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セシリア王国編
43話 主人公、国の成り立ちを聞くー1
しおりを挟む「それにしても、タクミが呪われし者だったなんて。」
「いや、まだ確定した訳じゃない。だから、その辺りは上手くごまかして、説明しよう。」
「うん!そうだね。まだ分からないよね。でも、出来ればタクミには幸せになってほしいよ。」
双子の密談は、タクミのいないところで、こうして終了した。
リオンとシオンは遅いなぁ。部屋で少し待っててって言うから、待ってるけど、まだかな?エレメンテには、スマホもパソコンもないから、こういう時間に何をしていいのか、わからない。
テレビも無いし。紋章システムが使えないって、もしかしたらアースにいる時より、すっごく不便になったってことか?紋章システムみたいな便利なものがある異世界に移住するなんて、それもいいかもって思ってたんだけどなぁ。
でも、まだ確定した訳じゃないって言ってたし、望みは残されてるよな!
「「お待たせ!!」」
リオンとシオンが入ってくる。
セーラー服で、メガネをかけている。
何?その格好?!
リオンはまだ分かるけど、シオンもセーラー服って!似合ってるけど!それもどうなのよ!
「今から、いろいろと教えることがあるから、雰囲気だそうと思って。」
「学校気分でいいでしょ!」
いや、僕が学生だったのは、ものすごく昔だよ!童顔だから、たまに学生に間違われることもあったけど…。
そんな僕の感想など気にしない素振りで、2人は僕の前に立つ。そして、ウサ吉、ウサ子をそれぞれ呼び出すと、紋章から、黒板と椅子まで呼び出す。
やっぱり、便利な道具だよね。でも、どういう仕組みなんだろう?黒板みたいな大きな物も出てくるなんて、魔法か?
「「さぁ。では、授業をはじめますよ!」」
僕を椅子に座らせると、双子は嬉しそうな声でそう宣言し、謎の授業が始まった。
「タクミが参加したライルのラートルで学んだのは、エレメンテの歴史基礎だったね。」
「はい。紋章システムが開発されることになった経緯を聞きました。」
なんだか、先生のようなしっかりした口調に、僕の受け答えも敬語になってしまう。
「では、紋章システムが開発されて、セシリア王国が出来上がったところまでだね?」
「はい。その後、紋章システムが使えない人が7人いることが分かって、7つの国ができたって、ライルは言ってたけど。」
「そうです。いまのエレメンテには、7つの王国があります。最初に出来たのは、セシリア王国。最後に出来たのは、ガンガルシア王国だよ。」
そうなんだ!その辺りは、聞いてないな。
「まずは、王国が出来た経緯を話すよ。これは、一般の人は知らない知識だからね。他の人に話しちゃダメだよ。
500年以上前、セシルさまは転生を繰り返すうちに、かなりの土地を所有していたんだ。そして、そこに自分の研究所を密かに作って、知識と資金を貯め込んでいた。その研究所の守り主がエルだ。セシルさまは、前世の記憶が蘇る度に、この研究所に戻ってきて、エルと共に研究を進めていた。」
「何の研究をしていたんです?」
「セシルさまの目的は、ただひとつ。このエレメンテの大いなる呪いを解くための研究だ。」
「セシルさまは、どうして呪いがあるって知ってたんだろう?」
「僕達には詳しく教えてくれないけど、グールという存在が怪異を造る、っていうことを前から知っていた感じなんだよ。」
「その頃のセシルさまは、グールや怪異の情報を効率的に集めるために、表向きは商人をやっていたらしい。でも、研究所での研究の成果で、便利な道具を作っては売るから、ドンドン店が大きくなって、結局、エレメンテで一、二を争う大商人になったんだよ。」
「転生者としての知識もあったから、どこで何が売れるか熟知してたんだ。」
「いろいろな国に生まれた事があるからね。その知識があれば、簡単だったと思うよ。」
「どういうこと?」
商売に詳しくない僕は、よく理解ができない。
「他国で物を売ろうと思ったら、ただ便利なだけじゃ売れないんだよ。その国にあった製品に改良しないと、爆発的な人気は出ない。」
「タクミ、セシルさまの好きな言葉だよ。」
「あっ!郷に入っては郷に従え、ってこと?」
「「正解!!」」
「そうして、かなりの資金を貯め込んだセシルさまは、このセシリアを空に浮かせたんだよ。」
「空に浮かせた?」
「そう。セシリアの大きさは、タクミに分かりやすい表現で言うと、マダガスカル島くらいの広さだよ。」
「マダガスカル島?」
僕の顔を見たシオンが不思議そうな顔をする。
「知らないの?なんで異世界人の僕の方が知ってるんだろう?アース人って勉強しないのかなぁ?」
失礼だな!君達より、いっぱい勉強したよ!でもほとんど社会では役にたたないけどね!微分積分とかって、役に立つ日がくるのかなぁ?
「アフリカ大陸南部の東にある島だよ。国土面積が、日本の1.5倍なんだ。」
「そんな大きな島を浮かせたってこと?どんな仕組みなんです?」
「「それは秘密!!」」
双子がきれいにハモる。でも、なんだか表情が変だ。あやしい。
「もしかして、知らないんだな!」
僕の指摘は合っていたようだ。双子は、僕達も教えてもらってないんだ、と言う。
「あの頃のセシルさまは、大商人であり、様々な開発をする発明家でもあったからね。研究や命を狙われてた。だから、研究所があったこの島を空に浮かせたんだ。」
「もともと、この島は無人島だしね。都合がよかったんだよ。」
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