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グランエアド王国編

85話 主人公、王様?に会う

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 店のドアを開けると、きらびやかで奇抜な服が店中に置いてあるのが目に入る。

 目がチカチカする。すごいセンスだな。どういう人が着るんだろう?
 不思議に思っていると、その服を着たガタイの良い人物が現れる。

「ブランカの店へようこそ!だけど、今はちょっと忙しいのよ。後で来ていただけるかしら?」
 見た目は50代のおばさん。口調は女性のようだが、声がとても低い。

 男なの?女なの?
 僕が不思議に思っていると、リオンとシオンが親しげに話しかける。

「ブランカ、久しぶり!元気だった?」
「今日も素敵な服だね!僕達はエア様に会いに来たんだけど。」

「あら、リオンとシオンじゃない!相変わらず可愛いわね。エア様に会いに来たの?ごめんなさいね。いまエア様は衣装合わせ中なの。しばらく待っててくれる?」

 そう言うとブランカは、店の奥へ消える。

「仕方ない。しばらく待とう。」
「エア様は、舞台衣装優先だからね。気が済んだら、出てくると思うけど。」

 ブランカも気になるけど、 エア様って一体どんな人なんだろう?
 映像で見たエアリーは、とても可愛くて歌と踊りも上手かった。年は10代後半くらいに見えたけど。この世界の人の年齢って、よくわからないからなぁ。

「エアリーって何歳なんだろう?」
 思ったことをつい口にしていた僕の背後から、声がした。
「アイドルに年齢を聞くなんて失礼だよ!」

 振り向くと、ウサギ耳の男の子が立っていた。サクラとモミジくらいの年齢かな?男の子にしては、可愛い顔をしている。

「君はエアリーのファンなの?ごめん。そうだよね。何歳でも関係ないよね。エアリーは歌もダンスも上手くて、すっごく可愛いんだから。」
 そう素直に謝ると、
「お兄さんもエアリーのファンなの?すっごく可愛いってホント?」
 と、ウサ耳男子は興奮した様子で近づいてくる。

 んっ?近くで見るとこの子、どこかで見たような。

 すると、リオンとシオンが慌てた様子でこちらに寄ってくる。

「「エア様!!」」

 エア様?どこに?
 ここには、僕とミライとウサ耳男子しか居ないけど。

 まさか?!

「よっ!はじめまして!ボクがエアだ!君が噂の先祖返りだね?うわー、初めて見たよ。ちょっと変現して見せて!」
 ウサ耳男子が、どこかで聞いたような言葉を言う。

 反応が、リオンとシオンと似てる……。
 2人ともエア様が苦手って言ってたけど、それって似た者同士だから、話しづらいって事なのかな?

「はじめまして、エア様。僕はタクミと言います。王宮に泊めていただいて、ありがとうございます。」
 慌てて挨拶する。が、エア様は気にしてないようだ。

「そんな堅苦しい挨拶はいいよ。それより、その人工精霊ってどうなってるの?動きも自然だし、見た目も可愛いな。ボクには勝てないけどね。」と言いながら、ミライを撫でくりまわしている。

「いや~、やめてよ~。」
 ミライは迷惑そうだ。

「さすがジルだな。ボクにも造ってくれないかな?」
 そんな事をつぶやきながら、ミライを抱きしめるエア様。

「うん!抱き心地もいいね!」
 喜ぶエア様に、双子が注意する。

「エア様!ミライが人工精霊だってことは、秘密だから!」
「そうだよ!あまり大きな声で言わないように!」

「大丈夫だよ。ここにはブランカしかいないし。そうそう、やっとブランカが王宮に仕えてくれることになったんだよ。だから、ブランカにはバレてもいいだろ?」

「「えっ?ブランカが王宮に?」」
 驚く双子に、声をかける人物が現れる。

「そうなの!王宮に仕えたら、アースに連れて行ってくれるって言うから!」
 奥からブランカがやって来て、そう言う。
「エア様の依頼で、この衣装を作ったのだけど、アースっていう異世界にはこんな可愛い物がいっぱいあるって言うじゃない?ぜひ見てみたいのよ!」

 ブランカが手に持っている衣装は、日本のアイドルが着ているような制服をモチーフとした可愛い服だ。

「今度のライブ用の衣装だ。アースで見たアイドルの服が着てみたくて。ボクの描いたラフ画をもとに、ブランカが作製してくれたんだよ。」

 どんどん会話が進んでるけど、僕はある事が気になって話に入れない。

「あっ、あの!エアリーって、エア様なんだよね?でもエア様って、男の子?ってことは、エアリーも男の子?」
 思い切って、疑問を口にする。

「えっ?そうだけど?」
 それがどうかしたのって顔で答えるエア様。

「エアリーって可愛い女の子だと思ってた…。」

「可愛い?そうだよね!ボクってホント可愛いよね!ボクは可愛いから、アイドルやってるの!性別なんて関係ないよ!可愛いは最強なんだから!」

 僕にはよく分からない理由で、アイドルをやっているというエア様。

「タクミ。この世界には性別による区別は、もう無いんだよ。混血が進んで、見た目じゃ性別が分からない人も増えたからね。」
「エア様は、いわゆる男の娘ってヤツだよ!」

 男の娘?僕には分からない世界だ!

「エア様は可愛いから、なんでも許されるのよ!それに比べて私なんて…。」
 ブランカが、そう自分を卑下する。

「ねぇねぇ、ブランカって男なの?」
 ミライがサラッと言い放つ。

 ミライ!それは言っちゃダメだよ!
 僕も気になってたけど!

「だ~れ~が~、男だって~?」
 ブランカの逆鱗に触れたようだ。

 気配を察して、僕は素早くドラゴンの瞳を発動する。

「ブランカは正真正銘、素敵な女性だよ!ミライ、失礼なことを言っちゃダメだ!」と、ミライを叱る。

「ごっ、ごめん。タクミ。」
 シュンとなるミライ。
「ブランカ。ミライはまだ生まれたばかりで、思ったことをすぐ口に出してしまうんだ。ごめん。僕からちゃんと言っておくから、許してくれないかな?」
 そう謝る僕に、ブランカは大きな身体で抱きついてくる。

「いいのよぉ!私のことを一目で女性だってわかるなんて!貴方、女性を見る目があるわね!」

 ブランカは喜んでいる。
 が、痛い!痛いよ!
 ブランカは、力がとても強いようだ。

 ドラゴンの瞳を発動して良かったぁ。
 心からそう思う。

 ドラゴンの瞳で見たブランカの情報は、性別女性、ジャイアントオーガ族の血が強く発現。そして、20歳であった。

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