異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

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ガンガルシア王国編

216話 主人公、異世界最強を知るー2

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「なんでここにソラが?」

 驚く僕達に気付いたソラは、静かにするように目配せする。
 ソラはタムの手を握りながら、何かに集中している。しばらくすると淡い光は消えるが、ソラはひどく疲れているようだ。

 異変に気付いた碧が出てくる。驚く碧にソラは声をかける。
「これで大丈夫。タムにはナイショ。いいね、碧。」
「うん、分かったの~。ありがとう、ソラ~。」
「じゃ、ボクは行くね。タムのこと頼んだよ。ボクが来たことも言っちゃダメだぞ!」
 コクリと頷く碧は、そのまま消える。
 それを見たソラは僕達の方に視線を向けると、少し哀しげに笑った。
 そして、「少し話をしようか?」と言って、僕達の部屋へと自ら歩いて行った。



 自室に戻った僕は、矢継ぎ早に質問する。

「なんでここに?それにどうして最近は現れてなかったの?タムと何かあった?」

「質問が多いぞ!ボクはちょっと疲れてるから、ゆっくりさせてほしいのに。」

 たしかにソラの顔色が悪い。どうしたのだろう?

「ソラ、これ飲んで。疲労回復効果があるお茶だよ。」

 ミライがハーブティーのような、香りのあるお茶を出して、ソラの前に置いた。
「ふふっ。ミライは成長したね。ありがとう。」
 お茶を飲むと、少し落ち着いたようだ。

「今日、ボクが来たのはタムの異常を感じたからだよ。また何かの病気が再発したね?」

「うん。急に倒れて。発作が定期的におきてる。朔夜はスカラに連れて行った方がいいんじゃないかって言うんだけど、タムはこの世界の問題に答えが出るまでは行かないって。」

「そうか…。でももう大丈夫。これでしばらく病気の症状は治まると思う。でもタムにはナイショだよ。」

「それはいいけど、タムに何を?タムはどんな病気なの?分かる?」

「タクミは質問ばかりだな…。」
 ソラは呆れたような顔をして僕を見ると、ふぅっとため息をつく。
「タムはね。いろいろな種族の血が強いんだよ。強いチカラがタムの中でせめぎあってる。それに身体が耐えられなくて、様々な症状が出てるの。タムの身体はヒト種だから。どれかひとつの血が強かったら、こんな症状は出ないのに…。この世界は混血ばかりになった。それによって種族間の差別は無くなったんだけど…。タムの病気は混血の弊害だよ。」

 この世界の人々は、紋章システムが開発されるまでは、獣人種、妖精種、ヒト種など、種族の違う者同士で争いばかりしていた。でも、子供の頃から一緒に暮らすファミリアが出来て、相互理解が深まり、混血が増えたのだ。

 アースでも、純血主義の人はいる。でも先祖を遡れば、いろいろな種族の血が入っているはずだ。本当の純血なんてものはないのだ。

「普通は自分の身体を守るために、自己抑制機能が発動するはずなの。でもタムにはそれが無い。このままでは、タムは短命になってしまう。」

「なんとかならないの?」

「方法があるには、あるんだけど…。タムには拒否されてしまった。」

「しばらく会いに来てなかったけど、それと関係が?」

「ボクは…。タムに嫌われてしまったから…。」

 嫌われた?
 おかしいな…。タムにソラのことを聞いた時に複雑な表情はしていたけど、嫌いになった感じではなかった。

「タム本人が嫌いだって、言ったの?」

「タムが…。『そういうことをするソラは嫌いだ』って…。」

 タムに嫌いだと言われたことが余程ショックだったようだ。思い出したソラは、とても悲しそうな顔をする。

「そういうことって?何をしようとしたの?」

「んっ?何って。子作り?」

 !!!

 はぁ…。僕はため息をついて、頭をかかえる。
 そうだった…。ソラって、人の常識とかけ離れた思考の持ち主だったな。しかも、恋愛初心者。

「なんで、そんなことを?まだお付き合いも結婚もしてないよね?」

「えっ?好きになったら、そういうことをするのが普通なんじゃないの?いけないことだったの?」

 キョトン顔で僕を見てくるソラは、本当に可愛い。

「タムの心を読んでないの?」

「運命の相手の心は読めない。だから、タムの気持ちが分からない…。ボクは嫌われたと思って、怖くて、会いにいけなくて…。でも、異変を感じたから来たの。」

「タムに何をしたの?症状が治まるって?」

「うん。ボクの…。ドラゴンのチカラを与えた。タムにはドラゴノイドの血が入ってる。ボクのドラゴンのチカラも受け入れることができる。そのドラゴンのチカラで症状を一時的に抑え込んでいるだけだから、このままだと再発する。でもタムに拒絶されたから、あの方法はムリだし。」

「タムを救うための方法が、他にもあるの?」

「ある…。でも、それにはタムの協力が必要…。」

 その方法は何だろうと思うが、ソラには教える気が無さそうだ。

「そうか。でもソラが来てくれたから、タムはしばらくは大丈夫なんだね。安心したよ。」

「それより、タムがスカラに行かないのはタイジュのせいだね?タイジュから答えを出せと言われているから…。だから、ボクは反対だったんだよ。紋章システムを継続するためには、セシルのチカラが足りない。あれは異世界の穴を閉じるためのものなんだから。」

「ソラ。僕は紋章システムは、この世界に必要な道具だと思う。継続するための方法があるなら、教えてほしい。」

 僕は素直にソラに聞く。

 ソラは以前、僕が成長するために、もう何も教えない方がいいのかもと言っていたが、情報は多い方がいい。情報が多ければ、いろいろな対策が考えられる。ソラだけが知っている情報があれば、それを教えてほしい。

「はぁ…。タクミは逞しくなったね。仕方ない。教えるよ。何が聞きたいの?」

 ソラはため息をつくと、観念したようにこちらを見てくる。真摯な顔だ。きっと、誤魔化さずに、すべてを教えてくれるだろう。

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