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マルクトール王国編
121話 主人公、エスティオに参加する
しおりを挟む僕達はいま、エスティオに参加するため、マルクトールの王宮の地下に来ていた。
参加者はここに集まって、全員で移動することになっている。
参加者は全部で7人。
ショートカットで愛嬌のあるフロム。
長身で長い黒髪が特徴のシェラ。
あまり背は高くなく、ちょっとぽっちゃりしているのはタツコ。
優等生って感じで、生真面目そうなアラン。
腕にフランス人形のアドラを抱いたエレーナ。
そして、ミライを左肩に乗せた僕。
僕達は、最後の1人を待っていた。
「遅いね。集合時間を過ぎてる。」
「パートナー精霊が注意するはずだから、遅刻なんてする子はいないと思うんだけど。」
リオンとシオンも不審そうだ。
そこに。
「わりーな。遅れて。」
最後の1人であるショウゴが現れた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
ショウゴの頭の横で、タツノオトシゴがフワフワ浮かびながら、謝罪している。
たっ、タツノオトシゴが浮いてる!
なんてシュールな映像!
「なんで遅れたの?理由は?」
リオンがショウゴに聞く。
「特に理由は無いな。なんとなく遅くなっただけだよ。」
ショウゴは悪びれずにそう答える。
なんとなくって!いいのかそれで!
「あっ、そうなんだ。」
リオンもなんでも無いことのように受け答えをする。
えっ?そんな返事でいいの?
そこは、遅れるなよ!とか注意するとこじゃないの?
「じゃあ、全員が集まったから、移動するよ。今回のエスティオは、宗教都市ザンザーラに行きます。その都市での問題を解決してもらうから、頑張ってね。ちなみに今回、監督官をするシオンだ。こっちは双子のリオン。僕達は手助けしないからね。」
そのシオンの言葉にショウゴが驚いている。
「お前、監督官だったのかよ。早く言えよ。同じ参加者だと思ったぜ。」
ショウゴがリオンを責めている。
「勘違いしたのは、そっちでしょ。見た目で判断するからだよ。」
「何だよ!オレが悪いって言うのかよ!」
ショウゴが怒り出す。
はぁ。遅刻はするし、すぐ怒り出すし。
ショウゴは問題児だな。
こんな子とチーム組むの?イヤだな。
そう思ったが、今さら帰ることもできず、仕方なく、みんなと共に転移扉を開けたのだった。
宗教都市ザンザーラは、マルクトールの王宮から数百キロ離れた場所にある都市である。
街の中心にはザーラ神を祀る神殿があり、そこから放射状に街が形成されている。
この神殿は1500年ほど前に建てられたらしい。ザーラ神は学問の神で、神殿にはたくさんの人が参拝に来ていたという。紋章システムができるまでは。
ザンザーラの近くの転移扉から、目的地まで歩く間に、僕はミライから基本的な情報をこっそり聞く。
「紋章システムができるまでは、アースのように学校に入るためや国の役人になるための試験があったからね。それに受かりますようにって祈りに来る人が多かったんだ。」
「あっ、そうか。紋章システムができて、そんな試験は無くなったから、この神殿に来る人は減ったんだね。」
「あい!そうだよ。」
他の参加者達も歩きながら、自分のパートナー精霊と話している。今から行く場所の情報を確認しているようだ。
うん。みんなしっかりしてるな。
さすが、もうすぐ成人の子達だ。
先頭を歩いているリオンとシオンが止まった。目的地に着いたようだ。
「はい、これがザーラ神の神殿だよ。」
リオンの前にあるのは、神社のような建物だった。なんだか厳かな雰囲気だ。
でも。
僕はこのザンザーラの街に入った時から感じている違和感が無くならない。
なんだ?この感じ…。
よく考える。
あっ!そうか!人が居ないんだ!
街の入り口から神殿まで歩いて来たが、誰とも会わなかった。
でも建物や道路は破損していない。
誰も住まなくなると家は朽ちるし、道路も整備されなくなるから、分かるはずだ。
どうなってるんだ?
だが僕の疑問はすぐ解消される。
「はい!じゃあ、この人からの話を聞いてね。今回のエスティオは、この人からの依頼を解決したら終了です。終了するまで帰れないから、頑張って解決するように!」
シオンの話が終わると、神殿から1人の老人が出てきた。
「依頼者のヤスナだよ。ここの最後の住人だ。」
最後の住人?
「ワシがヤスナだ。この神殿の神官をやっておる。王宮から来たっていうのはお前達か?まだガキではないか!こんなガキどもに何ができるというのだ!」
なに?なんか怒ってる?
すると、ヤスナの横に狛犬に似た精霊が現れて、「それは言わない約束ですよ。ヤスナ。あなたも納得したではありませんか」と、なだめる。
狛犬は僕達の方に向くと、一礼して話し出す。
「はじめまして、皆様。ヤスナのパートナーのチカゲです。詳しい説明は、私がします。」
とても礼儀正しい精霊だね。
いきなり怒り出したヤスナとは大違いだ。
「このザンザーラは歴史ある街です。ところが、100年ほど前から人が減り、数年前ついにヤスナ1人になってしまいました。」
ヤスナはこの街に1人で住んでるの?
この街は神殿を中心として半径1キロくらいはあると思うんだけど。それがすべて無人ってこと?
「紋章システムができるまでは、この街は賑わっていました。この神殿に代々仕える神官の家系が、この街を守ってきたからです。」
守ってきた?
でも今はヤスナ1人になった?
何があったんだ?
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