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ガンガルシア王国編
219話 主人公、ソラの秘密を知るー2
しおりを挟む「500年前、紋章システムを開発して7つの国を興したタイジュ達は、その後も様々な問題を抱えていた。」
「そうですよ!最後まで抵抗してた勢力との争いはなかなか解決できないし、問題だらけでした。なのに、ソラは居なくなった。マスターを残して、自分だけ遊びに行ったんですよ!どうせこの世界に飽きたんですよ。」
エルがソラを厳しく叱責する。
「たしかに、今までの僕ならそうしていただろう。でもね。僕はこの世界が大好きだ。アイツと作ったこの世界とこの世界に生きている者達が好きなんだよ。タイジュが城と姫を紋章システムの核とすると決めた後、僕はあることを実行すると決めた。それは500年後、稼働しなくなるこのシステムに代わるモノを探しに行こうとね。」
ソラは、異世界に遊びに行ったんじゃないんだ!この世界のために、何か出来ることを探しに行ったのか!
ソラの発言にエルも黙る。
「僕はまず、アイツと同じ種族を探すことにした。※※※※は、異世界への穴に落ちて、エレメンテに来たと言っていた。異世界への扉を開けたり閉めたり出来ることは、この世界に来てから気付いたと話してくれたよ。たぶん、この世界エレメンテは、どの異世界よりも空間が不安定なんだ。だからすぐに異世界へと通じる穴が開いてしまう。アイツの種族は、自分の世界で暮らしている時は、そんなことが出来るなんて考えてもいないだろう。僕はアイツと同じ種族に頼んで、ここに移住してもらおうと思ったんだ。」
「エンシャントエルフを探し出して、エレメンテの異世界への穴を塞いでもらうつもりだったんだね?」
「うん。でもダメだった。いろいろな世界に行って、エンシャントエルフに会ったけど、アイツのような強いチカラを持つ者には会えなかった。エンシャントエルフという種族が特別なのかと思っていたけど、そうじゃなかった。アイツが特別な存在だったんだよ。」
異世界の穴を塞ぐ能力は、エンシャントエルフ固有の能力じゃなかったってこと?精霊王にしか出来ない特別な能力…。
「以前、父さまは言っていたわ。この世界を守るためのチカラがあるのなら、長生きもいいものだって。父さまは、ソラと同じで長命。魂のチカラが強かったのよ。だから、異世界への扉を開けたり閉めたりできた。私はそう考えているわ。」
セシルさま?
いつものようなおじいちゃんのような話し方ではない。まるで精霊王の姫のような威厳に満ちた雰囲気だ。
「最近のマスターは、精霊王の姫の記憶を事細かに思い出しているようなのです。ですから、このような話し方になることが…。」
エルが目に涙を浮かべて、セシルを見つめている。
「アイツは特別だった…。やはりそうか。それに気付いた僕はエンシャントエルフを探すことをやめた。そのかわり、この世界の未来を探すことにしたしたんだ。」
「お前、未来に行ったのか?!それはダメだと言っただろ?それで、こんな姿に…。」
タイジュが怒っている。
未来に行くとはどういうことだ?
「タクミはまだ異世界に行ったことのないドラゴンだから分からないと思うけど、異世界はね。隣り合った川の流れのようなものなんだよ。」
「世界は過去から未来へと流れてる、川みたいなものらしいぞ。過去が上流、未来が下流だったな。」
「そうだ。タイジュ。僕はいろいろな可能性を探して、たくさんの未来を見たよ。」
「未来に行ってきたってこと?しかもたくさんの?」
「未来はひとつじゃない。いろいろな未来があるんだよ。僕はその中に、紋章システムを継続できるヒントがあるのではと思ったんだ。でもそんなものは無かった。どの未来も、紋章システムが継続できなくて、また人々は争っていたよ。」
やっぱり紋章システムが無いと、平和は続かないってことか…。
「でも、未来を見てきたことと、ソラのこの姿はどう関係が?」
僕の疑問にタイジュが答えてくれる。
「時間の流れは川のようだと言っただろ?未来へ行くのは、上流から下流に行くようなものだから比較的簡単だ。流れに乗ればいいんだからな。でも過去へ戻るのは、流れに逆らうこと。とてつもないチカラが必要だ。ソラはそれを何度も繰り返していたんだ。そうだな?」
「うん、たぶん…。僕は分身体。500年前、本体がこの世界から居なくなってから、会っていなかった。そんなことしてるなんて、知らなかったんだよ。」
「この世界には居ないって言ってたのは、このことなんだね。ここは次元の狭間。アースでもエレメンテでもない。」
「そう。まさか戻って来てるなんて…。分身体の僕にも気付かれないように、この空間を作って休んでいたんだよ。でも、イリステラの遺跡でタムに会ってしまった。分身体の僕と本体は繋がっている。運命の相手と出会った衝撃で、ここで身体を休ませていた本体が目覚めた。そして、分身体の僕の身体に入ってきたんだよ。このようにね。」
ソラの身体が光っている。
一瞬眩しく感じた後、女性の姿のソラがそこにいた。
「ボクが本物のソラだよ。本物と言っても分身体に身体を借りてるけどね。本体はまだ傷が癒えてなくて、動けないんだ…。」
「じゃあ、数時間しか一緒に居られないのは…。」
「うん。ボクの身体がもたないの。精神を分身体に移せるのは、数時間が限度だよ。」
「本体はいつ目覚めるの?大丈夫なの?」
「分からない。可能性を探すことに夢中になって、魂のチカラをたくさん使ってしまった。もう僕には前のような強大なチカラはない。でも、そんなボクにも出来ることがある。」
「まさか…。」
「うん。ボクが紋章システムの核になるよ。」
ソラはニッコリ笑って、そう言ったのだった。
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