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グランエアド王国編

92話 主人公、遺跡の秘密を知るー2

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 エアは、ハープの音に合わせて歌う。身体の中に響くような歌声。まるで、エア自身が、ひとつの楽器になったみたいだ。

 ハープの音とエアの歌声が響く。
 大地や空を震わせて、そして湖にも異変が起こる。

「湖の水が震えて、空中に浮かび上がってる?どうなってるんだ?」

 エアがいる祭壇の上空で、水の塊ができ、何かを形作っている。

 あれは!水の神殿?

 僕達が見ている前で、まるで中世ヨーロッパの教会のような神秘的な構造物が出来上がった。

「水なのに、空中に浮いてるぞ?どうなってんだ?」
 不思議そうな顔で、それを見つめるガルシア。

 すると、歌うのを止めたエアが叫ぶ。
「ここに階段が出来てるよ!中に入れるみたいだから、みんなも来てよ!」

 エアの言葉に従って、僕達は祭壇に向かった。

 恐る恐る階段を登る。見た目は水なのに、堅い感触がある。

「これって、どんな仕組みなんだろう?」
 不思議に思いながらも、構造物の入り口に到着する。

 扉には、ドラゴンの紋様がハッキリと見えた。

 ここで間違い無いようだ。
 が、扉を開ける前に、僕はドラゴンの瞳で危険がないかを確認する。
 前回の事もあるからね。開けたらトラップが発動!とかだと困るし。

 危険は感じない。
「じゃあ、開けるよ。」
 僕はそう言うと、ゆっくりと扉を開けた。

 扉の先にあったのは、中世の教会のような造りの部屋だった。床や壁一面には、豪華な装飾が施されている。天井がものすごく高い。窓にはステンドグラスのような装飾がはめ込まれている。
 外側は水で出来ているのに、室内は大理石のような材質だ。

 どうなってるんだ?
 違う空間に迷い込んでしまったような感覚がしたが、間違いではないことはすぐわかった。

 目の前にソラが現れたのだ。

「よぉ、タクミ!久しぶり!ここの仕掛けを見破るとは、なかなかやるな!後ろにいるのは、この国の王と従者にガンガルシアの王だな。あとは…、ドラゴノイドがいるじゃないか!おっ、タクミの保護者の双子もはじめまして!」

 ソラは僕達を見回しながら、
「僕が最強にして最恐のドラゴン、ソラだぞ!」
 と、自己紹介している。

「このちっこいのがドラゴンなのかい?」
 ソラの自己紹介にいち早く反応したのは、サーシャだった。

「ちっこいのって言うな!僕は強いんだぞ!」

「じゃあ、アタシと手合せ願うよ。ガルシア様、いいだろ?闘えば、理解し合える!ガンガルシアのおきてだからね!」

「いいぞー!サーシャ、頑張れよ!」
 軽いノリで、ガルシアが応じる。

 そんなんで、いいのか?!

「おっ!僕と闘いたいのか?いいぞー!だが、ちょっと待て。場所を作るから。」

 ソラも同じだった!なんて軽いノリ!

 ソラは部屋の中心にサクッと闘技場を作り、その周りに結界をはる。

「なにで闘う?僕は何でもいいぞ!最強だからな!」
 ソラの挑発のような発言にも、サーシャは冷静に対応する。
「じゃあ、アタシはこれだ。」
 そう言うと、サーシャの手には大きな大剣が握られていた。

「ドラゴンキラーだよ。ドラゴノイドの硬い鱗にも効果がある剣で、ガンガルシア王国最高の鍛治職人、サイゾウの作品だ!本物のドラゴンにも効くか、試させてもらうよ!」

 ソラとサーシャは、闘技場に移動する。

「タクミ。僕とサーシャの闘いをよく見るんだぞ!」




 闘技場の上で、サーシャはドラゴノイドに変現する。肌が竜の鱗に覆われ、まるで鎧をつけているかのようだ。

「姿形は子供だけど、アタシの中の何かが油断するなと告げている。最初から全開でいかせてもらうよ!」

「ほほぅ。僕のこの姿に油断しないとはな。ナメてかかってくるようなら、軽くひねってやろうと思ったが、お前、なかなか見所があるぞ。少し稽古をつけてやる。ほら、かかってこい!」

 かかってこいって言ってるけど、ソラは武器も持っていないし、変現もしていない。どうする気だ?

 よく見ていろというソラの言葉通り、僕は食い入るように2人を見る。

 サーシャは大剣を構えると、ソラとの距離をサッとつめ、剣をソラの頭上から振り下ろす。

 あんなに大きな剣を持っているのに、速い!このままじゃ、ソラが真っ二つになる!

 僕の心配をよそに、ソラは平然としている。
 そして、ガキンっ!!!
 剣を弾く音がする。

 えっ?ソラは武器も防具も持っていなかったはず!

「うわっ!あんなんアリかよ!」
 ガルシアが叫ぶ。

 ソラが素手で、大剣を掴んでいる。いや、正確には素手ではない。腕だけ、ドラゴンの鱗に覆われているのだ。

 鱗に覆われているとはいえ、子供の姿のソラがサーシャの大剣を片手で軽々と掴んでいる光景は、現実とは思えない。

「嘘だろ!サーシャは巨大なワイバーンも一撃で吹き飛ばすくらいのパワーの持ち主だぞ!」
 ガルシアも、この光景が信じられないようだ。

「くそっ!決して手加減している訳じゃないのに、ピクリとも動かない!どうなってんだい?しかも、ドラゴンキラーで傷ひとつ付かないなんて!」
 サーシャも、自分の状況が理解できないようだ。剣をひいて、ソラと距離をとる。

「ふむ。なかなかパワーはあるようだな。でもお前、少し力の使い方を間違えているぞ!僕が稽古をつけてやろう。次はこちらから行くぞ!」

 ソラはそう言うと、今度は全身に鱗をまとう。そして、サーシャとの距離をつめる。

「さてと、反撃開始だぞ!」

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