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フラルアルド王国編
59話 主人公、弟子に会う
しおりを挟むあれから僕達は、ジルの工房に場所を移していた。そして、ジルの弟子だというサクラとモミジを紹介される。
「この2人は成人したばかりだが、どちらも閃きっていう才能がある。きっと、俺には考えもつかないようなモノを開発するに違いないと思って、弟子にしたんだ。」
「はじめまして!サクラだよ!親方のようなスゴイ改良家になるのが、夢だよ!」
「ウチの名前はモミジ!ウチは発明家になるために、ここにいるんだよ!親方の所には、いろんな人がくるからね!」
「はじめまして。僕はタクミって言います。しばらくお世話になるから、よろしくね。」
元気な女の子2人に挨拶する。
「タクミ、いまこの2人には高出力のリブロスを開発してもらってるからな。たまに爆発が起こるから、気をつけろよ。」と、ジルが何でもないことのように言ってくる。
んっ?爆発って?
「おぅ、俺の工房が森の中にあるのは、これが原因だ。リブロスの加工には、細心の注意が必要だからな。少しの刺激ですぐ爆発しちまうんだよ。」
そんな危ないモノの開発を、こんな若い女の子にやらせてるの?大丈夫なの?それ?
「タクミ、紋章システムには、防御結界能力もあるからね。危ないときは、身体を覆うように結界が発生するから、大丈夫だよ。」と、リオンが説明してくれる。
「サクラ、モミジ。このタクミは異世界で見つかった先祖返りのドラゴンだ。この世界のことは、良く知らないからな。教えてやってくれよ。」
ジルが2人にそう話す。
異世界生まれとか、先祖返りのドラゴンとか、話しても大丈夫?
「俺の弟子になるときに、守秘の約束をしてるからな。この工房で知ったことは、俺の許可無しで公開できないってことになってるぞ。」
でも、そんなのわからないよね。仲の良い友達とかに言っちゃうとかあるよな。僕がドラゴンだってことは、あまり知られなくない。ドラゴンだからって、変な研究されたら困るし。
そんな僕の心配に、「タクミ、守秘の約束は精霊同士でするから、絶対だよ。安心していいよ」と、シオンが教えてくれる。
そうか、誰かに話すにしても、公開するにしても、精霊は常に一緒だからね。約束を破ったら、すぐにわかるようになってるんだ!この世界では、犯罪が起こらないというより、起こせないような仕組みなんだな!
「警察のお仕事が減っていいね」という僕の感想に、「「警察って何?」」と、サクラとモミジが聞いてくる。
「えっ?悪い人を捕まえたりする組織のことだけど?」
「タクミ!この世界には警察なんて無いよ!」とサクラが言う。
「そうそう。悪い人っていうか、何か他の人に害を与える人は、本人の精霊が捕縛するからね。」とモミジが説明してくれる。
「捕縛って、具体的にどうなるの?」
「捕縛用結界が発生して、王宮関係者が来るまで、結界の中だよ。」
「じゃあ、王宮の人は大忙しだね。」
「「えっ?そんなこと、滅多に無いよ!」」
サクラとモミジは、見事にハモって答える。
まるで、リオンとシオンのようだ。仲の良い2人なんだな。
「精霊がいるからね。他の人に暴力を振るう人は、そうなる前に精霊が止めてくれるよ。」
精霊って、なんて便利なんだ。僕にも精霊がいたら、ドラゴンに変現するのも、上手く手助けしてくれるのだろうか?まだこの世界に慣れてないから、助けてほしいよ!
「あっ、そうそう。タクミは紋章を授かれなかった珍しいヤツだからな。2人共、タクミを助けてやってくれよ。」
ジルの言葉に、サクラとモミジは、なんて可哀想な!っていう顔で僕を見る。
こんな若い子達に、哀れみの目で見られるなんて。
もしかして?
紋章が無い人を見ると、みんなこんな感じになるのか?
それは、勘弁してほしい。
ジル!早く開発してほしいです!と強く思った僕だった。
「で、親方がタクミを紹介したってことは、何か新しいモノを作るつもりなんだよね?」
「タクミがドラゴンだってことと関係してるんでしょ?ウチには分かるよ!」
「おぅ。タクミは紋章が無くて不便だからな。それに代わるものを作ってやろうと思ってな。」
「「やったぁ!久しぶりに親方の作品が見れるよ!」」と、2人共、大喜びだ。
「昔、作った広域型紋章システムの試作機を改良するつもりだ。そういえば、お前達もこれの仕組みは、知らないな。サクラとモミジにも、教えてやるから、何か気になった所は指摘してくれ。」と、ジルは何でもないことのように言う。
が、僕はジルの言葉に、ものすごく感心していた。親方って呼ばれていたから、一方的に教えているだけかと思ったのに。ちゃんと、対等な相手として、意見を求めるんだ!
日本の会社じゃ、考えられないよ!
特に昔ながらの会社だと、部下にまともに教えようともせず、仕事は見て覚えるものだ!上司に意見するな!って感じなのに。
なんて、いい職場なんだ!
僕は素直に、ジルと弟子達の関係を羨ましく思ったのだった。
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