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福来博士の憂鬱 その5 猿の惑星を探せ
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福来博士は録画した映像を応接室の壁に投影した。
部屋の空気が振動し始めたところから動画は始まる。
本が床に落ち、それが一冊ずつ空中で読まれるようにめくれていく。
そして本が全て本棚に返されそこで映像は終わっている。
やはり幽霊らしき人物の映像は見えない。
「何も見えないですね、残念だわ」
「いやサーモグラフィー映像なら見えるかもしれん、サーモグラフィー映像に切り替えてみよう」と博士は言った。
壁面に投影された映像が、赤や青や黄色の原色映像に変わっていく。
しかし映像は単なる抽象画的映像にしか見えない。
「駄目ですね、全然わかりませんね」
「いや、まだ諦めるわけにはいかない。この映像の解析レベルをさらにアップさせてみる」
すると本を読んでいるらしい人物みたいなレインボーカラーの映像が見えてきはじめた。
しかしその姿はどう見ても人間には見えない。
「リルさん、これは何に見えます?」
「さあ全く想像がつきません」
「わしにはわかるぞ」と白ひげマスターが言った。「あれはタコ型火星人だ。H・G・ウェルズの『宇宙戦争』の映画に登場したやつだ」
「なるほどそうかもしれませんのね。どう見てもそうとしか私にも見えません」と博士は言って笑った。
「というところで結論が出たので、わしは帰らせてもらいます。帰ってたこ焼きでも食べて寝るとします」と言って白ひげマスターはさっさと帰った。
「タコ型の火星人てずいぶん時代遅れですね」
「いやわからんぞ、H・G・ウェルズがヒットした頃は宇宙人と言えばタコ型だったんだ、宇宙には常識なんか通用しない。我々が常識と思っているものはたんに小さな知識の積み重ねにしか過ぎないんだ。我々がこれが宇宙だと思っているものは、真の宇宙にとっては単なる水溜まりに過ぎないかも知れない」
「言えますね」
さらに2人は映像観察を続けたが、そのうち飽きてきた。
そのタコ型宇宙人が何故この家に現れたのか、とかいつもこの家にいるのか、とか疑問は残るが考えてもキリが無いので、博士はひと風呂浴びて寝ることにした。
福来博士が、眠っていると何処からか声が聞こえてきた。
「猿の惑星を探せ・・・」
誰かそのへんにいるのかと思い灯りをつけたが誰もいるはずは無い。
夢だったかとまた眠りに入ったが、また声が聞こえてくる。
「猿の惑星を探せ・・・」
さっきの声から1時間以上経過している。
「誰なんだ?」と言って灯りをつけたが、誰もいるはずも無い。
幻聴かもと思いインターフォンでリルに助けを求めた。
「リルさんこっちに来てくれないかね?変な声が聞こえるんだ。ただし裸では来ないようにね・・・」
「わかりました、すぐに参ります」
そしてすぐにリルはパジャマ姿でやって来た。
「さっきから変な声が聞こえるんだ、日本語で、『猿の惑星を探せ』と言っているように思えるんだ。間隔は1時間おきぐらい。私の幻聴かも知れんし、聞こえたら録音しておいてくれないか?」
「わかりました」と言ってリルは博士のベッドに眠り、博士はソファーに眠ることにした。
朝になり、目覚めた博士はリルに聞いてみた。
「昨夜は何か声らしきものは聞こえましたか?」
「いいえ、それらしきものはまったく聞こえませんでした。聞こえたのは海の音と鳥の鳴き声だけでした」
「そうか残念だな。それにしても猿の惑星を探せの意味がわからない。昔ヒットしたチャールトン・ヘストン主演の『猿の惑星』の映画を見ながらしばらく考えてみるよ、時間はいくらでもあるからな」
「博士、これから朝食の用意をしますから、食堂に来てくださいね。いつものトーストとハムエッグとサラダとコーヒーを作っておきます」
「ありがとう、家の周りを散歩してから行きます」
博士は散歩しながら、『猿の惑星を探せ』の意味を考えたがわかるはずも無い。
こうなったら思い付くまま、適当に何かやってみようと思った。
とりあえずそんな結論しか今は出ない。
部屋の空気が振動し始めたところから動画は始まる。
本が床に落ち、それが一冊ずつ空中で読まれるようにめくれていく。
そして本が全て本棚に返されそこで映像は終わっている。
やはり幽霊らしき人物の映像は見えない。
「何も見えないですね、残念だわ」
「いやサーモグラフィー映像なら見えるかもしれん、サーモグラフィー映像に切り替えてみよう」と博士は言った。
壁面に投影された映像が、赤や青や黄色の原色映像に変わっていく。
しかし映像は単なる抽象画的映像にしか見えない。
「駄目ですね、全然わかりませんね」
「いや、まだ諦めるわけにはいかない。この映像の解析レベルをさらにアップさせてみる」
すると本を読んでいるらしい人物みたいなレインボーカラーの映像が見えてきはじめた。
しかしその姿はどう見ても人間には見えない。
「リルさん、これは何に見えます?」
「さあ全く想像がつきません」
「わしにはわかるぞ」と白ひげマスターが言った。「あれはタコ型火星人だ。H・G・ウェルズの『宇宙戦争』の映画に登場したやつだ」
「なるほどそうかもしれませんのね。どう見てもそうとしか私にも見えません」と博士は言って笑った。
「というところで結論が出たので、わしは帰らせてもらいます。帰ってたこ焼きでも食べて寝るとします」と言って白ひげマスターはさっさと帰った。
「タコ型の火星人てずいぶん時代遅れですね」
「いやわからんぞ、H・G・ウェルズがヒットした頃は宇宙人と言えばタコ型だったんだ、宇宙には常識なんか通用しない。我々が常識と思っているものはたんに小さな知識の積み重ねにしか過ぎないんだ。我々がこれが宇宙だと思っているものは、真の宇宙にとっては単なる水溜まりに過ぎないかも知れない」
「言えますね」
さらに2人は映像観察を続けたが、そのうち飽きてきた。
そのタコ型宇宙人が何故この家に現れたのか、とかいつもこの家にいるのか、とか疑問は残るが考えてもキリが無いので、博士はひと風呂浴びて寝ることにした。
福来博士が、眠っていると何処からか声が聞こえてきた。
「猿の惑星を探せ・・・」
誰かそのへんにいるのかと思い灯りをつけたが誰もいるはずは無い。
夢だったかとまた眠りに入ったが、また声が聞こえてくる。
「猿の惑星を探せ・・・」
さっきの声から1時間以上経過している。
「誰なんだ?」と言って灯りをつけたが、誰もいるはずも無い。
幻聴かもと思いインターフォンでリルに助けを求めた。
「リルさんこっちに来てくれないかね?変な声が聞こえるんだ。ただし裸では来ないようにね・・・」
「わかりました、すぐに参ります」
そしてすぐにリルはパジャマ姿でやって来た。
「さっきから変な声が聞こえるんだ、日本語で、『猿の惑星を探せ』と言っているように思えるんだ。間隔は1時間おきぐらい。私の幻聴かも知れんし、聞こえたら録音しておいてくれないか?」
「わかりました」と言ってリルは博士のベッドに眠り、博士はソファーに眠ることにした。
朝になり、目覚めた博士はリルに聞いてみた。
「昨夜は何か声らしきものは聞こえましたか?」
「いいえ、それらしきものはまったく聞こえませんでした。聞こえたのは海の音と鳥の鳴き声だけでした」
「そうか残念だな。それにしても猿の惑星を探せの意味がわからない。昔ヒットしたチャールトン・ヘストン主演の『猿の惑星』の映画を見ながらしばらく考えてみるよ、時間はいくらでもあるからな」
「博士、これから朝食の用意をしますから、食堂に来てくださいね。いつものトーストとハムエッグとサラダとコーヒーを作っておきます」
「ありがとう、家の周りを散歩してから行きます」
博士は散歩しながら、『猿の惑星を探せ』の意味を考えたがわかるはずも無い。
こうなったら思い付くまま、適当に何かやってみようと思った。
とりあえずそんな結論しか今は出ない。
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