
「直、その言い方はから元気に聞こえるよ……本当に大丈夫?」

 突然手を握られた俺は驚きのあまり立ち上がってしまう。
 別に逃げようとした訳じゃないのに夜は、逃がさないといわんばかりの強さで腕を掴んできたのだ。

「いっ……! 夜、腕を強く掴みすぎだ。少し驚いただけだし、別に逃げる訳じゃないから安心しろ」
「あっ、ごめん……俺、また……」

 申し訳なさそうに手を離してくれたのはいいけど、やっぱり掴まれた所には手の跡がつくほど真っ赤になっていた。
 どうやら夜は酷い心配性なのか、不安になるとこうして腕を強く握る癖があるようだった。
 こういったところが他のメンバーと合わないのか、夜もハミ出し物として俺と仲良くしてくれるのだと思う。

「全く夜は心配性だな、本当に大丈夫だって。それに、もう遅いから俺は帰る事にするよ」
「それなら俺が送って行くけど……?」
「いや、大丈夫。俺は帰る前に少しゆうに用事があってだな……そうだ、夜は優を見なかったか?」
「優? 確か社長に呼ばれていたから、事務所内にはまだいる筈だけど……」
「そうか、ありがとな!」

 そして俺は夜と別れて、優を探す事にした。
 因みに何故俺が優を探しているのかといえば、明後日は優の誕生日だからだ。
 きっとメンバー全員でお祝いはするのはわかっているのだけど、俺は皆と仲良くないから多分ハブられると思う。

 それでも俺は一人で優を祝うために、何か欲しい物がないか聞こうと思っていた。
 俺にとって優は大切な弟だし、実は毎年コッソリ誕生日プレゼントを送っているのだ。
 だから今年はどうしようかな~。と考え事をしていた俺は、角を曲がろうとして誰かにぶつかってしまったのだ。

「いったぁっ……だ、誰だ?」
「それはこっちの台詞だが、なんだ兄貴か……」

 そう言ってため息をついたのは、俺の弟である優だった。
 そして俺は優を見上げて思った。
 相変わらず顔がいいなコイツ……。
 優はいつのまにか俺より10cmも身長が大きくなり、悔しい事に俺よりイケメンになっていたのだ。
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