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ガンガルシア王国編
224話 主人公、未来を話し合うー1
しおりを挟むセシリア王国でソラ達と話した後、ソラとはそこで別れた。タイジュと精霊王の城に行くと言っていた。
僕はミライとガンガルシアに戻ると、タムの様子を見に行く。ソラのおかげで、発作は治まったようだ。体調がよさそうなタムに、ソラのことを話す。もちろん、ソラがタムにチカラを与えたことは秘密だ。
この世界を救うために、僕とソラは紋章システムの核になる覚悟をしていると伝えると、タムの表情が変わる。何かを真剣に考えこんでいるようだ。そして、しばらく自分の国に帰りたいというので、タムとはそこで別れた。
僕もいろいろと考えたいことがあったので、ガルシア様に礼を言って、ガンガルシアを離れた。
ある場所でこの世界の未来のことをじっくり考えていると、タイジュから連絡がくる。準備が整ったので、精霊王の城へ集まるようにと。
「なんだか、すごく久しぶりにこの城に来た気がするよ。まだそんなに時間は経ってないはずなのに。」
「あい!あれからいろいろなことがあったからね。仕方ないよ。タイジュが特別な扉を設置したって言ってたから、みんなはそれで来ると思うよ。中に入って待とうよ。」
ミライに促されて城の中に入ると、トゥーラが出迎えてくれた。
「タクミ様、お久しぶりです。ソラ様も帰ってきて、この城はまたにぎやかになりました。現世でのセシル様もいらっしゃいました。姫の小さい頃に似ておられます。」
トゥーラが涙ぐんで、そう話す。
あっ、あの肖像画の姫とセシルさま!
ソラが言っていた相性が良いってこのことなのか!今のセシルは、姫の姿に良く似ている。魂と身体の相性が良いから、チカラが発現する可能性が高いってことだな。
「私は他の皆さまをお迎えしますので、案内はこれがします。後についていってください。」
トゥーラが出した光る玉の案内で入った部屋は、大広間だった。奥には精霊王と王妃の肖像画が飾ってある。
「ここは謁見の間だったらしいべよ。久しぶりだべ。タクミ。」
タムだ。もう先に来ていたようだ。
「タムも元気だった?調子はどう?」
「オラは大丈夫だ。それより、タクミに紹介したい人がいるだよ。」
タムの後ろにいたのは、小柄なおじさんだった。人が良さそうな顔している。その人物はニコニコ笑いながら、僕に話しかけてくる。
「はじめまして、タクミ。オラがタムの父親だっぺよ。タムと仲良くしてくれてるだな。ありがとうだべ。」
笑顔のまま僕の手を握ると、その手をブンブン振りだす。
「いや、あの。タムには僕の方がお世話になってます。ありがとうございます…。」
この人がタムのお父さん?良い人なのはわかったけど、なぜここに?そんな僕の疑問はすぐ解決する。
「オラのおっ父でベアルダウン王国の王、ベアル様だべ。」
「はいっ?タムのお父さんがベアル様?奥さんが5人いる、あのお父さんがベアル様?」
「んだ。」
僕は思わず、ベアル様を凝視する。
こんな普通のおじさんに、奥さんが5人?
あっ、あり得ない…。うらやましい…。
「今日はおっ父の付き添いで来ただよ。ユーリの代わりだべ。ユーリは自分には話し合いは無理だから後は頼むって、また国外に冒険に行っただ。ドラゴノイドは自由人が多いんだべか?ソラも自由だったしな。」
タムからソラの名前が出る。やはり嫌っているわけではないようだ。
「ソラに会ってないの?」
「んだ。最近は会いに来てくれないべ。オラからは、どうやって連絡していいのかも分からないだよ。」
そうか…。ソラにはパートナー精霊がいないから、紋章システムでの連絡はできない。でも、タムの手にはドラゴンの紋様が刻まれている。
ソラはこれで、タムの様子を把握しているはずだ。
タムに会いに行けばいいのに…。
ソラは何やってんだよ…。
気付けば、今日の参加者はすべて集まったようだ。大きなテーブルの好きな場所に、それぞれ座る。
目の前の精霊王と王妃の肖像画の前に、タイジュが現れた。
「今日は、集まってくれてありがとう。はじめて会うヤツもいるな。オレがタイジュだ。ここに集まった者達に、この世界の未来を託す。全員で納得いくまで話してくれ。」
「それでは今回も僕が進行役をさせてもらいます。」
さっそくライルが話し出す。
「ソラとタイジュからの情報提供により、いま判明している情報はすべて出たと思います。これらの情報を元に、話し合いを進めます。最大の問題は、紋章システムの寿命が近いということです。呪いの問題とアースを平和にしたいということには、セシルさまとタイジュから案が出ています。それでは、まずは紋章システムについての意見を聞きましょうか。タクミ、君の考えを教えてくれるかな?」
ライルの指名に戸惑う。
「なぜ僕に意見を?」
「タクミ、君はアース生まれです。この世界で生まれ育った者にはない感性があります。だからタクミから見たこの世界の印象を教えてほしいのです。」
そういうことか。
この便利な道具に慣れている人は、これがどんなにすごいことか分かっていないのかもしれない。
「そういうことなら。」
僕はこの世界のすべての国を体験して思ったことを素直な言葉にする。
「この世界は素晴らしい世界だと思う。なによりも衣食住の保障によって、明日を不安に思う人がいないというのが一番スゴイことだ。僕は日本で二度会社を辞めたことがある。会社を辞めるってとても勇気が必要だ。辞めた瞬間は、とてつもない不安に襲われた。お金を稼ぐことができないっていうのは、精神的な負担なんだよ。この先どうしよう、明日からどうしようってことを考えた。いろいろな事情で働けない人は、そうやってどんどん追い詰められていくんだ。この世界でグールに取り憑かれる人がいないのは、明日を不安に思う人がいないからだと思う。」
僕は参加者全員の顔を見ながら、言葉を続ける。
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