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フラルアルド王国編

79話 主人公、紋章システムを初めて使う

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 パートナーにミライという名前を付けてから数日後、紋章システムを使用出来るようになったとジルから連絡があった。

 セシルさまからシステム使用の許可が出たらしい。
 いつの間に連絡を取ってたんだ?

 ミライに名前を付けてから、ミライはますますご飯を食べるようになり、知能も少し上がったようだ。ジルが成長すると言っていたが、人工精霊ってそういうものなんだろうか?

「ジル!ミライを連れて来たよ!」

「おぅ!来たか!じゃあ、紋章システムに接続するからな。ミライ、こっちに来い。」

 パタパタっとミライがジルのところへ飛んで行く。産みの親だと分かっているのか、ミライはジルの言うことを良く聞く。

「良し!ミライ、認証開始してくれ。」
「あい!」
 ミライは元気良く返事すると、青と金の瞳が輝き出す。

「認証を開始します。しばらくお待ちください。」
 ミライが聞いたことのない口調で話している。ミライじゃないみたいだ。
「認証完了。システム接続に成功、正常に利用できます。」

「おっ!終わったな。ミライ、俺が分かるか?」
 ジルがミライに声をかける。
「あい!ジルだよ!」
 ミライの瞳が通常に戻っている。

「良し!成功だ。タクミ!これで紋章システムが使えるようになったぞ。これから徐々に使い方を覚えていけよ。まずは、そうだな。ダグザ茶を出してもらおうかな。」

「分かったよ。ミライ、僕とジルにダグザ茶を出して欲しいんだけど。」
 そう言う僕の言葉に、ミライが即座に応じる。
「あい!ダグザ茶だよ!」

 ミライの身体が光ったと思ったら、ダグザ茶が空中に出現した。

「おぅ!成功だな!」と言いながら、カップを空中でつかんで、ダグザ茶を飲んでいるジル。

 僕も飲んでみるが、少し苦い。

「タクミ!次からはもう少し、まろやかにするね。」
 ミライが僕にそう言う。

 あれ?僕、いま苦いって口に出してたかな?

 不思議に思っていると、ジルが解説してくれる。

「パートナー精霊は、タクミの感情も読み取ってくれるからな。お前はいま苦いなって思ったんじゃないか?ミライは、それを感じて発言したんだよ。」

「そんな機能もあるの?!」

「おぅ!俺とドグーは繋がっているから、それが普通なんだがな。お前とミライは別物だ。この機能を再現するのは困難だったが、上手く機能しているようだ。これでミライも、タクミの好みを覚えてくれるぞ。ただ問題があるな。」
 ジルはそう言って、ミライを抱きかかえる。

 そしてミライの身体を触りながら、続ける。
「モノを出すときは普通は左手の紋章が光るんだがな。ミライが光ってるのは困るな。どうしたものかな?」

「大丈夫だよ。ミライが常に左手の辺りに居たら、不自然じゃないよね?僕の左肩に乗ってるといいよ。」

「タクミがそれでいいなら、まぁ、それも有りか。」

「それとも、ずっとパートナー精霊を出している人ってあまりいないのかな?」

「いや、人それぞれだからな。パートナー精霊に依存してないヤツは、モノを出すときはだけだ。ずっと一緒にいることが普通になっているヤツは、常に具現化してるぞ。マサチカが手に持っていたクマのぬいぐるみは、マサチカのパートナー精霊だぞ。」

「えっ!そうなの?全然動かないから、気付かなかったよ!」

「あいつは、手に何か持ってないと不安なんだよ。」

 そうなんだ!意外だ。常に自信があるタイプかと思ってたよ。

「常に具現化してるヤツもいるが、同伴禁止の場所もあるからな。だから、透明化の機能を追加したんだ。この場所もそうだぞ。」
 ジルはそう言うと、エアリーのライブチケットを差し出す。

 えっ?これって?

「タクミにも協力してもらったからな。リオンとシオンにも渡しておいてくれ。」

「貰っていいの?これって入手困難なチケットなんだろ?」

「おぅ!いいぞ!残りの2枚はサクラとモミジに渡す予定だ!」

「ジルの分は?」

「俺のはいいんだよ。俺はな…。」
 そう続けようとしたジルが、咳き込み始める。

 ゴホゴホという咳は、ますます酷くなる。

「ジル!やっぱり病気なんだろ?」
 僕は思わず、ドラゴンの瞳でジルの身体を見る。

 内臓のいくつかに異変があるように見える。これは?

「ジル!臓器に異変があるね?石化?」
 僕は良く分かっていないが、感じた事を口に出していた。

「サスガ、ドラゴンですネ。」
 咳き込んで話せないジルの代わりにドグーが出現する。
「ジル、この薬ヲ飲んで。症状ガ一時的に緩和シマス。」

 ドグーは空中にカップを出現させると、ジルに飲ませる。

「ドグー、ジルの病気は治らないのか?」

「タクミ。ジルの病気ハ、ドワーフ族特有の病気デス。石バカリ相手にシテキタためダト言われテマスが、原因は不明デス。」

「原因が分からないって?」

「遺伝子異常ダト考えられてイマスが、コノ世界は混血バカリです。個人にアワセタ治療ガ必要ナノデス。一刻も早くスカラに連れてイク必要ガありマス。」

 ゴホゴホっというジルの咳が止まらない。そしてついに、血を吐く。

「タクミ!リオンとシオンに連絡ヲ。ジルをスカラに連れてイキマス!」

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