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ガンガルシア王国編
207話 主人公、怪異を討伐するー4
しおりを挟む「まず怪異に遭遇したら、パートナー精霊に確認することになってるの。このガンガルシアに出現する怪異は、色々な姿形をしているわ。その中でも、一度も見たことのない怪異と特A級の怪異は、王宮に連絡しなくてはいけないから。」
「特A級?」
「遺跡にも等級があるように、怪異にも等級があって、特A級は要注意。単独チームでの討伐は禁止されてるの。特A級を発見したら、王宮へ連絡。王宮の誰かが確認に来て、すぐに討伐隊が編成される。こんな流れね。」
「見たことのない怪異の場合は?」
「私はまだ経験がないのだけど、見つけたら王宮へ連絡。その後王宮の誰かが確認に来て…。あらっ?その後どうなるのかしら?私も分からないわ。」
このガンガルシアには、怪異以外の異世界の生物が入ってくることがある。タイジュは、それらの多くは意志の疎通が取れなくて凶暴だから討伐すると言っていたが、まれにそうではないモノが紛れ込むのだろう。
僕がこの世界に来た時に会った討伐者も王宮に確認していた。それが無かったら、どうなっていたか…。
無秩序だと思っていたガンガルシアにも、ちゃんとルールはあるんだな。
「で、討伐完了したらパートナーに確認してもらうんだよね?ところで何を確認してるの?」
僕の疑問にラトニーが現れて答えてくれる。
「ヒト種の目では見えないないものを確認しているのである。」
「赤外線みたいなヤツだね?」
僕はこっそりミライに聞く。
「あい!僕達、パートナー精霊は生体反応感知機能もあるからね。その他、パートナーである使用者を守るための、各種センサー搭載済みだよ!」
おぉ、高性能!なんだかミライが頼もしい。
パートナー精霊は、使用者を助けるために存在する。例えば、ホバーに乗るときは周りに生体反応が無いか確認してくれるから、どんなにスピードを出しても事故は起こらない。進行方向に生体反応がある場合は、警告してくれるし、場合によっては、ホバーを緊急停止させる。
「ところで、あの怪異はどこへ行ったの?光って消えたけど…。」
「回収可能な怪異は紋章システムに収納するルールなのである。行き先は怪異研究所である。噂ではその研究所では、おぞましい研究をしているらしいのだ!」
ラトニーの脅すような言い方に、ゾッとなる。この世界での研究って、なんかヤバそうなんだけど…。
「ぷっ、ダメよ。ラトニー、ウソを教えたら。」
アリシアが笑いながら訂正する。
「怪異はマルクトールにある研究所に送られるわ。そこでは、怪異に関する様々な研究をしてるの。名前を付けたり、種別毎に分けたり。マルクトールに集まる人達は、そういうのが好きだから。」
「んだ。マルクトールの人間は、すぐに体系別に分けたがるだよ。こういうタイプはこうだ、とか決めつけてくるだよ…。」
タムも呆れたように同意する。
日本人もそういうの好きだよな。
血液型とか、星座とか、干支とか。あれって、合ってるのか?誰にでも当てはまることを書いてるだけって指摘もあるらしいけど…。
「昨日タムが焼却した怪異は跡形も無くなったから、回収しなかったんだね?」
僕の言葉に、碧が現れる。
「タムはね~。研究材料になるのは反対なんだよ~。生物に見えるモノは安らかに眠ってほしいの~。」
この世界にはいろいろな考え方の人がいるが、それぞれが尊重される。タムのような行為をしても、誰からも責められることはない。
「あら、そうだったの。タムが焼却したのは、術式の効果を試してみたかったからだと思ってたわ。」
アリシアは本当に術式のことしか考えてないんだな…。
「そういえば、僕達はガンガルシアの国民じゃないけど、討伐者って名乗っていいの?」
「もちろんよ。他のチームにも助っ人で、いろんな国の人が一時的に入ることがあるわ。他の国での仕事の合間に、助っ人としていろんなチームに参加してる人もいるのよ。まだ未熟なチームを育てるために助っ人してる人もいるくらいなの。」
なるほどね。たしかに未経験者だけの討伐は危険だ。それに助っ人が普通にあることなら、僕達がチームに入っていても問題ないね。
「討伐の流れは、だいたい理解できたよ。今日は4体遭遇したけど、いつもそれくらいなの?」
「そうね。1体の時もあるし、10体くらいの時もある。出現ポイントを予測できるようになってからは、遭遇しない日は無いわ。前に比べて怪異の出現が増えてるって言う討伐者もいるけど、私にはよく分からない。」
増えてる?紋章システムが不安定になってるとタイジュは言っていたが…。
「しばらくは、今日のような討伐をしましょ。慣れてきたら、大型の怪異にも挑む。それでいいわね?」
アリシアの言葉に全員が頷く。
このままアリシア達とチームを組むことに異存はない。もう少し、アリシアとシグルトのことを知りたいからね。
今日の戦闘で分かったことがある。シグルトは戦闘狂だと言われているが、完全に理性を失った状態ではないということ。闘いたいという本能が強く出てるから、興奮しているように見えるだけで、実際はとても理性的だ。今は闘うことが楽しいので、戦闘中に笑っているのだ。
常に強者と闘いたいというよりは、ハルバードを上手く使いこなしたい、ただそれだけなのだろう。
戦闘大好きなサーシャとは、そこが違うな。
んっ?サーシャ?
そうだ!あの作戦。サーシャにも協力を頼んでみようか…。
それからの数日。
僕達は、朝から夕まで怪異を討伐し、夜は僕とタムとラトニーとデュラハンで、秘密の作戦を練るという生活を続けたのだった。
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