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マルクトール王国編

109話 主人公、王宮図書館に行くー1

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 僕は今、マルクトール王国の王宮図書館の前にいた。

 これが、王宮図書館?
 ウソだろ?

 広大な敷地にバカでかい建物が何棟も建っている。真ん中にドームのような一際大きい建物があり、それを囲むように様々な様式の建物が配置されていた。

 秩序があるようで、無いな。この配置。でも雰囲気は似ている。
 ってことは。

「まさか?これ全部が図書館?」
 ポツリとつぶやいた僕に、ライルが大真面目な顔で肯定する。

「えぇ、アースの図書館と同じですよ。普通に本が置いてある場所です。」

 全然違うよ!規模が!

「エレメンテ中の本がここに置いてあるんだよ。」
 リオンの言葉に僕は疑問に思う。
「紋章システムに公開しているものも置いてあるの?すごい数になると思うんだけど。」

「そんな訳ないじゃん!この図書館には各建物にぬしがいて、その主がいいと思ったものを書籍化して置いてあるんだよ。」

「ヌシってなに?」

「マルクトール王国にスカウトされた人達だよ。みんな書物が大好きで仕方ないって人で、自分の好きな分野の本しか置いてないんだよ。」
「そうそう。各建物は一言でいうと、趣味の家。で、そこにずっといるから、ヌシって呼ばれてるの。よく釣りする人が川の主、とか言うじゃん!それと同じだよ!」

 図書館のぬしって、どんな巨大魚だよ!
  
「僕達が目指しているのは、あの中心にある建物です。ここは、中心にある建物が一番古くて、ほかの建物は後から建てられたものなんですよ。」

「ってことは?どんどん増えてるの?」

「そういうことになりますねぇ。」

 ライルのノンビリとした受け答えに、頭が痛くなる。

 この世界の人達って、アース生まれの僕とは、ちょっと感覚が違うから、たまについていけないよ。

「タクミ。エレメンテには、土地がいっぱいあるからね。どれだけでも建てられるんだよ!心配しないで!」
 ミライがそう教えてくれるが、土地の心配をしてるんじゃないんだよっと軽く心の中でツッコミを入れる。
「ミライは一度、アースに行ってみた方がいいね。日本の建物を見たら、僕の心の葛藤が理解できると思うよ。」


 そんな僕達の会話も気にしないで、ライルはどんどん中心の建物に近づいて行く。
「この建物だけは、入るのに許可が必要なのです。トール様に事情を説明しておいたのですが、ここのヌシが良いと言わない限り、入れてはくれません。」

 ライルは建物の扉の前に立ち、大声で叫ぶ。
「エレーナ!開けてください!この中の書物に用があるのです!聞こえてますか?」

 反応はないようだ。

「おかしいですね。エレーナにはトール様から連絡が入ってるはず。僕も連絡したのですが…。」

 しばらくすると、扉が少し開き、手だけが見えた。おいでおいでをしている。

 こっ怖い…。

「あれは……。皆さんは少しここで待っててくださいね。」
 ライルは少し考えた後、僕達を残して1人で扉に近づく。

 すると、人の手だと思っていたものが巨大な鬼の手に変わり、ライルに襲いかかる。
 ライルはそれを分かっていたかのように、サッとかわすと逆に鬼の手を捕縛してしまう。

 おぉ!ライルって、戦闘も可能なんだ。そうだよな。王宮に仕えていたんだから、それくらいできるよな。でも、普通に強いんだ。見た目と全然違う!

「エレーナ!イタズラはやめて、出てきてください!このおもちゃを壊してしまいますよ!」

 あの鬼の手って、おもちゃなんだ?

「エレーナは相変わらずだねぇ。」
「うん。来客にとりあえずイタズラすることにしてるみたいだよ。」
「普通に入れてくれればいいのにね。」
 リオンとシオンがあきれたような顔をしている。

 あっ、これ。いつものことなんだ?

 成り行きを見守っていた僕達の前で、扉が開く。中から出てきたのは、フランス人形を抱いたとても可愛い女の子だった。

「エレーナ。どうせ開けるんですから、普通に開けてくださいよ。」

「面白くなかった?」
 僕はその発言に驚く。言葉を発したのは、フランス人形の方だったからだ。

「そうですね。65点といったところですかね?」
 ライルもフランス人形の方を見て、会話している。

 どうなってるんだ?

「エレーナは、とても恥ずかしがり屋なの。だから、エレーナの精霊であるアドラと会話するんだよ。」
 リオンがそう教えてくれる。

 僕はアドラを抱いたエレーナを見る。感情を顔に出さないから、まるでエレーナの方が人形みたいだ。

「でもこんなイタズラするなんて、まだ子供なの?そんなわけないか。若く見えるけど、エレーナは、成人してるんだよね?」

「ううん。まだ成人していない。だけど、ある特殊能力があるからここにスカウトされたんだ。マルクトールの王宮図書館の中でも、この建物だけは、特別なんだよ。」

「特別?」

「瞬間記憶って聞いたことある?」

「見たものを写真で撮ったかのように記憶できる能力、だったような。だから、ものすごく分厚い本でも記憶できるって。」

「そうだよ。エレーナはね。その能力があるから、この図書館にスカウトされたんだよ。」

「13歳からここにいて、いまはたしか、15歳だったと……。」

「そうです!エレーナはもうすぐ16歳!成人なのです!」
 エレーナのパートナー精霊のアドラが、僕達のヒソヒソ話をさえぎってそう答える。

 まだ成人前の女の子が、こんな広い図書館のぬし

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