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監禁十四日目
監禁十四日目③ 縄目
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「吊り責めどうだったかしら?」
葉子は嬉しそうに、問い掛けてきたが、何も答えられない。葉子も答えを求めていないようだ。
葉子はごちゃごちゃのように見えていた縄をひとつひとつ丁寧に外していった。これだけ縄を使ってるのに、絡まることなく縄は解けて、身体の自由が戻っていく。
ようやく全身から縄が解かれると、二の腕には深い縄の跡が残っていた。カメラを止め、背後に来た葉子はそっとそれを撫でていった。
「綺麗な縄目。縄文文化なんてあったくらいだし、人は潜在的に何か惹かれてしまうのかもしれないわ」
一人悦に入っている葉子を尻目に、優夜は踏み込むことにした。
「妹は、莉乃はお前を心配していた。本当はお前も苦しんでたんじゃないのか?」
「いいえ、私は私の使命として、御子神家に尽くしているもの」
「本当か? 本当は御子神家を恐れてるから仕えてるんじゃないか? 自分が母親と同じ目に遭いたくなくて」
「貴方に何がわかるというのかしら」
その言葉が、これまでより少し弱まった気がした。少し、ほんの少し葉子の心が波立ってきている。
「もし、この屋敷から逃げ出せたら? 俺と莉乃と逃げ出しさないか。血に関しては、俺が協力する」
「貴方は知らないだけ。御子神家がいかに恐ろしいかを。彼らからは逃れることはできない」
「そんなの、わからないじゃないか。お前は、このまま莉乃が苦しむ姿を見ていることに耐えられるのか?」
「莉乃がした行いが自分に返ってきている、ただそれだけ。行為には責任が伴う。いま莉乃が苦しんでいるのは、自分の過ちのため」
「俺を守ろうとした莉乃の行いが過ちなら、御子神が、お前らがしてきたことはどうなんだ」
「ここでのルールは法律のそれとは違う。ここでの罪とは御子神家の一存で決まる。それは絶対よ」
葉子は縄を仕舞うと、外に出ていった。投げた言葉たちは、最後まで葉子を説得出来ずに終わった。情に訴えれば、もしかしたらとどこか期待してしまっていた。しかし、それでも葉子の忠誠心は覆らなかった。
一人残された部屋で、優夜は心に溜まっていく絶望を味わうだけであった。
葉子は嬉しそうに、問い掛けてきたが、何も答えられない。葉子も答えを求めていないようだ。
葉子はごちゃごちゃのように見えていた縄をひとつひとつ丁寧に外していった。これだけ縄を使ってるのに、絡まることなく縄は解けて、身体の自由が戻っていく。
ようやく全身から縄が解かれると、二の腕には深い縄の跡が残っていた。カメラを止め、背後に来た葉子はそっとそれを撫でていった。
「綺麗な縄目。縄文文化なんてあったくらいだし、人は潜在的に何か惹かれてしまうのかもしれないわ」
一人悦に入っている葉子を尻目に、優夜は踏み込むことにした。
「妹は、莉乃はお前を心配していた。本当はお前も苦しんでたんじゃないのか?」
「いいえ、私は私の使命として、御子神家に尽くしているもの」
「本当か? 本当は御子神家を恐れてるから仕えてるんじゃないか? 自分が母親と同じ目に遭いたくなくて」
「貴方に何がわかるというのかしら」
その言葉が、これまでより少し弱まった気がした。少し、ほんの少し葉子の心が波立ってきている。
「もし、この屋敷から逃げ出せたら? 俺と莉乃と逃げ出しさないか。血に関しては、俺が協力する」
「貴方は知らないだけ。御子神家がいかに恐ろしいかを。彼らからは逃れることはできない」
「そんなの、わからないじゃないか。お前は、このまま莉乃が苦しむ姿を見ていることに耐えられるのか?」
「莉乃がした行いが自分に返ってきている、ただそれだけ。行為には責任が伴う。いま莉乃が苦しんでいるのは、自分の過ちのため」
「俺を守ろうとした莉乃の行いが過ちなら、御子神が、お前らがしてきたことはどうなんだ」
「ここでのルールは法律のそれとは違う。ここでの罪とは御子神家の一存で決まる。それは絶対よ」
葉子は縄を仕舞うと、外に出ていった。投げた言葉たちは、最後まで葉子を説得出来ずに終わった。情に訴えれば、もしかしたらとどこか期待してしまっていた。しかし、それでも葉子の忠誠心は覆らなかった。
一人残された部屋で、優夜は心に溜まっていく絶望を味わうだけであった。
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