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フラルアルド王国編

72話 主人公、開発に協力するー1

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「みんな集まってくれてありがとう。では、今から開発会議を始める。今回開発するものは、公開できない可能性の方が高い。それでも良いと言ってくれたメンバーを集めた。報酬は、エアリーのライブチケットだが、他にも欲しいものがあるなら、言ってくれ。俺に用意できるものなら、必ず用意すると約束する。だから、最後まで協力を頼む。」

 あれから、3日経った。メンバーが揃ったから開発を始めると、ジルから話があったので工房に来てみると、集まったメンバーはジルを除いて5人いた。

 造形家のジョセフィーヌ。
 精霊工学開発者のキノカ。
 結界研究家のマサチカ。
 紋様職人のアクネ。
 回収屋のテッショウ。

 全員、ジルの弟子だった期間があるという。

 ジルって、本当に面倒見がいいんだよな。見た目は頑固職人って感じなのに。

 ジルのチームに応募してきた人はいっぱいいたと、リオンとシオンが言ってた。久しぶりにジルがチームを作ることが、ウワサになっていたらしい。

 自分もそのチームに入りたいって思った人が大勢いたようだ。

 でも、今回は少数精鋭、かなり選抜したらしい。という事は、この人達はかなり優秀なんだな。

「まずは、今回の重要人物を紹介する。タクミ、こっちへ来い。」と、ジルが呼ぶ。

「このタクミは、先祖返りのドラゴンで、紋章システムが授かれなかったという、特殊な存在だ。しかも、異世界生まれで、この世界のことは良く分かっていない。俺は、このタクミ専用の人工精霊を誕生させて、広域型の紋章システムを開発しよう思っている。そのために、お前達の協力が必要なんだ。頼む。力を貸してくれ。」と、ジルが真摯に語る。

「公開できないものって言うから、余程のモノかと思いましたけど、まさにその通りのようですね。」
 そう話すのは、精霊工学開発者のキノカ。少し神経質そうな見た目の男性だ。

「エアリーのチケットが手に入るなら、オレは、なんでもやるよ!」と言うのは、見た目はイケメンそうなのに、格好が残念なクマ耳の若い男性。結界研究家のマサチカだ。丸渕メガネで、手にはクマのぬいぐるみを抱いている。しかも、着ている服には日本のアニメのような可愛い女の子がプリントされている。

「ワタシは、特に欲しいものはない。ただジルの作るものに興味があっただけだ。」
 そう冷めた感想を述べるのは、紋様職人のアクネ。姉御って感じの大人のお姉さんだ。

「自分はジルのためなら、何でもするッス!必要なものがあったら、必ず集めてくるッス!」と元気に話すのは、回収屋のテッショウだ。

 うわー、ジョセフィーヌ以外の人達も、キャラ濃いなー。

 でも、優秀な人達なんだろう。
 なんだか、自信に満ちあふれている感じがする。

「おぅ。お前達、ありがとな。絶対成功させてみせるぞ。それに別件だが、誰でも使える広域型紋章システムの開発も目処がついたんだな!このタクミの協力のおかげだ。」

 ジルには、金色のリブロスを渡してある。あの試作機を改良して、完成品を作る目処がたったようだ。サクラとモミジとも相談してたしね。

「で、この小娘達は誰なのです?」
 ジョセフィーヌが、サクラとモミジ、リオンとリオンを指差しながら、そう指摘する。

「こっちは、サクラとモミジ。俺の弟子達だ。今回は俺の助手をしてもらう。こっちの双子はリオンとシオン。タクミの保護者だ。」

「そうですか。ジルの弟子に、ドラゴンの保護者ね。分かりましたわ。私の邪魔はしないでくださいね。」

「おぅ!お前達の力が最も発揮できるような環境を整えることも、俺の仕事だ。何かあるなら、言ってくれな!」

 ジョセフィーヌの辛辣な言葉にも、誠実に答えるジル。
 この中では一番年上だから、命令するだけでも良さそうなのに。

 アースなら、ジルは人を雇って仕事をしてもらう社長のような立場だ。
 アースにいる社長の中には、"金を払って雇っているんだから、俺の言うこと聞けよ!"っていうワンマン社長も多いって聞いたことがある。
 でもここは、お金という仕組みがない世界だ。ここで人を集めるために必要なのは、人望だって言ってたな。

 俺の言うことを聞けよっていう社長より、個々の力が発揮できるような環境を作るよって言ってくれる社長の方が、僕は好きだ。

 アースにいる時は、お金のために好きでもない仕事をするのが、普通のことだと思っていた。

 でも。
 この世界では、そんな仕事はしなくていいんだ!

 これが、お金という仕組みが無くなった世界の仕事なんだ。

「良し!じゃあ今から、開発するモノの詳細と個々の役割を説明する。良く聞いてくれな!」
 ジルはそう言って、詳細を話し出した。
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