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アース編
セシルさまのお悩み相談室 【本日のお題 いじめ】
しおりを挟むタクミ
えっと、今日はセシルさまに来てもらいました。イジメについて、セシルさまの意見を聞かせてもらおうと思います。
セシルさま、よろしくお願いします。
セシル
うむ。よろしくなのじゃ。
タクミ
では、早速ですが、アースでイジメを無くすには、どうしたらいいですか?
セシル
そうじゃな。難しい質問じゃ。
アースにはいま、◯◯ハラスメントが多く溢れておるな。ハラスメントとは、《嫌がらせ、イジメ》のことらしいのぅ。らしいというのは、我、アースの言葉は日本語しか分からないのじゃ!
タクミ
意外です!見た目だと、英語とか話せそうなのに!
セシル
生まれも育ちも日本!っていう設定なのじゃよ。エレメンテでは精霊が媒介してくれるから、言葉を覚える必要がないのでな。言語は苦手じゃ。それに、いまのエレメンテはエレメンテ語という共通語が使用されておるのでな。他の言語を覚える必要がなかったから。
と、話が逸れたのぅ。
イジメと言えば、我はな。『自分がされて嫌なことは、他人にしてはいけません!』とエルにキツく言われておったからのぅ。自分で気を付けておるのは、その事だけじゃ。
タクミ
確かに、これはしてはいけませんって教えられてないことは、普通にしちゃいますよね。自分がされて嫌なこと、なら、自分が基準になるからね。ある程度は、しなくなると思いますけど。それこそ、人それぞれじゃないですか?
セシル
そうじゃ。自分が経験しないことは分からないっていう人が多過ぎるのじゃよ。
例えば、我は転生で、男にも女にもなった事があるが、妊娠出産した時の壮絶な体験は忘れられないぞ。
タクミ
うわー。その姿のセシルさまから、妊娠出産って言葉は聞きたくなかったです。
セシル
つわり、というのがあるのじゃが、これは体験したことがない者には理解してもらえないことが多い。我、つわりが酷い時に、『つわりくらいで家事をしないなんて、お前はダメな女だ!』と言われてのぅ。殺意を覚えたぞ。
それからは、男に転生した時は特に妊婦に優しくするようになったんじゃよ。
ちなみにその言葉を言ったのは、その時の我の義姉じゃよ。自分は経験したことがないから、分からなかったのじゃろうがな。
◯◯ハラスメントや子供のイジメの加害者は、だいたいこのタイプじゃ。
タクミ
体験してるから、理解できて、気をつけるようになった。
一方、体験していない人は理解できなくて、傷つけるような言葉を使ってしまう。
ということですね。
セシル
◯◯ハラスメントと名前を付けることによって、こういうことを気にする人もいますよ、という警鐘にはなる。気を付けるようになれば、嫌な思いをする人は減るじゃろうが、ひとつ問題があるのぅ。
タクミ
何です?
セシル
言葉狩りのように、ドンドン広がっていくじゃろうな。どんな事にも、嫌だと思う人は一定数いる訳だからのぅ。
タクミ
そうですね。この物語は不快だ!読むに値しない!掲載するのを止めろ!と思う人もいるでしょうね。
セシル
自虐がスゴイのぅ。
まぁ、嫌だと自分の意見を言うことは重要じゃ。
例えば、太っていることを気にしている娘がおったとする。だが、皆の前で揶揄われたときに、やめて下さいと言えず、愛想笑いをする。大人の社会では良くあることだろうが、この対応はダメだ。相手は、嫌がってないなと思ってしまうからじゃ。それを、その娘はセクハラされた、とか、イジメられたと後で言い、相手はお前嫌がってなかったじゃん!とキレるのじゃろうな。
タクミ
キレるかどうかは分かりませんけど。
日本人は、良くも悪くも謙虚ですからね。やめて下さいって言って、場の空気が悪くなるのはイヤですし。
セシル
我の意見を言うなら、そこで我慢して愛想笑いしたなら、ずっと我慢しとけってことなのじゃよ。嫌ならイヤですって言わないと!
タクミ
セシルさまの言うことも分かりますけど、現実には難しいですよ。例えば、それが会社の上司だったら?クラスで一番派手な集団の子達だったら?
怖くて無理ですよ。
愛想笑いでやり過ごす方法しか考えられないです。
セシル
だから、言葉狩りのような◯◯ハラスメントが増えていくのじゃよ。まぁ、そのうち、時代や文化、大多数の意見などで、増えたり減ったりしていくだろうな。
じゃが、やはり、嫌なことはイヤと言うことが一番重要だぞ。何事もそこから始まるのじゃ。助けてって言わないと、誰かが助けてくれることはないのじゃよ。
◯◯ハラスメントも、誰かがイヤだと言ったから、そういう名前がついたのじゃからな。
タクミ
じゃあ、嫌だと言えない子はどうしたらいいですか?
セシル
誰かに、一人でもいいから、自分の気持ちを話すことじゃ。自分の気持ちを誰にも伝えていないのに、誰にも分かってもらえないって言うのは卑怯じゃよ。
自分の気持ちを言わなくても、相手に分かってもらえる。そんな都合の良いことは、アースでは絶対に起こらない。
タクミ
エレメンテならあるってことですか? そうか!精霊なら言わなくても分かってくれるのですね。
セシル
そうじゃ。本人以上に気持ちを理解しておるからのぅ。こういうことがあった場合は、こういう対処をする、と蓄積された経験から導き出して、対応しておる。
例えば、シオンのストレスが溜まった時は、リオンの精霊〈ウサ子〉が、必ずハーブティを入れる。
リオンは、何かあると、シオンの精霊〈ウサ吉〉に何時間も愚痴を言い続けるし。
ノアの場合、どうしても剣が握りたくなった時は、ノアの精霊〈鬼丸〉と地下にある鍛錬場で、斬り合いをしておる。
タクミ
へえ。精霊って何でもしてくれるんですね。
セシル
ストレス発散の手伝いをしてくれるのじゃよ。
シオンのハーブティを入れる、は誰でも出来るかもしれないがのぅ。リオンの愚痴を何時間も聞くのは、ただの人には結構苦痛じゃよ。同じ事を何度も何度も言うのだから。でも、ウサ吉はそれを嫌がらずに、何時間も、『そうですか、そんな事があったのですか』と上手く相槌を打ちながら、聞いてくれるのじゃよ。
タクミ
いいなぁ。アースにも精霊みたいなメンタルケアをしてくれる存在がいたら良いのに。
セシル
そうじゃな。我は、このアースでそれを開発してくれる者の出現を願っておる。
いまこのアースには、人工知能《AI》というものが開発されておるな。それを利用したメンタルケアAIみたいなものが開発されないかのぅ。そうすれば、アースでグールに取り憑かれる者も減るじゃろうしな!
そうすれば、我の仕事も減って、ソファーでゴロゴロできるのに。
タクミ
(まったく、サボることばかり考えてるんだから)
そうだ!セシルさまが開発したら良いじゃないですか!
セシル
それはダメじゃ。我は異世界の人間。この世界の事は、この世界の者が解決するのが、一番じゃよ。
アースの者達には、未来のために何が出来るか考えて、未来のための仕事をしてほしい、と願っておる。
タクミ
そうですね。
いま、どんな仕事をしたいか迷ってる人は、ぜひ未来のための仕事をしてほしいですね。
もし、その人が昔イジメられてた経験があるなら、もうそんな子供が出ないような画期的な何かを開発してほしい。
だって、その人が一番分かってるはずだから。イジメられてるときに、どうしてほしいのかを。
では、今日のお悩み相談室は、これで終了です。セシルさま、ありがとうございました。
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