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フラルアルド王国編

75話 主人公、素材集めに同行する

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「テッショウ!少しスピード落として!ついていけないって!」

 僕は、今日、テッショウの素材集めについて来ていた。
 しかも、ここはどこの国にも属していない島。紋章システムが使えない場所だ。

 わざわざここへ来た理由は二つ。
 ここにしか無い特殊な素材が必要になったこと。そして、一般人用の広域型紋章システム改良品をテストするためだ。

 テッショウが腕にしている時計盤のような装置の中には、テッショウのパートナー精霊であるフワリが浮いている。

 時計盤のような場所に手のひら大の結界を張り、そこにだけパートナー精霊を発生できるように、改良したらしい。

 テッショウのパートナー精霊は、見た目は日本のお化けみたいだ。普段より小型になって、具現化している。

「テッショウ。タクミが困ってるよ。スピード落として~。」という、フワリの言葉でやっとホバーのスピードを落とすテッショウ。

「タクミ、ごめんッス!普段は、この島ではホバーは使えないから、ちょっと調子に乗ったッス!タクミが後ろにいるの、忘れてたッス!」

「僕こそ、ごめん。まだホバーに乗り慣れてないから。スピードが控えめなら、大丈夫なんだけど。」

 最初にジルのホバーに乗ったことで、速いスピードが少しトラウマになっている。自分でホバーを操作するようになって、少しは大丈夫になったんだけど。

 それにしても、このホバーって最高速度はどれくらいなんだろう?考えるだけで怖い。僕はアースでも安全運転だったからね!

「分かったッス。ゆっくり走るッス!目的地はもうすぐッスよ!」

 そう言うテッショウの後をついていく。今のところ、紋章システムは上手く使えているようだ。

 改良者のサクラとモミジによると、装置の中のフワリが見えなくなったら、紋章システムの使用をやめるようにと言われている。まぁ、パートナー精霊が居なくなったら、使えなくなるのは当然だけど。

「あっ!あそこが目的地ッス!」
 テッショウは、そう言うと崖の上から飛び降りる。

 ちょっと!そんなホバーの使い方は教えてもらってないから!

 僕はついていくのを諦めて、崖の上にホバーを止める。

 すると、「テッショウ、また暴走してた?もうついていけなくなったんでしょ?」と声がする。
「まぁ、あいつが暴走するのはいつものことだし。」

 リオンとシオンだ。僕の後ろからホバーでついて来てくれていた。

 紋章システムが使えない僕から離れるわけにはいかないと、2人はいつも僕の側にいる。

 でも、自分で出来ることは何でもさせてくれるし、今もかなり後ろで見守ってくれている。ホバーの操縦も教えてくれたしね。

「ウサ子とウサ吉はどう?」

 今日は2人もテストとして、腕に装置をはめている。

「大丈夫だよ。でも不思議な感じ。僕の腕にウサ吉がいるなんて。」
「こっちだって、ウサ子がいるよ。」

 こっちが本当のパートナー精霊だからね。不思議な関係だな。ホント。

 そう話していると、テッショウが戻って来た。

「タクミ。ごめんッス!」

「大丈夫だよ。僕が無理言ってついて来たんだから。テッショウは、テッショウの仕事をしてくれれば、問題ないよ。」

「そっちは問題なく終わったッス!きちんと回収できたッス!」

「さすが優秀な回収屋。仕事が早いね。」
 僕は感心してそう褒めるが、テッショウは照れたように、「自分なんて、まだまだッス」と言う。

「そういえば、テッショウはどうして回収屋になったの?ジルの弟子をやっていたってことは、改良家とか開発者を目指してたんじゃないの?」

「自分も最初はそう思ってたッス。でも、自分にはその才能が無いって気付いたッス。いつだったか、ジルと素材集めに行った時に、ジルから言われたッス。『お前は回収屋の方が向いてるかもな』って。」

「ジルに言われて回収屋になったの?」

「ジルに言われて、良く考えたッス。そういえば、自分で考えるより、頼まれたことをこなす方が得意だったなって。ファミリアにいた時も、自分は家族のお願いを聞いて動く方が多かったッス。でも、その方が早く動ける。自分は、目的がはっきりしてる仕事の方が向いてるって、やっと気付いたッス!」

「なるほど!だから、回収屋になったんだ。でも具体的にどんな仕事なの?」

「普段は国からの依頼を受けてるッス。自分はフラルアルド王国の回収屋ッス。だから、開発に必要な材料を集めることが多いッス。自分達、回収屋は、国からの依頼をこなすことが、仕事の報告になってるッス。だから、1年に1回以上は依頼を受けないと、紋章剥奪になるッス。」

「討伐者は討伐が仕事報告って、言ってたな。それと同じ感じなんだ?」

「そうッス!自分には回収屋があってるッス。回収屋は天職だと思ってるッス!」

 なるほどね。指示される方が好きなら、それを仕事にした方がいいよな。

 ホント、この世界の仕事は奥が深いなぁ、としみじみ思った僕だった。

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