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決意
第一話
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プロローグ
「誰か……助けて」
縛られた少女は、助けを求めていた。
しかし、その声は誰にも届かない。
第一章
──八時間前
長く続いた梅雨も明け、初夏の日差しに目を覚ます。その日、榎並雪子、十五才は秘めていた計画を実行に移した。高校一年の夏、これから始まる初体験。
身長百五十センチ、体重四十六キロ、小柄で引っ込み思案。不恰好なメガネ姿も相まり、クラスではどちらかというと地味な存在である。しかし、彼女の心の中には熱き想いが宿っていた。
「じゃあ行ってくる。留守中、くれぐれも気をつけてな」
「戸締まりちゃんとしなさいよ。この辺りも最近物騒だから」
「大袈裟だなぁ。大丈夫だって」
両親が車を出発させるのを見届ける。
「たまには夫婦水入らずで出掛ければ? 」
旅行は雪子が提案したものだった。
旅行好きの両親だったが、雪子が生まれて以来、すっかり子煩悩になっていた。三人で旅行に行くことはあっても、一人っ子の雪子を家に残していくことを心配し、二人で旅行に行くことはなくなっていた。だが、ある日たまたま商店街の福引きでペアの日帰り温泉のチケットが当選したことをきっかけに、二人で温泉旅行に行くことを決めたのだった。
家の中へ戻ると雪子はすぐにでも計画を実行したい、とうずうずしていた。だが、万が一忘れ物などをして両親が帰ってきてはいけない。その為、一時間は様子を見ることにした。慎重すぎるかもしれないが、これからすることをもし両親が見てしまったら、生きていけない。
本でも読もうと手に取ったが、読んでも内容がまったく頭に入って来ず、結局そのまま一時間が経過した。両親が戻る気配もないし、そろそろ高速道路に乗ったことだろう。
「よし、始めよう」
誰も家にいないことはわかっているが、自室のドアに念のため鍵を掛けた。押し入れの中から中学生時代に使用していた学生カバンを引っ張り出すと、そこに入れられたものを取り出し、ベッドに並べていった。終わるとカバンを押し入れに戻した。このカバンに入れたのは、なるべく見つからないようにと考えた結果であった。
ベッドに腰掛け、雪子は傍らに並べられたものを見つめた。
ロープ、ハンカチ、ガムテープ、ハサミ。
これから自分が行う行為を想像し、雪子の鼓動は早くなっていった。
「──さて、準備をしなくちゃ」
購入したままの状態のロープをビニール袋から取り出す。長さ十メートル、太さ四ミリのナイロン製のロープだ。近所のホームセンターで手に入れた。買う姿を誰かに見られないか緊張しながらレジに持っていったのを思い出す。
折り畳んで留めていたゴムを外し、ロープについていた折り癖を丁寧に伸ばし、二つ折りにしてベッドに置いた。もう一本のロープも同様に伸ばしてベッドに並べた。
並べたロープを見て雪子は小さく身震いした。
……これから、これで自分の身体を縛るんだ。
「誰か……助けて」
縛られた少女は、助けを求めていた。
しかし、その声は誰にも届かない。
第一章
──八時間前
長く続いた梅雨も明け、初夏の日差しに目を覚ます。その日、榎並雪子、十五才は秘めていた計画を実行に移した。高校一年の夏、これから始まる初体験。
身長百五十センチ、体重四十六キロ、小柄で引っ込み思案。不恰好なメガネ姿も相まり、クラスではどちらかというと地味な存在である。しかし、彼女の心の中には熱き想いが宿っていた。
「じゃあ行ってくる。留守中、くれぐれも気をつけてな」
「戸締まりちゃんとしなさいよ。この辺りも最近物騒だから」
「大袈裟だなぁ。大丈夫だって」
両親が車を出発させるのを見届ける。
「たまには夫婦水入らずで出掛ければ? 」
旅行は雪子が提案したものだった。
旅行好きの両親だったが、雪子が生まれて以来、すっかり子煩悩になっていた。三人で旅行に行くことはあっても、一人っ子の雪子を家に残していくことを心配し、二人で旅行に行くことはなくなっていた。だが、ある日たまたま商店街の福引きでペアの日帰り温泉のチケットが当選したことをきっかけに、二人で温泉旅行に行くことを決めたのだった。
家の中へ戻ると雪子はすぐにでも計画を実行したい、とうずうずしていた。だが、万が一忘れ物などをして両親が帰ってきてはいけない。その為、一時間は様子を見ることにした。慎重すぎるかもしれないが、これからすることをもし両親が見てしまったら、生きていけない。
本でも読もうと手に取ったが、読んでも内容がまったく頭に入って来ず、結局そのまま一時間が経過した。両親が戻る気配もないし、そろそろ高速道路に乗ったことだろう。
「よし、始めよう」
誰も家にいないことはわかっているが、自室のドアに念のため鍵を掛けた。押し入れの中から中学生時代に使用していた学生カバンを引っ張り出すと、そこに入れられたものを取り出し、ベッドに並べていった。終わるとカバンを押し入れに戻した。このカバンに入れたのは、なるべく見つからないようにと考えた結果であった。
ベッドに腰掛け、雪子は傍らに並べられたものを見つめた。
ロープ、ハンカチ、ガムテープ、ハサミ。
これから自分が行う行為を想像し、雪子の鼓動は早くなっていった。
「──さて、準備をしなくちゃ」
購入したままの状態のロープをビニール袋から取り出す。長さ十メートル、太さ四ミリのナイロン製のロープだ。近所のホームセンターで手に入れた。買う姿を誰かに見られないか緊張しながらレジに持っていったのを思い出す。
折り畳んで留めていたゴムを外し、ロープについていた折り癖を丁寧に伸ばし、二つ折りにしてベッドに置いた。もう一本のロープも同様に伸ばしてベッドに並べた。
並べたロープを見て雪子は小さく身震いした。
……これから、これで自分の身体を縛るんだ。
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