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自縛
第六話
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恐怖に囚われ雪子は身体をがむしゃらに動かし暴れた。しかし束ねられた身体がのたうつだけであり、ただ体力を消耗するだけで終わった。
気持ちは焦っても、状況は何も変わらなかった。視界はボヤけ、時計を確認することもできないが縛ってから一時間以上は経っているだろう。食い込んだロープによって腕がかなり痺れてきていた。
必死にロープの結び目を探ってみても、キツく結束された結び目は弛まなかった。
「……どうしよう……トイレに行きたい」
精神は少し落ち着き平静さを取り戻しつつあったが、状況は変わらない。ベッドに座る形になった雪子は思案する。
ここからトイレへ行くには、部屋を出て廊下を十メートルほど進まなくてはならない。普段ならわけのない距離なのに、縛られた状態でそんなに移動することができるだろうか。
そうだ、それに部屋の鍵を掛けてしまっていたんだった。念には念を入れたつもりが、完全に裏目に出ていた。
想像すればするほど、それは困難なミッションであった。
かといって、このまま漏らしてしまうわけにはいかない。その為には、やるしかないのだ。ボヤけてほぼ何も見えない視界、果たしてトイレまで辿り着けるだろうか。
意を決して揃えた足で立ち上がった、尿意をこらえながら、一歩、二歩と跳び跳ねてドアを目指す。しかし、初めての緊縛に疲労した雪子の身体は思うとおり動かず、数歩進んだところで着地に失敗し、床に倒れてしまった。
衝撃が身体中に広がる。当然ながら受け身もとれないので、かなり痛い。幸い怪我はないようだが、そうは言っても現状はかなり悪化してしまった。
固い床の上では上体は起こせても立ち上がるのは難しい。身を捩ってみても立ち上がれそうになかった。
ドアの気配は感じているが、ノブの上にある鍵はおろか、ドアノブまですら到底届く気がしない。
なんとか上体を起こすと、ベッドの下の収納スペースに寄りかかる。この向こう側にハサミが落ちてると思うともどかしいが、こちら側からはどうしようもない。
ベッドを背もたれにして反動をつけて起き上がろうとした。だが身体がもつれ、また倒れてしまった。失敗だ。
頭の中に縁ギリギリまで水の溜まったコップが浮かんだ。そこに一滴一滴、水滴が落ちてゆく。その度に波紋が揺れている。
雪子の身体は、限界を迎えていた。悔しさと恐怖に雪子は悲鳴を上げたが、それは悲しきことに、ハンカチとガムテープの壁に阻まれ、かき消されてしまった。
「……イヤ。こんなとこで、こんな状態で……」
しかし、雪子の身体はそんな気持ちとは裏腹に、静かに動いていた。
「……もう……ダメ」
ピチャッという音とともに、雪子は下半身が生温かいものが伝い徐々に濡れていくのを肌で感じた。
「ああ、やってしまった……」
もう駄目だ。
一度堰を切ってしまったものは、もう自分の意思で止めることはできなかった。
「恥ずかしい……」
ボヤけていた目元に熱いものを感じながらも、雪子は途方に暮れ相変わらず動けずにいた。
気持ちは焦っても、状況は何も変わらなかった。視界はボヤけ、時計を確認することもできないが縛ってから一時間以上は経っているだろう。食い込んだロープによって腕がかなり痺れてきていた。
必死にロープの結び目を探ってみても、キツく結束された結び目は弛まなかった。
「……どうしよう……トイレに行きたい」
精神は少し落ち着き平静さを取り戻しつつあったが、状況は変わらない。ベッドに座る形になった雪子は思案する。
ここからトイレへ行くには、部屋を出て廊下を十メートルほど進まなくてはならない。普段ならわけのない距離なのに、縛られた状態でそんなに移動することができるだろうか。
そうだ、それに部屋の鍵を掛けてしまっていたんだった。念には念を入れたつもりが、完全に裏目に出ていた。
想像すればするほど、それは困難なミッションであった。
かといって、このまま漏らしてしまうわけにはいかない。その為には、やるしかないのだ。ボヤけてほぼ何も見えない視界、果たしてトイレまで辿り着けるだろうか。
意を決して揃えた足で立ち上がった、尿意をこらえながら、一歩、二歩と跳び跳ねてドアを目指す。しかし、初めての緊縛に疲労した雪子の身体は思うとおり動かず、数歩進んだところで着地に失敗し、床に倒れてしまった。
衝撃が身体中に広がる。当然ながら受け身もとれないので、かなり痛い。幸い怪我はないようだが、そうは言っても現状はかなり悪化してしまった。
固い床の上では上体は起こせても立ち上がるのは難しい。身を捩ってみても立ち上がれそうになかった。
ドアの気配は感じているが、ノブの上にある鍵はおろか、ドアノブまですら到底届く気がしない。
なんとか上体を起こすと、ベッドの下の収納スペースに寄りかかる。この向こう側にハサミが落ちてると思うともどかしいが、こちら側からはどうしようもない。
ベッドを背もたれにして反動をつけて起き上がろうとした。だが身体がもつれ、また倒れてしまった。失敗だ。
頭の中に縁ギリギリまで水の溜まったコップが浮かんだ。そこに一滴一滴、水滴が落ちてゆく。その度に波紋が揺れている。
雪子の身体は、限界を迎えていた。悔しさと恐怖に雪子は悲鳴を上げたが、それは悲しきことに、ハンカチとガムテープの壁に阻まれ、かき消されてしまった。
「……イヤ。こんなとこで、こんな状態で……」
しかし、雪子の身体はそんな気持ちとは裏腹に、静かに動いていた。
「……もう……ダメ」
ピチャッという音とともに、雪子は下半身が生温かいものが伝い徐々に濡れていくのを肌で感じた。
「ああ、やってしまった……」
もう駄目だ。
一度堰を切ってしまったものは、もう自分の意思で止めることはできなかった。
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