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セシリア王国編

44話 主人公、国の成り立ちを聞くー2

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「そして、ついに紋章システムの開発に成功し、この島で、実用試験を繰り返した後に、難民の受け入れを開始したんだよ。」

「はじめは、国を作ろうなんて思ってなかったんだ。研究の結果、大いなる呪いに呪われてる者は、紋章システムが使えないっていうのは、早い段階で分かっていた。だから、セシルさまは、まずは、その呪われし者を見つけたい、と思ってはじめたんだ。その頃は、呪われし者がエレメンテ中に、何人存在するかは、分かってなかったからね。」

「セシルさまは、呪われた存在を前から知ってたってことだよね。」

「「そうだよ。」」

「だって、セシルさま自身が、その呪われた存在だからね。何度、転生してもそうなんだって。」

「大商人としての情報収集で、エレメンテには、同じような人が何人かいるようだ、というのはわかっていたんだ。」

「呪われし者は、いつも何かのズバ抜けた才能がある。戦争が多い時代だったから、その人達の才能は戦争に使われていたんだ。イリスのような、人を魅了する能力をもった人を利用して、大勢を兵士として戦争に行かせた国もあった。」

「セシルさまの開発の才能も、戦争に使われていたら、今頃、エレメンテは人が住めない不毛の世界になっていたと思うよ。」

「なんで、戦争なんかあるんだろう?」
 戦争を体験したことのない僕は、戦争について何も分からない。戦争を起こす人の気持ちも、全然理解できない。

「そうだね。後世の人が見たら、戦争は愚かなものだろう。だけどね。いま現在、戦争をしている人にとっては、愚かでも何でもないんだ。」

 どういうこと?

「ドゥイガーン王国のことは、知ってるね。ドゥイガーンの国民は、本当に国を良くしよう、子供達を守りたいって純粋な気持ちで戦争を始めたんだ。ドゥイガーンの王様もそうだよ。」

「そして、侵略された国の国民もそうだ。国を守りたい、ただそれだけの気持ちでドゥイガーンの兵士達と戦った。」

「世の中にはね。絶対の悪も絶対の善もないんだよ。それこそ、アースで会ったサヤカのようにね。」

 北条サヤカ?陽子ちゃんをイジメてた張本人。でも、サヤカも母親からしつけと言う名のイジメを受けてた。

「人の世は、そういうものなんだ。戦争を始めたから、この国が悪い!で終わるものじゃない。戦争をする理由が必ずあるんだよ。」

 そうか。サヤカが陽子ちゃんをイジメてたのは、母親からクラスで一番の成績を強要されてたから。トラウマで母親に逆らえないサヤカは、陽子をイジメることで自分を保っていた。

「人はね。ダメだと分かっていても、してしまう愚かな生き物なんだ。日本には、法律というものがあるよね。法によって国を治める、法治国家だ。でも、全部の法律を守ってます!って日本人はいないでしょ?」

「僕は犯罪をしたことはないよ!」

「じゃあ、赤信号を渡ったことないの?止まれの標識で止まらずに行っちゃったことあるでしょ?」

「それは…、ありますけど。」

「決まりだからダメだって、わかってても、車来てないから、とか、警察いないから、とかだと、赤信号無視することあるよね。」

「僕達に言わせれば、戦争もそれと一緒。戦争はダメだって、わかっているけど、いろいろ理由をつけて戦争を起こすんだ。」

「ドゥイガーンの場合は、食糧難がその理由だよ。」

 信号無視と戦争を同じように語って欲しくないですけど!

 ドゥイガーンの王様は、もっと複雑な理由があって戦争を起こしたのかもしれないけど、後世の人から見たら、そんな捉え方になるのかも。

 でも僕は断固戦争反対です!

「セシルさまが、呪われし者を探してた本当の理由は、それだったんだよ。」

 それ?

「呪われし者には、特別な才能がある。戦争に利用されれば、戦争がもっと酷くなる。それを防ぎたいって思いがあったんだ。呪われし者を、出来るだけ早い時期に保護して、利用されないようにするために。」

「いまエレメンテに王国が7つあるのも、それが理由だよ。」

「呪われし者は、必ず何かの才能がある。そして、利用されやすい。誰に利用されると言えば、それは時の権力者だ。何らかの権力を持った人は、自分の都合が良いように、誰かを利用するからね。それをさせないようにするにはどうしたらいいか?」

 まさか?

「だから、王様なんだね!王様より偉い人はいない。王様を利用してやろうって人は、そうはいないから!」

「「正解!!」」
 僕の答えに、双子は満足そうに笑って、そう答えたのだった。

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