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セシリア王国編
26話 主人公、ファミリアに向かう
しおりを挟む扉から出ると、大自然が広がっていた。見渡す限り、草原。遠くに山並みが見える。気候は穏やかで、ちょうどいい気温のようだ。
「ここセシリア王国は、一年中、日本の春と同じような気候じゃ。気温は高いから、どちらかと言うと夏に近いがな。」
「自然がいっぱいで、いい場所ですね。」
「あっ、お姉ちゃん見て!綺麗なお花が咲いてる!」
「うん!ここの精霊達は穏やかで華やかな感じだね。」
それぞれが口々に感想を言う。
が、僕達の感想に返事もしないで、「では、行きますよ。ファミリアはすぐそこです。」と言いながら、エルはどんどん先に歩いて行ってしまう。僕達は慌てて、エルの後を追った。
草原の先に、木が生い茂っている森のような場所があった。エルはそこへ入っていく。
「エルーっ!待つのじゃーっ。我、もう歩けない…。」
セシルがどんどん離されていく。が、エルの速度は落ちない。
「マスターは、運動不足です。少しは歩いてください。こんなことでは、特訓が必要ですね。」
おぉ!珍しくエルがセシルに厳しい!いつもは、何でも従ってるイメージなのに。
「ファミリアに帰ってきましたので、私は、従者から指導者に変わります。厳しくさせていただきますよ。」
エルがビシッと言う。
指導者って先生のこと?エルが先生になるの?こんな先生イヤだよ!怖いよ!セシルも、イヤそうな顔をしていた。
「さぁ、ファミリアが見えましたよ。」
森を抜けた先に、その建物はあった。
「うわーっ!すごい大きい!ねぇ、お姉ちゃん!」
「うん!しかも綺麗な建物だね!」
その建物は広大な敷地に建っていた。同じような建物が5つ。ちょうど五角形になるように、配置されている。その建物に囲まれた場所は中庭のようになっている。中庭といっても、かなりの広さだ。
普通にサッカーとかできそうだなぁ。サッカーとかってこっちの世界にもあるのかなぁ?僕は想像以上の光景に、ちょっと的外れなことを考えていた。
建物の周りには、用途がわからない学校のような大きな建物がいくつか建っている。
「この5つの建物がファミリアと呼ばれる施設じゃ。1つの建物には約50人が生活しておる。全体で250人じゃな。周りの建物は、田中達に分かりやすく言うと、実習棟といったところじゃな。様々な体験ができる施設じゃ。」
セシルが説明してくれるが、頭に入ってこない。すると、向こうから、エルが誰かを連れて歩いてくる。
エルは、もう先に行ってたんだ!
ここの人かな?
優しそうな男の人。ぱっと見は普通のヒトだが、お尻の辺りで何かが動いている。トカゲの尻尾のようなものが見えた。だが、ここはエレメンテ。こんなことで驚いていてはいけないな。
その人がセシルとトールに話しかける。
「セシルさま、トール様。お待ちしておりました。今回は視察ですか?滞在ですか?」
視察?滞在?何を聞いてるんだろう?
「我はアースで疲れたからのぅ。今回は視察で…。」
セシルが言いかけた途端、エルから否定の言葉が出る。
「視察では無く、滞在です!」
エルの言葉を聞いた男性は、「そうですか。」と一言言うと、にっこり笑って続ける。
「それじゃ、自分たちのホームに行こうね。セシル、トール。おかえり、待っていたよ。」
「はい、ただいま。ライル。しばらく滞在しますから、よろしくお願いしますね。さぁ、セシルねえさま。行きますよ。」
トールはそう言うと、セシルの手を引き、建物へ歩いて行く。
「いやじゃーっ!我は視察じゃと言うておるーっ……。」という、セシルの悲鳴が聞こえるが、誰も気にしていない。
「さてと。こちらはアースからのお客様だね。はじめまして。僕の名前はライルと言います。シルフの姉妹とドラゴンだね。」
「あっ、はい。はじめまして、田中拓海と言います。」
「坂本陽子です。こっちは妹の月子です。」
それぞれ、自己紹介する。
「アースでの呼び名だと分かりづらいからね。タクミ、ヨーコ、ツキコ、って呼ぶことにしようか。3人は僕についてきて。この施設を説明するから。」
にっこり微笑むライルは、とてもいい感じの青年だ。
ローグさんも紳士だったけど、ライルさんも好青年って感じだな。セシリア王国に行くことになって、不安だったけど、これなら大丈夫そうだ。
「それと、リオン、シオン。君達は大人用の施設でいいよね。前みたいに子供達のホームに無断で泊まらないように!」
「「はいはーい、了解です!」」
おっ、双子が素直に従ってる。珍しい!
「では、ライル。頼みましたよ。私はやる事がありますので。」と言うと、エルはさっさと行ってしまう。
「じゃ、僕達も行くね。」
「あっ、ヨーコ、ツキコ。ライルに気を付けろよ。」
リオンが陽子と月子に注意をしている。しかも、2人にだけ?
???
ライルさんって好青年だよ。何に気をつけるんだろう?
「さぁ。では、僕の後についてきてください。」
疑問に思いながらも、僕と陽子と月子はライルの後をついて行くしかないのだった。
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