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監禁十日目
監禁十日目⑬ 抱擁
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紫音が出ていき、部屋に残された。
語られたいくつもの信じがたい事実、それは本当に事実なのだろうか。
しかし、そうでなければ、あの人形の説明がつかないではないか。まさか、それほど精巧に動いて喋ることができる人形ということも。
いや、まさに紫音の言った「本当の先端技術というのは、限られた人間しか見ることができないものさ」という言葉、それであればそんな人形を生み出す技術の方が、より現実的ではないか。
血液の話はどこまで本当なのだろうか。ストレスを与えることで、より心臓へ心拍数を上げ血圧を高めるということ。まるで、ゾンビだ。死した人間の身体をウイルスが血液を通じて巡り、その人間を動かす、現実にそんなことがあるのだろうか。ましてや、そこに“魂”、意識を乗せられるなど。
しかし、優夜はあることを思い出していた。それはたまたまネットで見た記事。人の脳をパソコンに繋ぎ、意識や記憶をアップロードするというものだ。
そうした研究がされているという事実、もしそれをパソコンなしでできてしまう人間がいるとしたら、それが昔から“魂”と呼ばれていたとしたら。
葉子が呆気ないほど簡単に父親、雨宮順三の死を受け入れたのは、その魂が死んでいなかったからだ。だからこそ、父親を“殺した”優夜への怨みを抱くこともなかったのだ。
父親は本当は死んでいないことを知っていたのだから。
背筋を冷たいものが走る。だとしたら、そんな相手にどうやって立ち向かえばいいというのか。
和奏の安否もわからない。そして、拘束されたままではこの部屋から出ることすら叶わない。しかし、待てば、必ずチャンスは訪れる。サッカーと同じだ。
しばらくして、誰かがやってきた。
二人は、手を繋ぎ、そのそっくりな顔に不敵な笑みを並べてやってきた。
紅子、そして人間に戻った蒼子であった。
人間としての姿を取り戻した蒼子の姿は、紅子と瓜二つであるが、二人の性格は全く違う。紅子は情熱的で赤を連想させる、そして蒼子は常に落ち着いていて青を想像させる。逆にそれが二人のバランスとなり、恐ろしさでもあった。
「紫音兄様から話はお訊きになりましたか」
紅子口を開く。
「私たちの、秘密を」
蒼子が続ける。
その瞬間、蒼子は背後に周り優夜の首に、その細く白い腕を巻きつけた。
「こうするのは、初めてですわね」
語られたいくつもの信じがたい事実、それは本当に事実なのだろうか。
しかし、そうでなければ、あの人形の説明がつかないではないか。まさか、それほど精巧に動いて喋ることができる人形ということも。
いや、まさに紫音の言った「本当の先端技術というのは、限られた人間しか見ることができないものさ」という言葉、それであればそんな人形を生み出す技術の方が、より現実的ではないか。
血液の話はどこまで本当なのだろうか。ストレスを与えることで、より心臓へ心拍数を上げ血圧を高めるということ。まるで、ゾンビだ。死した人間の身体をウイルスが血液を通じて巡り、その人間を動かす、現実にそんなことがあるのだろうか。ましてや、そこに“魂”、意識を乗せられるなど。
しかし、優夜はあることを思い出していた。それはたまたまネットで見た記事。人の脳をパソコンに繋ぎ、意識や記憶をアップロードするというものだ。
そうした研究がされているという事実、もしそれをパソコンなしでできてしまう人間がいるとしたら、それが昔から“魂”と呼ばれていたとしたら。
葉子が呆気ないほど簡単に父親、雨宮順三の死を受け入れたのは、その魂が死んでいなかったからだ。だからこそ、父親を“殺した”優夜への怨みを抱くこともなかったのだ。
父親は本当は死んでいないことを知っていたのだから。
背筋を冷たいものが走る。だとしたら、そんな相手にどうやって立ち向かえばいいというのか。
和奏の安否もわからない。そして、拘束されたままではこの部屋から出ることすら叶わない。しかし、待てば、必ずチャンスは訪れる。サッカーと同じだ。
しばらくして、誰かがやってきた。
二人は、手を繋ぎ、そのそっくりな顔に不敵な笑みを並べてやってきた。
紅子、そして人間に戻った蒼子であった。
人間としての姿を取り戻した蒼子の姿は、紅子と瓜二つであるが、二人の性格は全く違う。紅子は情熱的で赤を連想させる、そして蒼子は常に落ち着いていて青を想像させる。逆にそれが二人のバランスとなり、恐ろしさでもあった。
「紫音兄様から話はお訊きになりましたか」
紅子口を開く。
「私たちの、秘密を」
蒼子が続ける。
その瞬間、蒼子は背後に周り優夜の首に、その細く白い腕を巻きつけた。
「こうするのは、初めてですわね」
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