異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

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マルクトール王国編

120話 主人公、エレーナの秘密を知るー4

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「精霊種は、何らかの原因で精霊が具現化したものだったね?」

「あい!そうだよ。そして、それは精霊濃度が関係してるって考えられているんだ。でも、精霊種の誕生に立ち会った人なんていないからね。真実はわからないけど。」

 精霊濃度?
 そう言えば、ミライを生み出す時に僕のドラゴンの力が必要だとジルは言っていたな。
 精霊を集めてしまうドラゴンの力が。

「エレーナ!蕾の精霊濃度が分かったよ!」
「なんだコレ!通常の数千倍だ!」
 リオンとシオンの驚いた声が聞こえる。

「やっぱり…。ということは…。」
 エレーナが考え込んでいる。

 また時間がかかりそうだね。

 じゃあ、その間に気になっていたことを聞いてみるかな。

「そういえば、エレメンテには精霊種って、どれくらいいるの?ライルはとっても希少だって言ってけど。」

「あい!現在、王宮で把握している精霊種は3人。全員が紋章システムが開発される前の生まれなんだよ。」

 紋章システムが開発される前ってことは、全員500歳以上!

「その中の1人がエルだよ。精霊種はね。ドラゴンと同じくらい希少なんだよ。昔はいっぱいいたらしいけど。」とリオンが教えてくれる。

「精霊種って、そんなに少ないんだね。」

「まぁ、精霊種はヒトとは違う思考の持ち主が多いから、知られていないだけで、どこかにいるのかもしれないよ。」
 シオンが大真面目な顔でそう言う。

 ヒトとは違う?
 ソラも言っていたな。姿形を自在に変化できる精霊種もいるって。

「「長命だしね。仙人みたいなものだよ。」」

 仙人なんて、見たことないよ!
 どんな例えだ!

「とにかく数が少ないし、自分のことを教えてくれないから、精霊種に関してはほとんど謎なんだ。」

「なるほどね。」

 ライルもエルの種族は分からないって言ってたな。

「この世界では混血ばかりになったから、自分の種族が分かる人って貴重なんだけどね。教えてくれないから研究もできないよ。」

「んっ?自分の種族が分かる人が貴重?でもリオンとシオンは、ホビット族なんでしょ?」

「僕達はホビット族の特徴が強く出ただけ。純粋なホビット族じゃないよ。僕達みたいに、特定の種族の血が濃く出ることの方が稀なんだよ。」

 そうなんだ!

「そうそう。普通は種族ごちゃ混ぜなんだよ。コウモリの羽で猫耳っていう人もいるし。」

「特定の種族の血の特徴が強く出た場合、いろいろな弊害があるからね。王宮にスカウトされることが多いんだよ。僕達やライル、ジルみたいにね。」

「このホビット族の血のせいで、いろいろなことがあったよ。だから、自分のことを異常だと思ってしまうエレーナの気持ちも分かる。」
 リオンが悲しそうに言う。

「混血ばかりになったから、年齢が分からない人が増えたんだけど、それでも僕達の見た目は若すぎるよね。混血によって、差別や偏見が無くなったのはいいことだけど。」

「それぞれの種族の大まかな寿命は分かっているけど、その通りじゃない。エレーナの母親のように短命で亡くなる人もいるし、見た目はヒト種なのにびっくりするくらい長命の人もいる。」

 リオンとシオンの見た目は中学生くらいだが、年齢は156歳だ。親しい人が年老いて亡くなるのを見てきたのだろう。

 でも。

「リオン、シオン。この世界には紋章システムの防御結界があるから、事故で亡くなる人はいないと思うけど、アースは違う。僕は、いってらっしゃいって言ったのに、おかえりって言えなかった。僕の両親は事故で帰ってこなかったから。今の僕より若かったのに。
 この世界での死因の多くが、老衰だよね?かなりの病気は克服されてるって聞いたよ。だから、突然いなくなる人がいないっていう点では、エレメンテは良い世界だ。親しい人に急に会えなくなるのは、本当にツライから。」

 リオンとシオン、それに僕も、いろいろなことを思い出して暗くなってしまう。

 すると、そんな雰囲気を吹き飛ばすような声がした。

「お前達は考え過ぎなのです!」
 アドラが大きな声を出す。

 そして、
「いつ誰が亡くなるかなんて、誰にも分からないのです。だから、精一杯いまを生きるのです!」
 と、きっぱりと言う。

「「うん!アドラ、いいこと言うね!」」
 双子の表情が明るくなる。

 そうだね。種族とか関係ないよな。いつ死ぬかなんて、自分じゃ分からないんだから。
 ドラゴンの寿命は2000年って言われたけど、そんなの分からない。だから、アドラが言ったように、今できることを精一杯やろうと思う。

 それにしても、このアドラの言葉。これはリオンとシオンだけじゃなくて、エレーナに聞かせたかったんだろうな。

 僕はエレーナを見る。すると目があった。そして、「リオン、シオン、タクミ!分かったかも!私の考えを聞いてくれる?」と、エレーナが真剣な顔で言う。

 もう人形のような顔じゃない。
 うん。こっちの方がいいよ。エレーナ。

「じゃあ、説明するね。今から1200年前の古文書に、突然ケモノ達が凶暴化して村人を襲った話が出てくるの。原因については書いてないんだけど、そのケモノが出現した場所には突如出現した湖とその周りに生える不思議な草があったと書いてあったわ。」

「数年前に湧いた温泉とオダリ草、凶暴化したカルミナベア。この状況に似てる話だね。」

「そして、今から400年前。ある精霊研究者が面白い仮説を発表したの。精霊濃度が高い場所に長時間存在した物質は、何らかの変化をするんじゃないかって。だから、それによって、色々な種類の動物ができたに違いないと。」

「精霊濃度が生物の進化に影響するってこと?でも、それって確かめようが無いよね?」

「そう。だから、この仮説はほとんど想像。だけど、事実として公開されてるの。それは、実際に精霊濃度の高い場所での実験をしたから。地下で発見されたとても精霊濃度の高い空間に、どこにでも生えている草を植えたところ、大きく成長して、謎の蕾をつけた。その成長記録が公開されているわ。」

「このオダリ草も謎の蕾をつけていて、精霊濃度が高い。似てるね。」

「うん。だから、私の考えはこうよ。あの温泉は精霊濃度が高い場所から湧き出していて、それがオダリ草に何らかの影響を与えた。捕まえたカルミナベアはそれを食べて成長してしまったため、通常とは異なる姿になってしまった。そして、あの精霊濃度の高い蕾が原因で、薬物中毒みたいになったんじゃないかって。」

「なるほどね。精霊濃度が生物に何らかの影響を及ぼすなら、中毒症状が出ることがあるのかもしれない。」
「調べてみる価値はありそうだね。僕達の知り合いに、精霊研究を専門にしてる人がいるから、頼んでみよう。」
「うん。ちょうどいいよ。このマルクトールに研究室があるって言ってたから。」

 エレーナの推測から解決に向けて進みだした。

「エレーナすごいね!」
 ミライが素直な感想を言う。

「エレーナは膨大な記憶の中から、関連がありそうなものを選別して、判断することができるのです。記憶しているものから、答えを導き出すこと。これが知識の正しい使い方なのです。」
 そう語るアドラの顔が、なんだか自慢気に見える。

 実際はフランス人形だから、表情は変わらないけどね。

 うん、でもその気持ちはわかるよ。エレーナはすごいよ。

 今回のケモノは、本当なら討伐されるところだった。たくさんのことを知っているエレーナだから、助けられたんだ。いや、知ってるだけじゃない。知識の使い方を分かっているから、討伐しなくてすんだんだ!

 知っているだけじゃダメなんだな。
 知っていることを、どう使うかが重要なんだ。
 社会人として、分かってるつもりだったけど。

 僕はエレーナのおかげで、知識の使い方を再確認できたのだった。

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