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マルクトール王国編
115話 主人公、戦闘訓練をするー2
しおりを挟む「今回こそは降参だと思ったのになぁ。エレーナの対応能力には敵わないや。まぁ、いいデータが取れたから、良しとするか。」
リオンが複雑そうな顔をしている。
「データって何のこと?リオンとエレーナは何をしてたの?」
僕は横にいるシオンに聞いてみる。
「エレーナの武器は、思考波で動く特別な精霊球なんだよ。エレメンテで通常使用されている精霊球は、アースにある機械と同じで、プログラムされたことしかできない。だから、さっきみたいな触れると爆発するものの対処は、通常の精霊球にはできないんだよ。」
「あーあ、今回こそはエレーナでも降参だと思ったのにな。」
リオンがボヤキながら、こちらに近づいてきた。
「エレーナの精霊球は、エレーナが動かしているからね。今までには無い動きもできる。あの精霊球をあんな風に処理するなんて、驚いたよ。さてと、セシルさまにデータを送るかな。」
「セシルさまに?」
「エレーナの戦闘データは、セシルさまに送ることになってるんだ。このデータから、新しい精霊球を作るんだよ。セシルさまは、精霊工学の専門家だからね。」
うーん。セシルさまって、何でもやってるんだな。《怠惰》のセシルのはずなのに。
「さぁ、次はエレーナとタクミの模擬戦闘だ。エレーナ!タクミを攻撃して!火器のレベルは3まで上げていいからね!」
「レベル3までいいのですか?」
エレーナの腕の中のアドラがつぶやく。
ちょっと待った!
なんかアドラの反応がおかしくないか?
レベル3って、まさか!
エレーナの精霊球から光が放たれる。
僕のすぐ横の地面に穴が空いた。
なんだよ!この火力!
僕は慌てて、リオンとシオンから距離を取る。
「ミライ。危ないから、シオンの肩に避難しててね。」
「あい!タクミ、頑張って!」
僕はシオン達とは距離を取ると、エレーナの精霊球に集中する。
数が多いな。
これは目で追っていては、間に合わない。あれを試すしかないな。
ソラとサーシャの戦闘を思い出した僕は、ドラゴンの瞳を発動させる。
エレーナの精霊球をジッと見る。
何も感じない。おかしいな。
あっ、そういえばソラが言ってた。
ドラゴンの瞳で感情を読み取っているから、先読みが出来るのだと。
ってことは。感情の無い精霊球相手では、先読みの能力は発揮できないってことか?!
どうすればいいんだ!
僕の周りの地面にどんどん穴が空く。
発射されたレーザーは、ドラゴンの瞳で感知できるから、避けることはできる。
が、数が多過ぎる。これじゃ、いつか当たるな。まずい。レーザーが発射される前に、なんとかしないと。
仕方ない。僕からも攻撃してみるか。
僕は腕に神経を集中する。すると、腕の鱗が尖った刃物のようになる。まるでリオンが投げたクナイのようだ。僕はその鱗を、エレーナの精霊球に向かって投げた。
クナイ型の鱗は意思があるかのように、精霊球を追跡する。
鱗は僕の一部だからね。自由自在に動かせる。エレーナの精霊球がヒントになったよ。
さぁ、反撃だ。とりあえず、あの精霊球の数を減らそう。
鱗は精霊球に向かって一直線に進んで行く。
エレーナがレーザーで鱗を撃ち落そうとするが、強固な鱗はビクともしない。
ドラゴンの鱗の防御能力も最高ランクだよ!
レーザーじゃ、撃ち落とせないだろ!
クナイ型の鱗は、エレーナの精霊球を打ち落すと、地面に縫い止める。鱗に貫かれた精霊球は動かなくなっている。
ところが、しばらくすると精霊球の動きが変化した。
爆発する精霊球を処理した時のように、クナイ型の鱗を囲うと結界を発生させて、鱗を閉じ込めてしまったのだ。
そうきたか!
じゃあ、これならどうだ!
僕はクナイ型の鱗のスピードをあげる。それに対して、エレーナは精霊球のレーザーを鱗に当てて弾くことで対抗する。
それにしてもこのスピードの鱗に正確にレーザーを当てるなんて。
目で見て判断しているんじゃ、間に合わないはず。
エレーナには何か秘密がある。それはなんだ?
攻撃をしながら考えている僕に、ミライがヒントをくれる。
「タクミ!この世界を作っているのは精霊だよ!精霊の動きを感知してみて!」
精霊?
そうか!精霊はアースの空気みたいなもの。何かが動く時は、精霊も動く。
精霊の動きを感知できれば!
僕は精神を集中して、ドラゴンの瞳で精霊の気配を探る。すると、さっきまでとは違う景色が見えるようになる。
これだ!これが精霊の気配!
クナイ型の鱗が動くと、その周りの精霊が乱れる。
上手く表現できないが、ザワザワした感覚だ。
これを感じていたら、どこに飛んでくるか推測することが可能だ。ってことは!
「エレーナは、これを感知して反応してるんだな!」
「エレーナの秘密が分かったとしても、エレーナには勝てないのです。タクミ、さっさと降参するのです。」
アドラが挑発するようなセリフを言う。
たしかに、このままでは結着がつかない。いや、これを攻略する方法が何かあるはずだ。考えろ。
僕は必死に考えを巡らせていた。
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