異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

文字の大きさ
上 下
104 / 247
グランエアド王国編

94話 主人公、変現を学ぶ

しおりを挟む
 

 気がつくと、さっきとは全然違う場所に居た。

 ここは?
 周りには天井も壁もない。見渡す限り、真っ白い空間だ。

「ここなら、邪魔は入らないからな!まず最初に、タクミにはありがとうと言うぞ!こんなにすぐ、また会えるとは!次は100年後くらいかと思ってたぞ。」

「あははっ。100年は考えてなかったけど、僕もこんなに早くソラに会えるとは思ってなかったよ。でも今のこの世界には、紋章システムっていう便利な道具があるんだ。情報を集約してるから、他の国の遺跡もすぐ見つかると思うよ。それにしても、万能のソラなら、そんなことすぐに分かりそうなのに。」

「タクミにだけ白状するけど。僕は生物の感情や思考を感じることができるだけなんだ。だから、道具や機械なんかはデータとして把握できても、理解できない。意思が宿ってないからな。ドラゴンの瞳も、そういう意味では万能じゃないんだ。」

「あっ、それで!僕も、さっきのセイレーン文字はデータとしては把握できたけど、意味は分からなかった。」

「理解できないものの意味はわからないってことだよ。しっかし、タクミには詩的感覚がないんだな。あの文言は、セイレーン族に古くから伝わる歌だぞ!」

 歌?なるほどね。
 たしかに僕には詩的センスは無い。

「それより、そろそろ左肩の幼体を紹介してほしいぞ!」

「あっ!そうだった!あれからジルっていう改良家が、僕のために人工精霊を誕生させてくれたんだよ!ミライ、大先輩のソラだよ!」
 僕はミライをソラに紹介する。

「あい!はじめまして、ソラ。ミライだよ!」

「おぉ!なかなか可愛いじゃないか!人工精霊ね。精霊種を人工的に生み出したってことか。」

「えっ?ミライって精霊種なの?それって、エルと一緒ってこと?」

「精霊とは、この世界エレメンテに漂う空気のような存在だ。その精霊が何かの衝撃で意思を持って具現化したものが、精霊種と呼ばれる存在なんだよ。紋章システムに使われているパートナー精霊は、使用者の思考を利用して人らしく振る舞っているだけで、自分の意思で具現化したわけじゃない。だから、精霊種とは言えないんだ。そういう意味では、ミライも完全な精霊種ではないな。」

「ミライは、紋章システムのパートナー精霊や精霊種とも違うってこと?」

「そうだ。ミライはドラゴンの力を核として生み出されている。意思があって生まれたわけじゃない。タクミという存在があったから生まれたってことを考えると、パートナー精霊と精霊種の中間のような存在ってことだな。」

「僕がいたから、生まれた?」

「そうだ。ミライはね。まさに、タクミ専用のパートナーだよ。大事に育てるんだぞ!」

「うん!分かったよ!それにしても、ソラ、詳しいね。」

「僕はこの世界最強のドラゴンだぞ!それくらい分かる!」

 うーん、最強ってのはあまり関係ないと思うんだけど。ソラって、実はびっくりするくらい長生きしてるんじゃないのか?いったい何才なんだろう?

「じゃあ、今回の遺跡攻略の褒美として、ひとつの質問に答えるぞ!何が知りたいんだ?」

「それなら、ドラゴンの能力について教えて欲しい。前回は結局、ドラゴンの瞳のことしか分からなかったから。」

「そうだった?ドラゴンの能力についてね。まぁ、いろいろ出来るんだけど。それより、ドラゴンの瞳はもうかなり上手に使えるようになってるだろ?誰かの記憶が見えたりしたんじゃないか?」

「そういえば、ジルが病気で苦しそうな映像が見えたんだけど、どうも過去の映像じゃない感じだったんだ。あれも記憶を読むってことだったのかなぁ?」

「なるほどね。タクミは本当に、ドラゴンの瞳が使えるようになってるな。その映像は、起こるであろう未来の映像だよ。タクミが見たのは、ジルの可能性だ。」 

「可能性?」

「未来はひとつじゃない。何個もある中で起こりそうなものを見たんだ。俗に言う、予知ってヤツだぞ!予知までできるようになってるなんて、タクミは才能があるなぁ。」

「予知ができるようになってる?信じられないよ。」

「鍛えれば、意識して使えるようになるぞ!」

「そんなことできるようになるんだ!」
 ドラゴンってヤバいなあ。

「他の能力は、さっき見た変現だ。多くの種族は、ひとつの姿にしか変現できないのが普通だ。だが、精霊種の中には、そうではない者もいる。もともと、姿形の無い者が、ヒトらしく見せているだけだからな。自分の姿を自在に変えられるんだ。」

「ドラゴンも精霊種ってこと?」

「ドラゴンはドラゴンだ!どこにも属さない存在だよ。ドラゴンは特別だからね。どんな姿にでも変現することができるぞ!」
 ソラはそう言うと、ドラゴンの姿に変現する。
「これが真の姿。一番チカラを発揮できる形態だ。次にこれだ。」
 ソラは、ドラゴノイドに変現する。
「ヒトと闘う時に、この形態になることが多い。竜の鱗を身にまとったこの姿は、天然の鎧を着ているようなものだよ。鎧と違うのは、自由に変形可能だということ。僕の手を見ていろ。」

 すると、ソラの手が倍近くになり、鋭い爪が現れる。
「常に相手に合わせて変化できる。だから、武器や防具は必要ないんだ。」

 武器も防具も必要ない?ドラゴンって、本当に万能だな!

「そして、僕くらいになると、こんなこともできるようになる。」

 僕の見ている前で、ソラの形が変化する。子供から大人へ。そして、どこかで見たような顔に…。

「って!これ!僕だ!」
「そうだ!タクミになることもできる。ミライ、どっちが本物か分かる?」

「あい!分析するよ!」
 ミライの金色の瞳が光る。
「組成はまったく同じ。双子やクローン以上の存在。完全なコピー。タクミと同一の存在であることを確認しました。」
 いつものミライの口調とは、まったく違う。分析モードのミライだ。

「おっ!よく分かったな!賢いぞ!ミライ!」

「あい!」
 ソラに褒められて、ミライはとても嬉しそうだ。

 でも。僕の姿になるのは、やめてほしい。同じ人物がいるって、何だかちょっと気持ち悪い。

「ということで!今回のレッスンはこれだ!変現を特訓するぞ!覚悟はいいな!」

 えっ?覚悟ってなに?
 酷いことは無しでお願いしたい!
 が、そんなことは聞いてくれないよなぁ。

 僕の顔でニッコリ笑っているソラを見て、僕は覚悟を決めたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

処理中です...