上 下
61 / 90
監禁十四日目

監禁十四日目③ 縄目

しおりを挟む
「吊り責めどうだったかしら?」
 葉子は嬉しそうに、問い掛けてきたが、何も答えられない。葉子も答えを求めていないようだ。

 葉子はごちゃごちゃのように見えていた縄をひとつひとつ丁寧に外していった。これだけ縄を使ってるのに、絡まることなく縄は解けて、身体の自由が戻っていく。

 ようやく全身から縄が解かれると、二の腕には深い縄の跡が残っていた。カメラを止め、背後に来た葉子はそっとそれを撫でていった。
「綺麗な縄目。縄文文化なんてあったくらいだし、人は潜在的に何か惹かれてしまうのかもしれないわ」
 一人悦に入っている葉子を尻目に、優夜は踏み込むことにした。

「妹は、莉乃はお前を心配していた。本当はお前も苦しんでたんじゃないのか?」
「いいえ、私は私の使命として、御子神家に尽くしているもの」
「本当か? 本当は御子神家を恐れてるから仕えてるんじゃないか? 自分が母親と同じ目に遭いたくなくて」
「貴方に何がわかるというのかしら」
 その言葉が、これまでより少し弱まった気がした。少し、ほんの少し葉子の心が波立ってきている。

「もし、この屋敷から逃げ出せたら? 俺と莉乃と逃げ出しさないか。血に関しては、俺が協力する」
「貴方は知らないだけ。御子神家がいかに恐ろしいかを。彼らからは逃れることはできない」
「そんなの、わからないじゃないか。お前は、このまま莉乃が苦しむ姿を見ていることに耐えられるのか?」

「莉乃がした行いが自分に返ってきている、ただそれだけ。行為には責任が伴う。いま莉乃が苦しんでいるのは、自分の過ちのため」
「俺を守ろうとした莉乃の行いが過ちなら、御子神が、お前らがしてきたことはどうなんだ」
「ここでのルールは法律のそれとは違う。ここでの罪とは御子神家の一存で決まる。それは絶対よ」

 葉子は縄を仕舞うと、外に出ていった。投げた言葉たちは、最後まで葉子を説得出来ずに終わった。情に訴えれば、もしかしたらとどこか期待してしまっていた。しかし、それでも葉子の忠誠心は覆らなかった。

 一人残された部屋で、優夜は心に溜まっていく絶望を味わうだけであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

意味がわかると下ネタにしかならない話

黒猫
ホラー
意味がわかると怖い話に影響されて作成した作品意味がわかると下ネタにしかならない話(ちなみに作者ががんばって考えているの更新遅れるっす)

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

自縄自縛 榎並雪子の長い一日

シートス
ホラー
……これから、これで自分の身体を縛るんだ。 榎並雪子、十五才は秘めていた計画を実行に移した。 高校一年の夏、これから始まる初体験。 それは、緊縛の世界—— 投稿されている作品に異世界ものが多いですが、日常の中でもすぐ近くに、自分の知らない異世界のような現実が広がっているのでは。そんな気持ちで書きました。緊縛という内容を踏まえて一応R18にしましたが、直接的なエロ描写はないので、そこはご了承を。 拘束状態の雪子が遭遇するものにドキドキしたり、ちょっと怖くなったりして欲しくてホラーカテゴリにしました。

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

処理中です...