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フラルアルド王国編
71話 主人公、休養をとる
しおりを挟む眼が覚めると、もう朝ではなかった。
そんなに寝たかな?そう思いながらリビングに降りていくと、リオンとシオンが本を読んでいた。
あっ、遺跡で手に入れた古文書だ!
古代文字で書かれているから、読めないって言ってたのに。読めるようになったのだろうか?
「タクミ、おはよう。もう昼だよ。よく寝てたね。昨日はいろいろあったから、仕方ないけど。」
リオンがそう言いながら、ダグザ茶を出してくれる。
僕の好みを覚えてくれたのか、とても飲みやすい。
「何か食べる?僕達はもう食べたからね。タクミは何が食べたい?」と、シオンが聞いてくる。
リオンとシオンは、1日2食の生活をしている。1日3食なのは、子供の頃だけらしい。成人後は、それぞれの体調にあった回数になるのが一般的だと教えてもらう。
「なんでもいいよ!今日もオススメがあれば、それをお願い!」とシオンに返事をする。
ドラゴンの僕は、食べても食べてもお腹が空くので、1日3食、用意してもらっている。
毎食、双子のどちらかが、紋章システムから食事を出してくれる。栄養のバランスが取れているし、見た目もキレイだし、とても美味しい。
毎食、ウサ子とウサ吉が、食事人気ランキングから、僕の好きそうな食事を選んでくれていると言っていた。
ホント、この世界って最高だなぁ。
何を食べようか悩まなくてもいいんだから。
アースで働いていた頃の僕は、毎食コンビニのおにぎりでも大丈夫なくらい、食に興味がなかった。食べられるなら、なんでも同じだ、と思っていたけど。
「はい。今日のオススメは、サマラ料理だよ。日本の和定食に似てるから、食べやすいと思うよ。」
シオンが出してくれた料理は、とても美味しそうだ。
「いつもありがとう。いただきます!」
僕はリオンとシオンに感謝して、食べ始める。
「タクミって、ホント食べっぷりがいいよね。そんなに食べるようになったのは、ドラゴンだと分かってからなんだよね?ドラゴンって、みんな、食いしん坊なのかな?今度、ソラってドラゴンに聞いてみてよ。」と、リオンが言う。
「ほぅだね。ひぃてみるよ。」
「タクミ、物を口に入れたまま、返事しないでよ。行儀が悪いよ。」
あっ、ごめん。ゴクン!っと。
「そういえば、2人は何してたの?ソラにもらった本を読めるようになったの?」
「ジルが、チームのメンバーが揃うまでは、やる事がないって言うからさ。分かりそうな部分だけ、読み解いていたんだよ。」
「読めるの?」
「タクミ、僕達はグール研究者だよ。古代文字だって、少しは読めるよ。それに、そろそろ新しい研究成果を公開しなくちゃね。紋章システムが、使えなくなると困るし。」
この2人は、自分の仕事の成果を積極的に公開するタイプではないようだ。
ジルとは正反対だな。
ジルは頻繁に公開するタイプだ。
だからランキングの上位にいるのかな?
いや、それだけじゃない。
やっぱり、優れたモノを公開してるってことが重要だよな。
「リオンとシオンは、ランキングにのりたいとか思わないの?」
「「全然!!」」
「グール研究に興味があるヤツなんて、ほんの一握りだよ。僕達は、後世の人達のために、この研究をやってるの。ランキングのためじゃない。」
この世界の仕事って、ホント人それぞれだ。
朝から晩まで、それこそ眠るのも惜しんで仕事をしている人もいるし、一年のほとんどを趣味に費やして、仕事をするのは、年に数日という強者もいるらしい。
ランキングにのることを目標に活動している人もいるし、その反対に、ヒッソリと活動している人もいる。
アースでは、仕事ありきだからね。みんな、仕事に合わせた生活をしている。
でも、この世界では人が優先。その人それぞれに合った仕事ができるような仕組みなんだ!
いい世界だな!
そんな事を考えながら食べていた僕は、あっという間に食べ終わる。かなりの量があったのだが。
「ごちそうさまでした。」
僕がそう言うと、シオンが食器を片付けようとする。
それを見ていた僕は、「前から思ってたけど、食事を出したり片付けたりする仕組みはどうなってるの?」と、シオンに聞く。
「あぁ?これ?食器とかは、紋章システム内にある素材を素にして、再構築させてるんだよ。片付ける時は、その反対。素材別に分解させてるんだ。だから、食器を洗ったり、残飯というゴミが発生することはないよ。」
「洗わなくていいし、ゴミも出ないなんて、ホント便利だね。環境にもいいし。」
「でも逆に、素材がないモノは出せないからね。紋章システムは、公開されたデータとそれを構成する素材、その2つが揃わないとダメなんだ。」
「えっ?じゃあ、人気がある食材とか素材は無くなったら、売り切れ!って感じになるってこと?」
「そうだよ。だから、開発者の多くは貴重な素材を集める回収屋をチームの一員にしているよ。回収屋はね、討伐者と同じで、特別な仕事なんだよ。」
「そうか。回収するだけの仕事は、創造的な仕事とは言えないよね?」
「でも、重要な仕事なんだよ!」とリオンが力説する。
「たぶん、ジルのチームにも呼んでるはずだから、興味があるなら、いろいろと話を聞くといいよ。」
そうだね!そうしてみよう!
今日も、この世界についての新たな情報を知ることができた僕は、素直にそう思った。
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