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監禁十五日目

監禁十五日目① 思案

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 身体のあちこちが痛む。昨日の葉子にされた緊縛によるものだ。勿論、監禁による疲弊しきった身体と精神状態もある。しかし、心が折れる訳にはいかなかった。

 足の鎖は相変わらずだが、全身が拘束されているよりはずっとマシであった。ストレッチをしながら、考えを巡らせる。紫音の言葉が本当であれば、和奏はもう解放されているはずだ。決して信じられる連中ではないが、今は信じるしかない。

 朝の食事は雨宮順三の人形が持ってきた。何度見ても、自分が殺したはずの男の姿を見るのは嫌な気持ちになる。思えば、雨宮の人形は何も喋らない、ただ淡々と物を運ぶことに徹している。動くことにもエネルギーがいるように、喋ることにも相応のエネルギーが必要なのだろうか。


 そこに紫音がいつものように「やあ」と言ってやってきた。
「君の妹は無事に記憶を消して、送り帰したよ。安心していい」
 紫音は車に乗っている和奏の写真を見せた。どうやら眠らされているようだ。

 それにしても、家に帰ったとしても、子どもが行方不明になっているから大騒ぎになっているのでは。何にせよ、紫音の言葉が本当なら、和奏はこれで無事に……和奏をわざわざ監禁して必要はない。
「では僕は病院に戻らないといけないんでね。あとで風呂に入るように、言っておくよ」
 とだけ言って出ていった。

 決意は固まっていた。ここから脱出する。一度失敗したものの、まだチャンスはある。なんとか、莉乃とここから抜け出してみせる。

 この屋敷で逃げ隠れるのは、不可能だ。それなら、一人ずつ……

 もちろん、これ以上殺したくはない。雨宮順三の首を絞めた感覚が、身体から、心から消えることがなかったからだ。殺すことはない、そもそも死ぬのかすらわからないが。一人ずつ、気を失わせ、拘束することができれば。

 その為には。優夜の心にひとつの案が浮かんだ。

 あの、スタンガンを使えれば。奴らが人間離れしていても、肉体は人間と同じらしい。ならば、あのスタンガンも有効だろう。しかし、どうやって奪う。

 考えることは容易くとも、実行に移すのは困難だ。これまでのことを思い返す。チャンスがあるならば、風呂に向かう道中だ。しかし、風呂に行くにはおそらく拘束されるだろう。つまり、風呂のために誰か、おそらく葉子か、が入ってきた瞬間を狙うしかない。

 スタンガンがなくとも、気絶させることができればいい。頭に雨宮順三の姿がまとわりつく。やり過ぎてはいけない。

 優夜はベッドにうつ伏せになり、目を閉じた。
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