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決意
第二話
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……これから、これで自分の身体を縛るんだ。
十才の幼き日にたまたま見てしまった緊縛写真、映画のシナリオライターをしていた父親の資料の中に、偶然それを見つけてしまった。それが何なのか、当時の雪子は知る由もなかったが、着物姿で縛られたその女性の姿は、いつまでも心に残り、その後の人生を決定的に変えることとなった。
アニメやドラマ、映画などで、悪者に捕らわれて縛られてしまうヒロインの姿を目にしたことはあった。だが、いま目にしている写真は何か違っていた。その緊縛写真が意味するものを雪子が知るのは後の話である。
──三年後
ある日、読んでいた少女マンガに、ある場面があった。ヒロインが帰り道に知らない男に襲われて連れ去られてしまい、縛られて監禁されるというシーンだった。
「オレ、こういうの好きなんだ」
ロープで縛られ、ガムテープで口を塞がれたヒロインに、今まで拉致して縛ってきた女の写真を見せていく男。
涙ながらに抵抗しようとするが、拘束された身体ではどうしようもなく、次の瞬間、男に襲われそうになるヒロイン。そんなシーンだった。
その一連の場面に雪子は胸をドキドキさせていた。この気持ちは何だろう。ピンチになったヒロインにドキドキしているのか、それとも……縛られたヒロインにドキドキしているのか。それを見て三年前の記憶が呼び覚まされた。
縄で縛られ、艶やかな表情を浮かべる女の顔。
「世の中には女の人が縛られた姿を好きな人が……いるということ?」
デジタル・ネイティブである雪子の世代にとって、部屋に自分用のパソコンあったし、携帯電話を持つことも当たり前となっていた。パソコンを立ち上げ、検索画面へ手当たり次第に思いついたキーワードを入れてみる。
一時間後、雪子は自分が全く知らなかった世界を覗き見ていた。世にはSMという趣向があること、その中には緊縛という行為があることなどを知ることになった。
「……こんな世界が、あるんだ」
すぐに雪子の心は緊縛の世界に魅了された。
ディスプレイに映し出されたSMプレイの写真。それは社会の授業で見たこともない歴史を学んだように、或いはファンタジーの世界のフィクションのようにも見えた。
SMという行為は、鞭で叩いたり、蝋燭で蝋を垂らしたりと、雪子には恐ろしい世界だった。しかし、緊縛という行為だけは雪子の目には、眩しく光って見えていた。縄で縛られた女体、それはどこか芸術的で、縄がまるでファッションの一部であるかのように映えていた。
それから雪子はこっそりと緊縛のことについて学んでいった(十八歳以下は立入禁止、というホームページも覗いてしまった)。
その好奇心はいつしか抑えられなくなっていた。小さい頃から引っ込み思案で、自分の欲求を外に出すタイプでなかった雪子だが、外に出せない分、その欲求は体内で増すばかりであった。
「……わたしもこんな風に縛られてみたい」
十才の幼き日にたまたま見てしまった緊縛写真、映画のシナリオライターをしていた父親の資料の中に、偶然それを見つけてしまった。それが何なのか、当時の雪子は知る由もなかったが、着物姿で縛られたその女性の姿は、いつまでも心に残り、その後の人生を決定的に変えることとなった。
アニメやドラマ、映画などで、悪者に捕らわれて縛られてしまうヒロインの姿を目にしたことはあった。だが、いま目にしている写真は何か違っていた。その緊縛写真が意味するものを雪子が知るのは後の話である。
──三年後
ある日、読んでいた少女マンガに、ある場面があった。ヒロインが帰り道に知らない男に襲われて連れ去られてしまい、縛られて監禁されるというシーンだった。
「オレ、こういうの好きなんだ」
ロープで縛られ、ガムテープで口を塞がれたヒロインに、今まで拉致して縛ってきた女の写真を見せていく男。
涙ながらに抵抗しようとするが、拘束された身体ではどうしようもなく、次の瞬間、男に襲われそうになるヒロイン。そんなシーンだった。
その一連の場面に雪子は胸をドキドキさせていた。この気持ちは何だろう。ピンチになったヒロインにドキドキしているのか、それとも……縛られたヒロインにドキドキしているのか。それを見て三年前の記憶が呼び覚まされた。
縄で縛られ、艶やかな表情を浮かべる女の顔。
「世の中には女の人が縛られた姿を好きな人が……いるということ?」
デジタル・ネイティブである雪子の世代にとって、部屋に自分用のパソコンあったし、携帯電話を持つことも当たり前となっていた。パソコンを立ち上げ、検索画面へ手当たり次第に思いついたキーワードを入れてみる。
一時間後、雪子は自分が全く知らなかった世界を覗き見ていた。世にはSMという趣向があること、その中には緊縛という行為があることなどを知ることになった。
「……こんな世界が、あるんだ」
すぐに雪子の心は緊縛の世界に魅了された。
ディスプレイに映し出されたSMプレイの写真。それは社会の授業で見たこともない歴史を学んだように、或いはファンタジーの世界のフィクションのようにも見えた。
SMという行為は、鞭で叩いたり、蝋燭で蝋を垂らしたりと、雪子には恐ろしい世界だった。しかし、緊縛という行為だけは雪子の目には、眩しく光って見えていた。縄で縛られた女体、それはどこか芸術的で、縄がまるでファッションの一部であるかのように映えていた。
それから雪子はこっそりと緊縛のことについて学んでいった(十八歳以下は立入禁止、というホームページも覗いてしまった)。
その好奇心はいつしか抑えられなくなっていた。小さい頃から引っ込み思案で、自分の欲求を外に出すタイプでなかった雪子だが、外に出せない分、その欲求は体内で増すばかりであった。
「……わたしもこんな風に縛られてみたい」
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