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監禁十六日目
監禁十六日目⑨ 最期
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視界が戻ると、紫音の支配はなくなっていた。
優夜は莉乃に抱き抱えられていた。
「さっきはごめん。俺は莉乃を……」
「ううん。優夜のせいじゃない」
涙声の莉乃が微笑む。
突如、電話が鳴った。目をやると、備え付けられた電話が呼び出し音をあげていた。出るべきなのか、それとも逃げるべきか。
「優夜、出て。わからないけど、出た方がいいような気がしたの」
莉乃が優夜を起こす。電話へ歩み寄る。呼び出し音は鳴り止まず響き続けていた。
受話器に手に取り、耳に当てた。
「誰だ」
「……」
ハアハアという苦しそうな呼吸は聞こえるが、返答はない
「誰なんだ」
「……優夜、さん」
「……葉子なのか?」
俺の声に横で莉乃が反応を示した。
「なんとか……動けるけれど、私はもうもたない。逃げなさい……私は……全てを終わらせる。この屋敷も……何もかも」
受話器の落ちるような音がし、それきり返答はなくなった。
「お姉ちゃんが……」
中へ戻ろうとする莉乃を食い止める。
「葉子は……逃げろと言っていた。最期に、何かするつもりなのかもしれない。だから、俺たちは葉子の為にも、逃げなきゃいけない」
ボロボロの身体を引き摺るように、莉乃と歩き始めた。警報は鳴り続けている。
優夜の頭にある姿が浮かぶ、葉子だ。腹から血を流している。葉子はキッチンにいた。ガス台の前にいる。
「葉子さん、止めるんだ」
──これは、紫音の声?
紫音の意識に優夜の意識が一部連れてかれてしまったのか、それは“魂”が見た光景なのか。或いは、そんなものはなく只の幻影だったのだろうか。
葉子はコンロのスイッチに手を掛けた。紫音が葉子に入り込もうとしたのか、身体にぶつかったが、弾かれてしまっていた。
「莉乃、ごめんなさい」
葉子は最期にそう言った気がした。
優夜は莉乃に抱き抱えられていた。
「さっきはごめん。俺は莉乃を……」
「ううん。優夜のせいじゃない」
涙声の莉乃が微笑む。
突如、電話が鳴った。目をやると、備え付けられた電話が呼び出し音をあげていた。出るべきなのか、それとも逃げるべきか。
「優夜、出て。わからないけど、出た方がいいような気がしたの」
莉乃が優夜を起こす。電話へ歩み寄る。呼び出し音は鳴り止まず響き続けていた。
受話器に手に取り、耳に当てた。
「誰だ」
「……」
ハアハアという苦しそうな呼吸は聞こえるが、返答はない
「誰なんだ」
「……優夜、さん」
「……葉子なのか?」
俺の声に横で莉乃が反応を示した。
「なんとか……動けるけれど、私はもうもたない。逃げなさい……私は……全てを終わらせる。この屋敷も……何もかも」
受話器の落ちるような音がし、それきり返答はなくなった。
「お姉ちゃんが……」
中へ戻ろうとする莉乃を食い止める。
「葉子は……逃げろと言っていた。最期に、何かするつもりなのかもしれない。だから、俺たちは葉子の為にも、逃げなきゃいけない」
ボロボロの身体を引き摺るように、莉乃と歩き始めた。警報は鳴り続けている。
優夜の頭にある姿が浮かぶ、葉子だ。腹から血を流している。葉子はキッチンにいた。ガス台の前にいる。
「葉子さん、止めるんだ」
──これは、紫音の声?
紫音の意識に優夜の意識が一部連れてかれてしまったのか、それは“魂”が見た光景なのか。或いは、そんなものはなく只の幻影だったのだろうか。
葉子はコンロのスイッチに手を掛けた。紫音が葉子に入り込もうとしたのか、身体にぶつかったが、弾かれてしまっていた。
「莉乃、ごめんなさい」
葉子は最期にそう言った気がした。
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