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監禁十日目

監禁十日目② 選択

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「まさか、俺の血液型は、本当は」
「そう。貴方は普通なんかじゃない。とても珍しい、貴重な血液を持っているの。御子神はあらゆる場所にネットワークを持っているけれど、まさかお膝元に現れるなんて、思ってもなかったんじゃないかしら」

 葉子は、雄弁にペラペラと喋っていた。こんなに喋っていいのだろうか。……喋るということは、俺が言いふらさない、いや「言いふらせない」ことをわかっているからではないか。

 つまり、俺はやっぱり屋敷から出すつもりはない。少なくとも、生きて。

 血液が目的なら、監禁なんて回りくどい方法は必要ない。さっさと殺して血液を抜き取ればいい。つまり、彼らにとっては、何らかの事情で血液が常に必要ということだ。
 それは俺の持つ珍しい血液、殺してしまえば一度だけしか奪えない。しかし、生きてさえいれば、常に血液が提供できる、云わば生きる血液バンク、それが俺を監禁した目的なのだ。

 それを理解することはできない。しかし、一つずつ確実に繋がっていく。しかし、拘束された状況で、思考以外に優夜ができることは何もなかった。

 葉子は食事──シリアル──を優夜に食べさせると、トレーを持って去っていった。食事の間も拘束を解くつもりはないようだ。

 優夜は窮屈で苦しい拘束の中、考えることを止めなかった。

 そこに紅子と、紅子の押す車椅子に乗った蒼子が入ってきた。
「おはようございます。朝食は済みましたか? 今日は優夜様に選択をしていただきます」
「選択、だと?」

「そう、選択は二つ」
 紅子はニヤニヤとした表情で言った。そこに蒼子が冷たい言葉を重ねた。

「『快楽』か『苦痛』か」

 『快楽』か『苦痛』? なんだそれは。それは……もう今まで繰り返してきたではないか。
「選んでどうなる」
「そのままよ。選んだものを貴方が受けられるというだけ。普通は『快楽』でしょうけど、貴方はマゾの素質もありますから、『苦痛』も悪くないかもしれませんわ」
 紅子が笑って答える。
「答えなければ、どうする?」
「私が勝手に決めさせていただきますわ」
 蒼子が静かに答えた。平淡な話し方なのに、その声に恐怖を感じた。

 身体はボロボロだ。昨日のこともあり、とても『快楽』なんて気持ちにはならないが、体力的に『苦痛』を受ける方が辛いだろう。そして、あの言い方からも、蒼子が選べば必ず『苦痛』を取る。
「……『快楽』を」
 諦めたように言い放った。

「……かしこまりました。では、私(わたくし)は……」
 と言い、いつの間にか現れた葉子によって廊下に消えていった。そして紅子が部屋に残された。
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